「世界は誰かの仕事でできている。」

 

 これは、梅田悟司氏が生み出した、日本コカ・コーラ社「ジョージア缶コーヒー」の有名なキャッチコピーです。私、このキャッチコピーが好きで、高大コラボゼミで企業研究に取り組む高校生や就活に臨む大学生などを前に話す時、ネタに使ってきました。

 

 「世界は誰かの仕事でできている。」

 「君たちは、これから、その『誰か』になる。そして、『仕事』をする。」

 「さあ、どんな『仕事』をする?」

 「じゃあ、今、どうする?」……。

 

 こんな話から、高大コラボゼミの企業研究や就活のガイダンスを行ってきました。

 

 一昨日、高崎経済大学地域科学研究所主催で「『ものづくりシティ』高崎の躍動―独自技術を誇る高崎発ものづくりのグローバル展開と最新動向」と題する公開シンポジウムが行われました。7号館731教室に製造企業・金融関係者、本学教員、市民、学生など100名以上が集まりました。

 

 午後2時30分から5時30分ごろまで、3時間にわたるシンポジウムでしたが、あらためて「世界は誰かの仕事でできている。」を実感しました。

 

 意外と知られていませんが、高崎市は商業都市であるとともに、工業都市でもあります。歴史的に製造業の町なのです。近年、本学地域科学研究所では、高崎の中小製造企業に光をあてるべく、特定研究プロジェクトでケーススタディを行ってきました。

 

 研究成果の第1弾は『地方製造業の展開―高崎ものづくり再発見』(日本経済評論社、2017年)、第2弾は『地方製造業の躍進―高崎発ものづくりのグローバル展開』(日本経済評論社、2022年)として、出版されました。現在、シリーズ3が進行中です。私は全シリーズに参加しており、第1弾ではサイトウティーエム、第2弾では馬場家具、第3弾では昭和電気鋳鋼を担当しています。

 

 シンポジウムは、製造業プロジェクト第2弾に関わるものです。海外進出支援などに関する、群馬県、高崎市、群馬経済研究所、ジェトロの方々による基調報告ののち、秋葉ダイカスト、荻野製作所、群栄化学、ヌカベ、八木工業の社長(群栄化学は執行役員)が登壇し、パネルディスカッションが行われました。私は、「グローバル化」「DX化」「働き方改革」を主要論点とするパネルディスカッションのコーディネーター役でした。

 

 周知のとおり、日本において中小企業は、会社の数では99%、雇用で70%を占め、まさに経済の土台をなしています。大企業のように大々的な宣伝広告が打たれることはなく、一般の人には気づかれにくいとはいえ、中小企業なければ、大企業もなく、日本経済は成り立ちません。バブルの崩壊、リーマンショック、新型コロナのパンデミック、ウクライナ戦争、そして阪神淡路や東日本、能登の大震災など、様々な外生的ショックに見舞われながら、日本の各地域で、実に様々な分野で中小企業が頑張っています。

 

 一昨日、登壇いただいた社長さんらも、誇りと責任を持って、必死に事業を継続してこられたと思います。ほんの少し言葉を交わしただけで、熱意や覚悟、創意工夫の一端が伝わってきました。5社に限らず、当日お目にかかった様々な中小企業の方々は、生き残りをかけ、日々、爪に火を点す努力を続けてきたはずです。

 

 昨日、首相列席のもと、自民党大物政治家による裏金づくりについて議論をする政倫審が開かれたようですね。あるコメンテーターによれば、政倫審など、嘘つきに、さらに嘘をつく機会を与えるだけにすぎません。「証人喚問」ではない、その程度の政倫審を開催するにも、すったもんだしているのが、今の自民党政治です。

 

 裏金だ、「還付金」だなどというのは、日本全国で奮闘する中小企業の経営者・従業員を(もちろん、その他国民も)バカにしているとしか思えませんが、中小企業が自民党の権力基盤を形成する大きな力になってきたのも確かです。これから先のことを考えれば、地方の中小企業も、是々非々で、いろいろな政治的選択肢を模索すべきなのでしょう。

 

【最近いただいた本】

 

☆クィン・スロボディアン著/原田太津男・尹春志訳『グローバリスト―帝国終焉とネオリベラリズムの誕生』白水社、2024年、4800円;

 ホモエコノミカスを前提に自己調整的市場を信奉し国家の縮小を訴えるのがネオリベラリズムの根幹と捉える一般的な見方に、本書は異を唱える。

 帯の言葉をそのまま拾えば「彼らは、国民国家に分かたれた〈政治〉と世界で一体化した〈経済〉のあいだで均衡を保つ国際的な連邦を構想しながら、〈経済憲法〉を通じて世界秩序を実現しようと試みてきた。」

 ジュネーヴ起源の「オルド・グローバリズム」で敵視されたのは、大衆的民主主義であり、第三世界運動である。

 

☆韓金光『中国機械産業の技術発展戦略―工作機械・建設機械分野を中心に』法律文化社、2024年、4500円;

 中国経済のグローバル化に伴い、技術発展戦略が、電機・電子、自動車などから工作機械、建設機械、農業機械の分野に広がり、変化したことを論じ、その担い手、さらなる発展の課題を考察している。米中対立が深まるなか、国産化を含め、中国がどのような技術開発を行うか、興味深いところである。