先週水曜日、高崎経済大学では新年度開講となりました。対面を原則として、講義・ゼミが始まりました。昨年の今頃はガランとして、寂しいかぎりでしたが、今年は賑やかになりました。やはり大学キャンパスの主役は学生です。学生で賑わってこその大学です。
 開講に先立ち、矢野ゼミでは、4月1日・2日、「始業式」を兼ねて3年・4年合同の春期セミナーを行いました。2019年までは「春合宿」として行っていた恒例行事です。昨年はこの時期、何事もできず、合宿はもちろん、宿泊を伴わない形でのセミナーの実施も見送らざるを得ませんでした。濃厚接触系・体温伝達型の矢野ゼミでは、新年度開講前の「ゼミ始業式」を非常に重視していますので、今年は、できる限りの感染対策をとり、とにかく集まることにしました。
 セミナーの課題テキストは、南博・稲場雅紀『SDGs―危機の時代の羅針盤』(岩波新書、2020年)でした。めったやたらと注目され、これがらみのセミナーがしょっちゅう開かれるなか、とりあえずSDGsの概要を把握しておこう。4年の就活にも役立つかもしれないし、3年の高大コラボゼミの企業訪問でも重要な論点になるはずということで、この本を選びました(ちなみに、2021年度高大コラボゼミの高大共通テキストにもなっています。春期セミナーは、3年生にとって、4月20日から始まるコラボゼミの準備としても位置づけられました)。
 毎年、春合宿ではテキストを輪読してきましたが、それは合宿の目的の半分。開講に先立ち、大学での学び方やゼミへの向き合い方を再確認すべく、私からの講話を含む、オリエンテーションを実施する。同じ場所で同じ時間を過ごし、ゼミ生の交流を深める。こういった意味で、新年度開講前の始業式として、長年これを重視してきました。
 合宿とまではいきませんでしたが、今年はセミナーとして実施できました。とりあえず、よかったです。卒業論文集『経済学研究年報』第28号や『梁山泊』第28号も手渡せましたしね。ただ、2日目はオンラインに切り替えました。感染拡大が収まらないなか、4年生の就活予定や学生の体調、とりあえず初日で「始業式」的なプログラムを終了できたことなどからの判断です。あわよくばと期待したセミナー終了後の「お食事会」など、吹っ飛びました。
 私にとっての開講は先週木曜日でしたが、5限の4年のゼミについて、「前期の前半」は、オンラインで行うことにしました。理由はいくつかあります。
 前期の前半に関して、ゼミの延長はほぼありません(後期ゼミにおける卒論中間報告会は延長の可能性大ですが)。就活や進路決定に向けて忙しい時期、一コマのために時間をかけて教室に集まるのも大変だろうという配慮です。また、Zoomで午後4時から5時30分であれば、就活・試験勉強で忙しい人も出席しやすいだろうという判断もあります。そして(これが最大の理由ですが)、この時期の4年生は、就活その他で東京など感染拡大地域に出入りする人も多く、他の学年以上に感染リスクが高いのではないか、お互いにとって大事な時期に、できるかぎり感染のリスクを抑えたほうがよいではないかという判断から、とりあえず前期の前半は Zoomでの開催としました。 演習Ⅱは、「SDGsなど、現代版『大衆のアヘン』だ」と主張する斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)を輪読していきます。最高学年の4年生ともなれば、資本主義のニューフロンティアを賛美するがごとき、きれい事ばかりを後追いするわけにはいきませんからね。
 一方、金曜4限の3年のゼミは、対面式で実施しています。感染拡大状況次第で、これからどうなるか分かりませんが、大学の方針として、とりあえず原則対面式となっていること、3年のゼミは、いったん集まれば一コマで終わることはないこと、感染拡大地域の出入りが少ないこと、できるときに、なるべく時間と空間を共有しておきたいこと、といった理由から、マスクはもちろん、様々な感染防止に努めながら、対面式のゼミを続けるつもりです。窓もドアも開けながらですから、少々肌寒いこともあるかもしれませんが、私のつまらないギャグを控えれば「寒さ」も和らぐでしょう。
 というわけで、3年のゼミでは、先週から、John Ravenhill, ed., Global Political Economy, 6th ed., Oxford University Press, 2020. を読み始めました。これから少しずつ、30期生の英語力と日本語力を見極めていきたいと思います。
 講義は、木曜2限がアジア経済論、金曜2限が世界経済論Ⅰです。今年は、履修者数に変動が起きています。
 講義・ゼミは、対面式を原則としていますから、感染予防のために、なるべく「密」を避けなければなりません。したがって、教室の収容定員を睨みながら、各講義の配置を考えなくてはなりません。事務局教務チームは、時間割の作成、教室の配置が大変だったと思います。例年と異なる時間帯での開講を一部教員に要請し(私の場合、アジア経済論の講義を4限から2限に移動)、学生の履修登録後は休日出勤をしながら、時間割を決定してくれました。 世界経済論Ⅰの「裏番組」で、どなたかが動いてくれた結果でしょうか。今年は受講生が一気に3倍超となりました。ここしばらく、世界経済論Ⅰは40人そこそこで推移してきましたが、140人超えです(開発経済論との隔年開講のアジア経済論は例年通り70人ほど)。全学年配当の専門科目。昨年はオンライン授業に終始した2年生と、今年入った1年生が半分を占めますので、いつも通りのガイダンスは、いつも以上に気合いが入りました。「全国型公立大学たる高崎経済大学経済学部で学ぶ」にあたり、まずは「受験トラウマと偏差値幻想を捨てよ」という例のガイダンスです。 その後、「社会科学としての経済学」「経済学の一分野としての世界経済論」という入門的内容に続き、総力戦としての世界大戦、大戦間期の世界経済、そして「埋め込まれた自由主義」の制度化としての戦後国際経済体制を論じていきます。 アジア経済論では、アジア危機後の東アジア金融協力、WTO加盟後の中国の躍進、米中対立と日本のスタンスなどが大きなテーマとなります。一番にお目通りが叶ったと、コロナ対策もそこそこに、嬉々として遠くアメリカまで参勤交代に向かった首相はすでに帰国した模様ですが、どんな御用聞きをしてきたのでしょうか。講義終盤に差しかかる時期には、少しずつ、その内容が明らかになるかもしれません。 オンライン講義よりも、やっぱり対面式のほうが自分には合っています。学生も教室での講義に飢えていた感じがあります。最初だけかもしれませんが、アジア経済論、世界経済論とも、雰囲気は悪くありませんでした。 新型コロナ禍は、変異株が勢いを増したおかげで、いつ終わるのか、まったくめどが立ちません。対面式で始まった講義・ゼミが一体いつまで続けられるか、分かりませんが、しばらくは、マスクをし、大声出さずに、マイク使いながら(講義にマイク使うなんて、初めてです!)、ゼミに加え講義も、濃厚接触系・体温伝達型でいきたいと思います。学内でクラスターが発生しないことを願いながら。

【最近いただいた本】
☆伊谷樹一・荒木美奈子・黒崎龍悟編『地域水力を考える―日本とアフリカの農村から』昭和堂、2021年、2800円;
 地産地消の発電インフラとしてだけではなく、社会的紐帯としての小水力発電の可能性を、日本とアフリカを事例に論ずる。再エネと言えば「大規模ソーラー発電」というのは、あまりにも発想が狭すぎる。小さな水車にも大きな力がある。
☆岩田康之編『教育実習の日本的構造―東アジア諸地域との比較から』学文社、2021年、3200円;
 今春から高千穂大学人間科学部に異動した14期Hさんからいただいた。アンケートや国際比較など様々な調査によって、日本の教育実習の運営体制、教育実習をめぐる力関係を明らかにし、問題点を浮き彫りにして、教員の働き方に関することを含め、「地域教師教育機構」に改善の方向性を見いだす。
☆高崎経済大学地域科学研究所編『農業用水と地域再生―高崎市・長野堰の事例』日本経済評論社、2021年、3400円; 高崎市を流れる長野堰は世界灌漑施設遺産に登録されているが、その歴史的起源や今日的意義に関して、必ずしも専門的に研究が積み上げられてこなかった。このたび、高崎経済大学地域科学研究所研究プロジェクトで本テーマが取り上げられ、その成果として本書が出版されたことの意義はきわめて大きい。