苦境が好機となるか!人手不足に揺らぐ建築業界の今。 | 八尾製鋲ブログ&<Amazon>情報

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タピックスで知られる木用ビスのメーカー・八尾製鋲のブログ。
<Amazon>に出品中の製品情報もあります(テーマ参照)。

こんにちは。至って田園的な風景が点々と残る八尾製鋲の周辺では、田んぼに植えられた稲が日増しに背を伸ばしています。今年は全般に梅雨入りが遅めで、ドカンと激しい豪雨が襲って来るかと思えば、猛暑となる中休みの日も多く、少しばかり蒸し暑いにしても、雨がしとしと穏やかに降り続く、昔のような梅雨が懐かしくなる気分です。さて、梅雨本番を迎えると確実に必要度が増すのが傘。こればかりは、持ちたくなくても、濡れるのが嫌なら持たざるを得ない、不可避の性質を帯びたアイテムに他なりません。もっとも、今時は傘の主流がカジュアルなビニール傘となって久しく、それにより、傘嫌いの人でも<傘を待たねばならない>ことの脅迫意識が幾らか減じたように思えます。加えて、百均ショップでも買える安価な品であるため、所有の観念が著しく希薄になるというのも、ビニール傘がもたらす作用のひとつです。すなわち、コンビニなどの入り口脇にある傘立てに注目すると、晴れか雨かの天気に関わらず、いつも数本のビニール傘が放置されている様子を頻繁に見かけます。この時点で、それらのビニール傘は、既に個人の財産所有権から切り離されていて、急な俄雨などの状況に即し、元の持ち主とは異なる他人がそれを使用することがあっても、別に当該の行為を横領だの窃盗だのと、悪事として強く非難する向きは少ないのが実情でしょう。要するに、所有の囲い込みから限りない自由度で存在するビニール傘は、万人が等しく利便を分かち合える、究極の公共財ではなかろうかとも考えます。

一方、傘を置き忘れないようにするためには、高級・高価な傘を持つのがよい、とする訓えは、デパートやオンラインショップで売られているブランド品の傘を見ると、ビニール傘全盛の世になっても、決して廃れてしまった訳ではなさそうです。高級・高価な傘といえば、社会人になって間もない時、欲しいと憧れた末、大奮発して買った某ブランドの傘がズバリのイメージでオーバーラップします。購入当時、18,000円のプライスタグを付けていたその傘は、持ち手の素材が竹のすこぶる洒落たスタイルでした。持ち手が竹の傘は、長く皇族方に愛用されている某工房の製品なども代表格であり、まさにビニール傘の正反対に位置するハイクラスな傘のアイコンモデルともいえます。そのように思いながら、さらに昔の記憶をまさぐると、自分が某ブランドの傘を買うか買うまいか勘案していた頃、足繁く通った大阪の中之島図書館で、常に出くわす持ち手が竹の傘がありました。2階の廊下に置かれた鍵付きの傘立てに立てられ、きっちり施錠がされているので、持ち去ることもできず、撤去することもできず、いつまでもそこにあるしかない、そんな事情が察せられる奇妙な傘。それから随分と長い年月が流れ、よもや中之島図書館の2階で、くだんの竹の傘に邂逅することはないと思うものの、どんな人がそこへ置き去りにしたのか、振り返ると今もって不思議な感じに囚われます。

 

今回のブログは、2024年問題が現実化し人手不足に悩む建築業界に目を凝らしながら、ビスのメーカーなりのポジティブな可能性を探り出す内容です。

 

当メルマガの編集を行うため、日頃から色々な方面に注意を向けて情報を集めていますが、毎日、必ず読む新聞が日本経済新聞であるため、近頃は余り丹念にじっくりと読み込まなくなったものの、日経の紙面に載る記事には、嫌でもアンテナが触れるので、そこから社会全般や市場の動きについて知ること、教えられることが沢山あります。そのような事情により、つい先日も6月28日付の朝刊19面(マーケット商品)で<建材、工事進まず山積み>と見出しが打たれた記事に目が留まり、一読の後、ビスのメーカーにとって、極めて身近である建築業界の現況に関し、他人ごとには感じられず(=身内の難義)、あれこれと考えさせられたような次第です。すなわち、当該の記事によれば、ビルや住宅に使う建材の在庫が需要されずに滞留し、積み上がっているとのこと。例えば、住宅を建てる現場で木用ビスの相手材となる針葉樹合板の場合、在庫増加率が前年比12.5%となっていて、合板メーカー各社が生産能力を8割程度に落としてはいるものの、充分に調整できず、在庫の増加に抑えが効かない様子が書かれています。また、ウッドショック以来の原材料インフレに加え、円安による輸入資材の値上がりが重圧となり、本来、販売価格の上方改定を行いたいにも関わらず、需要が弱含みで推移し、在庫が積み上がるばかりであるため、売り値を据え置かざるを得ない苦しさも記事から察せられるところです。それでは、なぜ、建材が出荷できずにひたすら山成す在庫となっているのか?。記事の内容から抽出すると、要するに建築業界において、極めて深刻な労働力の不足が生じており、人手を欠くため工事を実施することができない。もしくは、人手の確保が可能となっても、従来に比べて人件費が高騰しているため、採算が全く合わない。従って、工事が行われない以上、建材が使われ、消費されることもないので、自ずと需要先を失った在庫が徒に増えるばかり、という現象が起こっているのです。上記の現象が深刻化している建築業界は、物流・医療などの分野と並び、いわゆる2024年問題により、必要なマンパワーの手当てができず、業界全体が大規模な機能不全に陥るリスクが懸念されていました。つまりは、元々からあった働き手減少のトレンドに加え、4月より時間外労働の上限規制が適用されることとなって、憂慮を抱いていた事態が出来した訳であり、建築資材の夥しい在庫滞留もその一端であると考えられます。

 

もちろん、建築工事の着工件数が伸び悩んでいるのは、労働力の不足のみによるものではなく、久しく続いていたマイナス金利政策に幕が下ろされ、将来的に住宅ローンなどの金利が上昇すると思われることが、少なからずの作用を及ぼしている面も否定できません。しかしながら、要因がワンイシューではなく複合性をはらむにしても、最も逼迫度が高いのは、やはり労働力サイドと見る向きが多く、この部分のブレークスルーが切実な次元で求められているといえます。

 

一方、打開に向けたアプローチは、建築業界の各所で既に動き出しており、見方によっては、マイナス状況のブレークスルーが波及的な作用を生み出し、従来の概念とは異なる新たなビジネスチャンス=プラス状況に繋がる可能性も浮かび上がりつつあるようです。具体的にいうと、目下、大手ハウスメーカーなどの建築サプライヤーでは、必要となる各種資材の購買基準を一部で切り替えつつあると聞きます。当然、コスト管理にシビアな大手の購買ですので、製品の属性を厳しい評価軸でジャッジすることには変わりがないものの、購買を決定する評価の核心が、いかに安く買えるかの価格一辺倒ではなく、現場での生産性を高める効果が期待できる性能を持つかどうか、作業にかかる時間を減らし、現場に張り付く人手を少しでも圧縮できるかどうか、その要件を満たすことのできるスペックの有無にシフトしているというのです。もし、価格よりも生産性改善を可能とする性能に重きを置く購買が、この先さらに活発となる方向を示すなら、こと木用ビスに関しては、通り一遍のコーススレッドを性能的に大きく凌駕するタピックスがあれば、作業時間と作業人員の省力マネージメントを的確にはかることができます。つまりは、タピックスブランドを擁する八尾製鋲としては、まさしく願ったり適ったりのチャンスです。但し、好機を抜かりなくつかみ取るならば、この場合、タピックスが発揮しうるパフォーマンスを、客観的な数値を通して示し出し、エピデンスを添えて明快にプレゼンテーションすることが望まれます。これまでにも打ち込み速度の定量化デバイスである<ねじ込み試験機>を自社開発するなど、客観的データ構築へのアクションを推し進め、社外から一定の評価をいただきながら、その

成果を積み上げつつありますが、タピックスを筆頭とするラインナップのブランド価値をより高度にブラッシュアップするためにも、また、建築業界全体の問題を自社の問題と捉えて意識共有するためにも、さらに継続して取り組み、力を注いで行かねばなりません。