工場で製造した家に住む!工業化住宅のあれこれ話。 | 八尾製鋲ブログ&<Amazon>情報

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タピックスで知られる木用ビスのメーカー・八尾製鋲のブログ。
<Amazon>に出品中の製品情報もあります(テーマ参照)。

 

まだ5月の半ば過ぎにも関わらず、近畿・東海が梅雨入りとなりました。もう少し、風薫るこの時季の気候を楽しみたかったと、文句をいってもお天気には勝てません。今から2ヶ月ほど続くかと思われる長い梅雨を、昔(旧暦)の五月雨が帰って来たと解釈し、ポジティブ思考で雨に親しむのも一計です。さて、梅雨空に似合う花といえばアジサイですが、そっちは少しばかり先に取っておくとして、ご近所の庭先や道路に沿った生垣を見ると、遅めに咲いたツツジが今もって姿を留めています。鮮やかな赤紫色の他、紅やピンクに白と、色取り取りの花を咲かせるツツジ。その花名を漢字で書くと、どんな字面となるでしょうか。まず、<映山紅>と書くのがひとつ。山に映える紅の花という綺麗なイメージが頭の中に浮かびます。ところが、もうひとつある

<躑躅>の方は、画数が多くて簡単には読みにくい字面。ちょっと不気味で怖い印象も受けるため、実際、これを「どくろ」と読んだ人が職場の同僚にいました。「どくろ」は<髑髏>ですので、確かに似ているといえば似ていなくもありません。その<躑躅>を音読みにすると「てきちょく」。意味は<躊躇>に同じく、<立ち止まる>や<前に進むのをためらう>です。つまりは、余りにも美しいツツジに出会い、思わず足が動かず、「てきちょく」となる様を文字に表したということになります。一方、ツツジの花弁には、グラヤノトキシンなる毒性が含まれていて、中でもそれが多量にあるレンゲツツジを誤って動物が食べると、落命する危険がある由。

古い中国の書物には、レンゲツツジの名を<羊躑躅>とする記事が見られ、羊がレンゲツツジの毒に当ったが最後、足踏みしたまま前に進めず、固まってしまうと説明してあるそうです。してみれば、毒入りの<躑躅>と不気味で怖い<髑髏>は、一種のデンジャラスつながり。読み間違いが生じるのも、いささか無理からぬところかと納得する次第です。

 

今回のブログは、日本の家づくりで重要なポジションを担うセクターのひとつ、工業化住宅にフォーカスした内容でまとめました。

 

EVシフトや自動運転技術といった大波が押し寄せ、次代に向けての転換点に立つ自動車。その概念が今やドラスティックに変わりつつあるのは確かながら、19世紀に発明された自動車は、20世紀の100年間を象徴する先端的な工業製品として、社会の様々な方面に影響を及ぼしたといえます。中でも住宅を含む建築設計の分野では、フォードTタイプの普及によって、自動車の大量生産と大量供給が現実のものとなった1920年代、自動車を開発・製造するために用いられるテクノロジーを取り入れ、合理的で機能性に優れた、従来にない住宅を実現しようとする考え方が興りました。その頃、ル・コルビュジェ(スイス生まれのモダニズム建築家)が提唱した<シトロアン住宅>というプランは、フランスで最初にフォード式の生産方法を実践した自動車メーカーの社名をもじったものですが、工業製品である自動車をお手本に取り、住宅の在り方を変えようとした、革新的な考え方の代表例に挙げられます。やがて時代は進み、世界恐慌や戦争によって各国が社会資本の再構成・再分配を行う中、大量の住宅を安価で速やかに建設する必要が生じ、当該の要請に即して、工場でつくられる住宅=工業化住宅の手法が確立。住宅の一般的な形態のひとつとなりました。日本においても、第2次大戦後の深刻な住宅不足を受けて、大工仕事で家を建て上げる伝統的工法では賄い切れない夥しいニーズに対し、限られた建築資源をできるだけ有効に投入する観点から、政府と民間企業の双方が工業化住宅に着目します。すなわち、戦災復興の始動=1940年代の終わりから50年代の初頭を黎明期として、日本の工業化住宅が本格的な歩みを始めたといってよいでしょう。さて、このような流れに立って、あらためて工業化住宅とは何か、大よその意味付けをしなければなりません。間口を広めに取って粗い定義を行うならば、<基本構造や建材が工場で同一の規格により大量生産され、それらを建築現場に移送して組み立て、建て上げられる住宅>が工業化住宅です。そして、その特徴とメリットを挙げると、概ね下記の通りとなります。

上記のような特徴とメリットを享受することにより、第2大戦後の日本において、木造軸組工(構)法と呼ばれる在来工法と共存しながら、工業化住宅の導入と普及が進みます。しかしながら、実際には、工業化住宅というワードよりも、予め(pre)工場でつくられた(fabrication)住宅(prefabrication-house)を縮めたプレファブ/プレハブ住宅とする方が、より一般的なワードとして広く流布しており、工業化住宅=プレハブ住宅となる認識を伴って、その浸透がなされたといえます。

 

2次大戦後の70年余を通し、当初に問題となった供給難が解決を見た後も、日本では住宅建設の需要が旺盛に推移します。その過程において、建築分野の様々なサプライヤーが工業化住宅に参入。それぞれが自身(自社)の強みを生かし、発展と淘汰を繰り広げた結果、市場に流通する工業化住宅は、概ね下記の通りにセグメントされる様相となりました。

一方、現状の動きに注目すると、上に列記した工業化住宅の各工法と在来工法(木造軸組工法)との線引きが、きっぱりと明確に成立しなくなっていることも事実です。つまりは、在来工法の住宅においても、工場発のプレカット木材を使用し、現場仕事で仕上げていた部材の加工を、工場でまとめて行うことが普通になっています。反面、間取りなどの基本設計に変更を加えにくかった工業化住宅が、リフォームの自由度を得るため、在来工法の住宅に習おうとするトレンドも見逃せません。今後はさらに両者の線引きが曖昧となり、違いが流動化する傾向が強まるのではないかと思われます。

尾製鋲では、在来工法の現場向けに木用ビスを販売するのはもちろんのこと、工業化住宅の現場から来るオーダーにも長く応えて来ました。このような双方向のスタンスは、日本の住宅建築が在来工法と工業化住宅のツーウェイで成立している図式がある以上、木用ビスのメーカーとして、当然、果たすべき役割であったと考えています。また、工業化住宅においても多用される積層材やパーティクルボードは、輸入品のコーススレッドを用いると、折れや頭飛びなどのトラブルが生じやすく、当該の不具合を回避するため、在来工法の現場にも増して、八尾製の高品質な木用ビスに引き合い来るという、大変に有り難い事情が重なっていました。それに加えて、通常のコーススレッドに留まらず、さらに付加価値の高いタピックスやタピックススリムにシフトしつつあるのが、ここ数年、顕著に見られる需要の動向です。

 

その背景には、積層材やパーティクルボードの木割れ対策、繊維密度の高い堅木系建材への打ち込みなどで、タピックスが大いに性能を発揮している実績があります。そして、忘れてはならないのは、スペックを増して行く一方のインパクトドライバー(高トルク工具)。これをフルに使いこなそうとすると、木用ビスにも応分の投資を行わねばならず、そのベストな対象としてタピックスが、競合品を抑えて選好されたともいえるでしょう。今後、工業化住宅の守備範囲は、建築業界の慢性的な人手不足という要因もあり、IOTDX による省力化を指向して、伸び代を一段と広げて行くのではないかと考えられます。八尾製鋲としては、基幹製品・基幹技術であるタピックスが高い評価を勝ち得た経緯に上積みし、木割れ解消ビス・雅や高トルク工具対応ビスなど、タピックスの後に連なる新しい製品提案・技術提案を、工業化住宅の現場へ向けて精力的に打ち出して行く方針です。