楽天やファーストリテイリングが英語を社内公用語にするというニュースが大きく取り上げられましたが、本日の日経新聞によると、証券業界も英語共通語化に踏み切るそうです。 カルロス・ゴーンが社長に就任したとき、日産自動車が英語を社内公用語にして話題となり、NHKスペシャルでも「英語が会社にやってきた―ビジネスマンたちの試練」という番組が制作・放映されました(2000年10月28日放映)。あれから10年。今般の英語共通語化の流れは、これまでにもまして「本格的」な感じがします。  各企業が、会議等での使用言語を英語にするなど、社内公用語化にシフトしているのは、日本人社員に国際感覚を身につけてもらうため、とかという「のんびり」したものではありません。ずばり、優秀な人材を確保するためです。日本の少子化・市場縮小化が進むなか、ビジネスの現場は、アジアをはじめ、どんどんと海外にシフト。商売相手は外国人。グローバル化するなか、日本語が壁となり、優秀な人材を確保できないようでは、企業の存亡に関わる。広く世界に人材を求めるうえでも、英語共通語化は、最低限必要な第一歩という認識のようです。 「優秀な人材を国籍を問わず活用する流れは、証券会社でも強まっている。………欧米の投資銀行は世界中の拠点で、英語を公用語として使っている。日本の証券会社にとって英語の『共通語化』は、欧米勢と競い合う力をつけるグローバル化の大前提にすぎない。」(『日本経済新聞』2010年9月7日) こういうビジネスの現場に多くの若者を輩出する大学ですから、この流れをどう評価するにせよ、座して見つめるわけにはいきません。どこの大学も英語教育に力を入れざるをえません。 以前、当ブログで書いたとおり、高崎経済大学でも、英語教育に関し、近年、様々な改革を行ってきました。詳しくは、それを参照していただきたいのですが、今では、TOEIC受験が1年、2年で必須(2009年度新入生から。地域政策学部では、それ以前から3年も必須)。また両学部の1年生~3年生全員、24時間在宅e-Learningによる英語学習が可能な体制を整えました。正課授業においても、選択の上級クラスを開設しました。一般財団法人高崎経済大学後援会にお願いして、今年度からTOEICの成績優秀者の表彰制度も作ってもらいました。 9月12日、本学を会場としTOEICの公開テストが行われます。経済学部の1年生・2年生、地域政策学部の1年生・2年生・3年生全員が受験しますから、一大イベントです。本学も、遅まきながら英語学習の環境を整えつつありますから、学生の皆さんも、できうるかぎりの準備をして、試験に臨んでほしいのですが、学生さんは、上述のような流れをどこまで認識できているのか、怪しい部分もあります。 24時間在宅e-Learningの利用対象者を、今年度から経済学部も3年生にまで広げたのですが、実際の利用者は伸び悩み。経済学部の場合、必修の英語は2年で終わるため、大学の「単位」とか「成績」というインセンティブはないのかもしれませんが、ただで使えるシステムを使わないというのは、私には不思議でなりません。 そんなものに頼らなくても、自分でやる、というのかというと、そういうわけでもなさそうです。英語の勉強は大学2年で終わり、と考えている学生さんが多いのかもしれません(2年生までも、どこまで真剣に勉強していたかは分かりませんが)。9月のTOEICの大学生協での申し込みは、全体で50人に満たない(!)数です。たぶん、そのうち半分は矢野ゼミ生です。他の学生は、どうしているんでしょうか。生協以外で申し込んでいるのでしょうか(9月は団体割引で受けられるので、生協申し込みなら安いんですが)。少なくとも今回はあんまり受けないんですかね。夏休み、たっぷり勉強時間があるのに。次ぎ、受けるんですね、きっと………。 現実逃避はしないほうがいい。各企業・各業界で濃淡はあれ、英語公用語化の流れはおそらく止まりません。これまで以上に、採用段階で一定の英語能力が求められることになるでしょう。日本の場合、一般的に今のところ、その英語能力はTOEICで測られることになります。 TOEICのスコアなど、どこの大学にいても、本人の努力で伸ばせます。スコアが伸びないのを大学のせいにはできません。高崎経済大学だから700点までしか取れません、っていうシステムではないのです。「高経だから、できない。無理だ。」というのは、受験トラウマと偏差値幻想に頭をやられ、サボり癖がついてしまった奴の言い訳にすぎません。どこの大学にいようと、やる奴は、すでにやっています。自分の属する大学を、どこか他の大学と比べて、上だとか下だとか言っている暇はないのです。 矢野ゼミのみんな。どんどんスコアアップしてください。卒業生の皆さんのご芳志がゼミ基金に振り込まれてきています(入金していただいた皆さん、本当にありがとうございます)。全員にだって、キャッシュバック可能です。730点を超えれば、矢野修一ポケットマネーによる寿司屋接待もあります。これは、さすがに一挙に全員はきついですけど、現状ではまだまだ家計が揺らぐほどではない!少しは俺をヒーヒー言わせるぐらいのスコアを取ってみんかい!と(ちょっとビクビクしながら)ゼミ生を叱咤しています。 君たちのように、能力もあり、素晴らしい若者が、たかが英語で躓くなんて、あまりにももったいない。日本の損失です。満点取る必要なんてない。700点超えれば、後援会も表彰してくれる。730点超えれば、矢野と寿司屋。君たちなら手の届く距離です。現実的目標です。あとは、必要となったときに、臆することなく実地で頑張ればいい。よく指摘されるとおり、万国共通語は、「English」ではなく、「Broken English」なのだと思います。みんながみんな、正確無比な文法を駆使し、美しい発音でコミュニケートしているわけではない。俺たちでもできる。お互い、頑張ろうや。そう、お互い。 日本の大学教師の世界にも、英語の波が押し寄せています。国際教養大学や立命館アジア太平洋大学では、授業が英語。ということは、教師の側も英語ができないと話にならない。語学としてではなく、一般的な講義が英語で行われる大学も増えてきた。学会などでも、「英語で授業をやらなくちゃいけないので、準備が大変」という話をちらほら聞くようになりました。新規採用の際も、模擬授業などあたりまえ、それを英語でやらせるところも増えてきています。本当に大変です。 日本の大学で、すべての授業を英語でやらなければならないのかどうか、それが生き残り戦略として本当に有効かどうかは分かりません。しかしながら、現在、日本の企業社会を飲み込みつつある波は、徐々に大学にも及びつつあります。大学にも英語公用語化の波が及ぶとなると、私にとってもきつくなるでしょうね。頑張るしかないんでしょうけど。