ムスタングはなぜやらしーか?
きみに贈りつけられた映画 トップガン/マーベリック 2021 USA
まだ最後まで見ていないんだが、
前回の記事で、マーベリックがレストアしてた機体が
P-51ムスタングってとこがやらしー映画だと書いたので
今日はそこんとこをちょっと突っ込んで語る。
スピッツ吠えまくりという名前の戦闘機がある。
英国のスピットファイア。
これはかの国の国民的な名機だ。
なぜならバトルオブブリテンで祖国を守り抜いた英雄だからだ。
零戦は逆だね。
祖国を守り抜けなかった。
でも国民的な名機だ。
緒戦では航空先進国アメリカの戦闘機をボコボコにした栄光の翼。
最後は特攻機として使われた悲劇の翼。
そんなストーリーが、戦争の是非は別にして胸を打つ。
合衆国でそれにあたるのが陸軍のP-51ムスタングだ。
太平洋で零戦を圧倒し、
アメリカに勝利をもたらしたのは海軍のF6Fヘルキャットだが、
アメリカ人にとって対日戦争は第二戦線というイメージが強い。
メインステージはヨーロッパだ。
そこでまさに無敵の活躍をしたのがムスタング。
この機体はWW2における最優秀戦闘機と評価されている。
F8Fベアキャットはヘルキャットの後継機として開発された、
対日本海軍の切り札とも言える艦上戦闘機だった。
しかし、その量産が始まったところで対日戦争が終結してしまう。
しかもそのころになると、
ジェットエンジンという次世代のテクノロジーが実用化されつつあった。
かくしてベアキャットは遅すぎた名機として記憶されることになる。
左がムスタング 右手前がヘルキャットで、奥がベアキャットだ。
ムスタングが細っこいのは水冷エンジン、グラマン兄弟がずんぐりなのは空冷エンジンだから。
水冷機体の細さがなんかキザっぽくてさ、ガキの頃からあんまり好きじゃなかった。
たぶんそのせいなんだろう。私が選んできたバイクはぜんぶ空冷エンジンだったなwww
マーベリックは海軍のパイロットだ。
しかも艦上戦闘機=空母艦載機のファイターだ。
彼がビンテージプレーンを所有するなら、
その精神は必ずヘルキャットかベアキャットを選ぶはずだ。
なんたって前作で乗ってたのがトムキャットだからな。
F4FワイルドキャットでもF7Fタイガーキャットでもいい、
なにしろ猫な海軍機であるはずだ。
しかし映画に登場するのはムスタングやんか。
なるほど、これはそういう映画か、うわーやらしーなと思った。
P-51ムスタングはヒトラーにトドメを刺した戦闘機だ。
民主主義の軍隊のヒーローだ。
合衆国の正義とプライドのシンボル。騎兵隊。ジョン・ウエイン。
ムスタングはアメリカに生息する野生馬を意味する。
つまりフロンティアスピリッツのシンボルでもある。
その点じゃ猫に勝ち目はない。
今ではBLMのことなんてだーれも語らないが、
この映画の制作が決まったころアメリカは確かに揺れていた。
国中でデモや暴動が頻発し、
その鎮圧のために州兵どころか国軍まで動員されかけた。
下手すりゃ内戦か?という予測さえ語られていたほどだった。
そんなふうになっちまったアメリカに
再び正義とか誇りとか勇気とか、
そういう筋合いのモラルを呼び戻そうとして
この映画は作られた。
たぶんおそらくきっと当社比。
だから、
マーベリックがコツコツと地道に修復する機体は、
「おまえは今でも飛べるはずだ」と心で語りかける翼は、
ムスタングでなければならなかった。
アメリカのプライドそのものである存在でなければならなかったのだ。
こういう、なんつーかこれ見よがし。
それがやらしーと私はゆーとるんだわ。
‶ライトスタッフ” チャック・イエーガーが、
あの戦争の最終段階で乗っていたのもムスタングだ。
映画の冒頭の、ライトスタッフ丸パクリのシーンもなんだかなー。
リスペクトだかオマージュだか知らんが、
オタクなノリの佃煮映画って感じで、最初は馬鹿にして見てたんだが、
途中でうるうるになったので見るのをやめた。
レンタル期限は三日後だ。