12月2日(土)、久しぶりに対面での合同ゼミを大阪で行いました。長年にわたり、準備の過程を含め「濃厚接触系・体温伝達型」ゼミの重要プログラムとして位置づけられてきた合同ゼミ。相手をしてくれたのは、桃山学院大学経済学部のYゼミです。

 

 指導教員のY君は、矢野ゼミ10期生。下関市立大学、大阪産業大学を経て、今は桃山学院大学で教鞭をとっています。今回は、桃山学院大学Yゼミ1期生と矢野ゼミ32期生が顔を合わせました。

 

 私、桃山学院大学には初めてお邪魔しました。大学設置は1959年ですが、聖公会系のミッションスクールの起源は130年以上前になるそうです。チャペルもあり、きれいなキャンパスでした。

 

 合同ゼミは、矢野ゼミ2グループ(いつも仲良し?「ぐり」と「ぐら」)、Yゼミ3グループの研究発表会の形式をとりました。

 

 矢野ゼミ「ぐり」のテーマは「EV時代において日本の完成車メーカーが生き残るための課題について」、「ぐら」のテーマは「エネルギー価格高騰下における地域新電力事業の持続可能性―秩父市と所沢市の事例から見る対応策」というものでした。このテーマで、高崎経済大学経済学会の懸賞論文にも応募しています。

 

 Yゼミは「原子力発電は本当に安いのか―原発と太陽光発電のコスト比較」、「『コウノトリ育むお米』の販売と生産の現状と課題」、「衣類のリユース・リサイクルの現状と古着ビジネス―F.CDM社の工場へのヒアリング調査を中心に」の3つのテーマで報告しました。Yゼミの3チームは、今回の報告テーマで、今週末の学内プレゼン大会に臨みます。衣類リユースチームの報告は、なかなか面白かったので、上位入賞を期待したいところです。

 

 今回の合同ゼミは、事前に論文を交換し、前日までに質問概要を伝え、当日、それぞれのチームが発表し、討論するという形式で進めました。最初は、司会進行を含め、ぎこちない感じでしたが、最後のほうは、議論も深まり、良い合同ゼミだったと思います。

 

 終了後は会場で写真撮影、そのあとは、もちろん懇親会です。初めて会うとはいえ、そこは若者同士。すぐに打ち解け、時間いっぱい大いに盛り上がりました(飲みすぎのゼミ生もちらほら)。

 

 自分のゼミの卒業生が指導するゼミとの合同ゼミですから、いつものことですが、私にとっては本当に感慨深いものでした。「弟子」「孫弟子」などというのは、もはや死語でしょうが、「教え子の教え子」は、古い語法に従えば、私にとっては「孫弟子」です。爺さんが孫に会うわけです。

 

 それだけで、そもそも嬉しいのに、若者たちがクタクタになりながらこの日に備え、精一杯の発表をし、議論し、終わったあとは懇親会でビールを酌み交わす。達成感溢れる笑顔。あちこちで広がる談笑の輪。その光景を目のあたりにするわけですから、爺さんは幸せいっぱいなのです。幸せホルモンが大量にチャージされました。

 

 若者たちとの1次会のあと、Y君と2人、ママさんが1人で切り盛りするスナックで飲みました。途中から、桃山学院大学のYさんが合流。エリック・ヘライナーの翻訳『国家とグローバル金融』を出したころ、初めて一緒に飲んだ人ですが、今春は、東京経済大学で行われたイアン・ゴールディン『未来救済宣言』の合評会でもお世話になりました。

 

 お休みのところ、夜遅くに呼び出してしまい(呼んだのはY君です!)、申し訳ありませんでしたが、大学のあり方などの青臭い議論や昔話も含め、楽しい時間を過ごしました。ありがとうございました。2次会はY君にすっかりごちそうになってしまいました。こちらも感謝、感謝です。

 

 矢野ゼミ32期生の大半は、翌日、ユニバーサルスタジオジャパンに出向き、しばし命の洗濯ができたようです。しばらくの間、本当に大変でしたからね。リハビリを兼ね、頑張った仲間とともにテーマパークで過ごせたのもよかったと思います(昨日、32期Oさんから写真が送られてきました)。

 

 今回は、一生懸命準備し、対面式の合同ゼミを、ゼミ旅行を兼ねたような形で行えました。32期生にとっては、貴重な経験になったと思います。人生にとって大切な一コマになるはずです。

 

 この経験を資金面で支えてくれたのが「ゼミ基金」です。卒業生の皆さんのご芳志が現役ゼミ生に学びと成長の場を与えてくれました。今回は矢野ゼミ基金から、一人あたり3万円の補助をしています。卒業生の皆さんには、心から感謝します。本当にありがとうございました。またY君のおかげで、学生は桃山学院大学の合宿施設を使わせてもらえたので、宿泊費も格安で済みました。

 

 32期生諸君には、今回の様々な出来事すべて、「あたりまえ」のことではなく、通常なら「ありえない」「ありがたい」ことなのだということをかみしめてほしいと思います。いろいろな人の支援に感謝しつつ、これからは、進級論文、就活、試験勉強等、自らの進路を切り拓くべく、頑張ってください。

 

 そして、そのあと。今度は皆さんの番。支える側に回ってください。ゼミの後輩だけではありません。広く社会を支える人になってください。様々な人から、直接・間接に自分の受けた恩を忘れずに。これからの長い人生、感謝の気持ちを忘れずに。

 

【最近いただいた本】

☆服部茂幸著『グローバル金融資本主義の危機―混迷の世界と経済学』晃洋書房、2023年、3800円;

 『新自由主義の帰結―なぜ世界経済は停滞するのか』(岩波新書、2013年)、『アベノミクスの終焉』(岩波新書、2014年)、『偽りの経済政策―格差と停滞のアベノミクス』(岩波新書、2017年)など、刺激的な著作を次々世に問うてきた著者の最新作。今になって、ようやくアベノミクスの弊害が広く語られ、共有されるようになってきたが、服部氏は、早くからこの歴史的愚策を批判してきた。本著でも、ケインズやミンスキーの理論を踏まえつつ、世界金融危機から現在に至るまでの経済を分析し、主流派経済学の盲点を突いている。