先日のブログでは、「濃厚接触系・体温伝達型」のゼミ活動をそろり、そろりと復活させている旨、書きしたためました。その一環で「就活サポートプログラム」を先週金曜日、4年ぶりに、東京・上野において、対面式で実施しました。
 矢野ゼミの「就活サポートプログラム」は、面接練習の前に、第一志望企業を想定し、現役の3年生があらかじめエントリーシートをまとめ、サポーターの卒業生に送る。サポーターが目を通し、コメントをつけて返却する。3年生が改稿し、卒業生に第2稿を送付する。それをもとに、模擬面接を行うというものです。ここしばらくは、新型コロナにたたられ、オンラインでの開催を強いられましたが、今年はリアル開催に踏み切りました。
 手探りで始めた卒業生による就活サポートは、今年で17年目です。ゼミ15期生に対して初めて提供され、今年は31期生が対象になりました。今やゼミの伝統行事と言っていいでしょう。これもひとえに、ゼミ卒業生による支援の賜物です。本当にありがとうございます。
 17年連続で支援してくれているのが、今や学生とは親子ほど年齢が離れている4期I君(NTT東日本)と6期K君(JA全中)です。そこに加わり、今年も協力してくれたのが、最初、サポートされる側としてプログラムに参加した15期生のK君(DNP)、S君(みずほリサーチ&テクノロジーズ)、H君(損害保険料率算出機構)の3人です。支えられた人が支える側に回ってくれているのです。貴重な有給休暇を使って、ゼミ生のために参加してくれた人もいます。毎年のことながら、本当に頭が下がります。感謝の気持ちでいっぱいです。
 久しぶりのリアル模擬面接は、八重洲ではなく、H君の手配してくれた上野の貸会議室を利用しました。新型コロナ禍に見舞われ、日本でもリモートワークが広がりましたが、働く場所は自宅とは限らず、コワーキングスペースやカラオケボックスを改装したスペースということも多いようです。Wi-Fiやスクリーンなど、デジタルインフラの整った貸会議室もあちこちにできたようです。
 上野駅近くの今回の貸会議室は、昭和の雰囲気漂うビルの4階。TKPなど大手が展開する八重洲の小洒落た貸会議室よりも殺風景ですが、模擬面接会場として、さほどの問題はありません。料金は4時間半借りて7000円もかかっていませんから、下手すりゃ、八重洲界隈の10分の1(!)です。
 とにもかくにも、事前にエントリーシートを書き上げた31期生6人と卒業生5人、そして私の12名が集まり、久しぶりのリアルな就活サポートプログラムが実施されました。オンラインでの開催は安価で便利な側面はありましたが、面接の練習、その後のフィードバック、アドバイスとなれば、リアルでの開催に越したことはありません。服装、視線、表情やしぐさまで、いろいろな状況を俯瞰でき、卒業生もより的確なアドバイスができたと思います。
 いつも感じることですが、……現役ゼミ生のみんな。この時期に面接の練習やってもらって、本当に良かったよな。31期生があのエントリーシート、あの言葉遣い、あの内容で本番の面接に臨んだら「秒殺」だったでしょう。いつもながら、話にならないレベルでした。志望動機も自己PRもはっきりせず、第一志望と称する企業で何をやりたいのか、てんで分からない。6人の面接を横で観察しましたが、私が採用担当なら「全員、即お祈り」です。
 厳しくも適切なアドバイス、コメントを受けた31期生の皆さん。指摘された点を改善し、十分に準備したうえ、本番に臨んでください。今回はあくまでも練習です。エントリーシートの書き方であれ、面接の仕方であれ、ここで学んだことを本番に生かしてください。そのためにこそ、先輩方は厳しい言葉を投げかけたのです。皆さんの成長、成功を願ってのことです。泣いて、凹んでいる暇はありません。
 リアル開催のだいご味は、終了後の懇親会。翌日のスケジュールの関係上、2人の学生は模擬面接終了後、帰路につきましたが、そのほかの10人は会場近くの居酒屋でワイガヤの懇談会となり、より突っ込んだ話もできました。
 繰り返しになりますが、現役ゼミ生は、こうしたプログラムを「あたりまえ」だと誤解しないようにしてください。普通ではありえない、ありがたいものです。採用を含め経験豊富、今や会社の幹部となり、多忙な卒業生が、わざわざ休暇を取って、夜遅くまで後輩のために時間を割いてくれるなど、ありえないことです。感謝の気持ちを忘れないでください。そして感謝の気持ちを次に、別のところに、つなげてください。受けた恩は石に刻んでください。
 ゼミの就活サポートプログラムは、直接関わってくれる先輩だけではなく、多くの人たちによって支えられています。今回も貸会議室の賃料、現役ゼミ生の交通費補助などには、ゼミ基金から助成してもらいました。毎年ありがとうございます。
 定年まであと3年。このままでいけば、本プログラムは、来年の32期生から35期生まで続きます。トータルで20年以上のプログラムとなります。もうしばらく、ご支援のほど、よろしくお願いします。
【最近いただいた本】
☆欧州委員会『持続可能な都市モビリティ計画の策定と実施のためのガイドライン(第2版)』地域公共交通総合研究所、2022年、1800円;
 先日、お招きした宇都宮浄人氏からいただく。講演中言及された「SUMP(Sustainable Urban Mobility Plans)」の解説書。ヨーロッパの先進的取り組みを少子高齢化の進む日本の公共交通にどのように生かすか。具体的事例とともに示されるガイドラインは大いに参考になるだろう。
☆小池洋一・子安昭子・田村梨花編『ブラジルの社会思想―人間性と共生の知を求めて』現代企画室、2022年、3300円;
 ウクライナ戦争の長期化、米中対立の激化に伴い、グローバルサウスにあらためて耳目が集まるなか、本書が出版されたことは大変意義深いと思う。経済発展の一方、格差と暴力のもたらす困難に苦しんできたブラジルの思想に対話と共生のヒントを求めようとしている。
 私にとっても興味深いセルソ・フルタード、フェルナンド・エンリケ・カルドーゾといった開発政治経済学者、教育学者パウロ・フレイレも当然ながら取り上げられているが、そのほかにも未知の人たちの思想も収められている。大いに刺激を受けたい。