いや、今朝のオランダ戦、凄かったですね。サッカー男子日本代表、強くなりました。オランダ相手に2度もリードを許したのに、終了間際に追いつくわけですから。30年前なら考えられなかった展開です。初戦で勝ち点1を獲得できたので、これからの試合が楽しみです。
 

 と、まあ、そんなこんなのサッカーW杯です。いよいよ始まりました。だけど、こんな時こそ、ご用心。「ショック・ドクトリン」に気をつけましょう。日本では「壊憲」と「軍拡」の動きがやまず、W杯で国民が浮かれていると、どさくさ紛れにとんでもない法案が可決されるかもしれません。
 

 ご承知のとおり、「ショック・ドクトリン」は、アメリカのジャーナリスト、ナオミ・クラインが『ショック・ドクトリン―惨事便乗型資本主義の正体を暴く(上・下)』(岩波書店、2011年)のなかで明らかにした政治手法です。
 

 ショック・ドクトリンは、元々、被験者に電気ショックや感覚遮断、薬物投与などの身体的ショックを過剰に与え、被験者の脳を「白紙状態」にすることを目的としていました。CIAの資金協力を得ながら行われた実験は見事に失敗しましたが、これを現実の政治経済運営に適用するかのような動きが出始めました。クラインは、ラテンアメリカにおける新自由主義政策の展開にまずはその典型を見いだしたわけですが、戦争や革命、自然災害など大規模なショックを受け、人々が冷静な判断能力を失っているとき、どさくさ紛れに、平時では導入できない政策を一気に行う事例がそこかしこで見られるようになりました。東日本大震災後の日本なども、その中に入るかもしれません。
 

 ここで注意したいのは、ショック・ドクトリンには、2種類あるということです。クラインは「惨事便乗型」に着目しましたが、市民が注意すべきもうひとつが「歓喜便乗型」資本主義です。オリンピック、万国博覧会、W杯など、スケジュールの決められた大規模国際イベントを口実に、都市の再開発やインフラ投資、広告宣伝を、民意を無視してどんどん推し進めるというやりくちです。
 

 歓喜便乗型資本主義は、クラインの議論に触発されたジュールズ・ボイコフが「祝賀資本主義」として概念化しました(Jules Boykoff, Celebration Capitalism and the Olympic Games, Routledge, 2014.)。ボイコフには『オリンピック 反対する側の論理―東京・ロス・パリをつなぐ世界の反対運動』(井谷聡子他訳、作品社、2021年)という邦訳書もあります。
 

 日本の戦後史を振り返ると、昨年の大阪万博を含め、祝賀資本主義の事例であふれかえっています。今年のW杯は、もちろん日本主催ではありませんが、国論を二分するような重大案件をどさくさ紛れに決着させたい権力にとっては、まさに好都合です。テレビなどの限られた「尺」がサッカーネタで埋め尽くされ、本来、もっと時間をかけて情報を開示し、熟議されるべきテーマが覆い隠されます。
 

 サッカーはサッカーで楽しみましょう。でも、権力の動きには目を光らせましょう。国会の議論に注目しましょう。直近では、「壊憲」の第一歩となる国民投票法の制定です。今月末までが勝負というところでしょうか。サッカーと同じです。