あれは私が21歳の時だったと思う。

 
ピチピチでパンパン体型だった私は、
長身+ヒールも相まって、行く先々で
「健康的だね~!」とか
「大きいね、迫力があるね~!」と様々な人に笑われた。
当時は金髪にブリーチした髪に、ヴィヴィッドなピンクやブルーを入れて、真っ黒なアイメイクを楽しんでいたので、大人達の嘲笑には、
 「パッと見むちゃくちゃで可愛いね。若いね。」
が含まれていたのかも知れないが、今より更に頭の整理が下手だった私は誰かと会うとき、体型に関する一言が出ないことばかり願っていた。
そのうち突飛なヘアカラーやメイクごときでは溢れてくる自己表現が追い付かなくなり、ほどなくしてやめたが、
 「髪型が変わっているからやんちゃだ」
 「黒髪だから清楚だ」
等の下らない価値観についても知ることとなった。
 
話を体型のことに戻すと、
冗談めかしてではあれど毎回ジャケット撮影前にはレコード会社から「あと10キロは痩せないとね~」と言われて恥ずかしくてたまらなかったが、なんだか強気なふりをしてヘラヘラしていたことを鮮明に思い出す。
そんな頃、八代亜紀さんと共演し、リハーサルをしているとき、どういうわけか当時の私の事務所の者がまた
「沙織ちゃんムチムチですから」というようなことを皆の前で言った。
すると八代さんは
  「そんなことばかり言って、若いうちから沙織さんがごはんが食べられなくなったらあなた方はどうするつもりなの?」
と穏やかに、でもピシャリと言い放ち、
 「私は30前後から痩せたのよね」とご自身のお話に変えて下さったので自然とこの話題は終わった。
八代さんをテレビでお見かけする度に、変わらない愛らしさと、このエピソードを宝物のように思い出すが、
この後も鈍感な大人達は八代さんの言ったことの意味など理解せずにハラスメントに興じていたし、私も甘んじて受け入れ、悲しんでいた。
 
そして私が20代後半になった頃、なにもしないのにガタガタと痩せはじめたことがあった。
すると今度は「痩せた痩せた」と会う度に言われ、
最早、なんとも…。閉口するしかなかった。
 
女性ミュージシャンの活躍が目覚ましいのは今や新しいことでも変わったことでもなくなりました。
当たり前だと思う。
男女差もなくて当たり前になりつつあるのに、
久し振りに会った相手に、挨拶より先にまだ体型の話をしますか?
 
 
2020年以降、無形のものを見る力、聴く力がより必要になります。
常識も在り方も、当たり前ですが変わります。
 
その時に誰とでも手を取り合えるよう準備しなくてはなりません。
 
 
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