年度末にいくつか対面の講演会・研究会などがありましたが、無事終了しました。 入試や判定会議、高崎経済大学附属高校新3年1組への「高大コラボゼミ」オリエンテーション、前橋女子高校スーパーサイエンスハイスクールのポスター発表会、ぐんまみらい信用組合の経営諮問会議、新年度初回講義(オンデマンド)の準備、ゼミ募集資料のアップなどもありましたから、結構忙しい日々を過ごしました。
 3月4日は、立教大学で兄弟子Sさんの最終講義を聴きました。大勢の参加者の中に懐かしい顔もちらほら。終了後の懇親会はSゼミ卒業生の方々にお任せし、私は3期S君(大分大学)、10期Y君(大阪産業大学)、本学Oさんと、「孤独のグルメ」でも取り上げられた中華料理屋で盛り上がりました。
 3月9日は、本学名誉教授T先生をお招きし、「持続的発展をめざして50年間取り組んだアーバンデザイン」と題する公開講演会を開催しました。先生が半世紀にわたり、主要な研究フィールドのひとつとしてきた滋賀県草津市を中心に、前橋や高崎の事例にも触れながら、アーバンデザインの重要性について語っていただきました。
 講演会後は、居酒屋「三幸」で懇親会。講師を囲んで計9人。地域政策学部の新人Tさんがギネス記録を作った話から鉄道模型まで、いろいろな話で盛り上がりました。
 3月11日は東京経済大学で、拙訳/イアン・ゴールディン著『未来救済宣言―グローバル危機を越えて』のハイブリッド式の合評会でした。対面でも20名ほど集まっていただき、実り多い議論ができたと思います。本を出せば、それが翻訳であっても、なにがしかの反応が得られ、それが大いに勉強になります。ありがたいことです。
 批判的視点を含め、いろいろな論点が提示されましたが、私としては、以下のような点を再確認しました。
……ゴールディンは、「危機」が「解決」の契機となった歴史的経験を振り返りつつも、けっして「危機」が自動的に「解決」を生み出すわけではないことを主張し、政治的意思の重要性を訴えた。「これまでどおりの日常」に戻るのではなく、危機を可視化するとともに、解決に向けた多国間協力を求めた。先進国でさえ「ゲーティッド・コミュニティ」化は不可能だ。ゴールディンにとっての「1945年」とは、単純に回帰すべき目標ではないし、反復が可能ととらえているわけでもない。現代の危機を克服するための参照基準であり、人類にとって重要な経験値と考えている。 社会科学に求められるのは、世界の平和と安定に向け、適切な時間軸と空間軸を設定し、選択肢を拡大すること。『未来救済宣言』は、「今だけ・ここだけ・自分だけ」という新自由主義的次元を超越し、まともな時間軸と空間軸を涵養するため参考にすべき著作のひとつである……。
 すきっ腹で飲んだせいか、あるいはまた、議論の盛り上がりに気持ちが高ぶったか、合評会後の懇親会では、かなり酔いが回りました。無事高崎までたどり着けたのが不思議なくらい。翌日は久しぶりに二日酔いになりました(3月9日も結構飲みましたから、疲れ気味だったのかもしれません)。合評会、懇親会には東京経済大学の学長にも参加いただきましたが、失礼がなかったか、やや心配です。 3月18日(土)は、本学に35年間勤務されたN先生の退職記念講演会が開催されました。講演会では、農山村開発や内発的地域電化に関する長年の研究について、豊富な資料、写真に言及しながら語られました。そして、共有林、水利、堤防、地域電化事業などを通じて育まれる「共通の関心」こそがコミュニティの存立基盤であることが明らかにされました。
 本講演会には、本学理事長、副学長、教職員、学生のほか、明治大学・日本大学など他大学の教員、Nゼミ卒業生、ぐんまみらい信用組合幹部職員、高崎経済大学附属高校教員、一般市民など、群馬県にとどまらず、全国各地から約120名の方々に参加いただきました。矢野ゼミ卒業生も、6期K君(JA全中)、Tさん(ゴールドマンサックス)親子、7期K君(伊勢崎市役所)、K君(名古屋大学)、12期M君(福島県庁)、19期K君(全信組連)が来てくれました。
 講演会後は、創業140年を数える高崎市の老舗割烹「魚仲」で懇親会が行われ、退職記念講演会は思い出深いフィナーレとなったわけですが、そのあとは、懇親会に参加した6期K君、7期の両K君と4人、高崎セントラルホテル1階「からっ風」で2次会。同じ店に、その後、Nゼミ卒業生、さらにはN先生が研究仲間と共に現れました。それぞれのテーブルで、講演会、懇親会と続いた1日の余韻を楽しみながら、歓談できたようです。
 来週末は、いよいよ4年ぶりのゼミ春合宿です。「濃厚接触系・体温伝達型」ゼミ行事の復活です。
【最近いただいた本】
☆澤田守著『農業労働力の変容と人材育成』(農林統計出版、2023年、2200円);
☆堀口健治・澤田守編著『増加する雇用労働と日本農業の構造』(筑波書房、2023年、3000円);
 矢野ゼミ1期生で、現在、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」で調査・研究を続ける澤田氏の単著と共編著。澤田氏は農業の就業構造と農業労働力、人材育成について長年研究してきた。ここにまた金字塔を打ち立てた。
 異次元軍拡政策のもと、ブレブレの日本農政をどうするか。考えるべきヒントがありそうだ。
☆加藤光一・大泉英次編『東アジアのグローバル地域経済学―日韓台中の農村と都市』(大月書店、2022年、3000円);
 アジア・コンセンサス研究会の若手メンバーT氏が分担執筆した本。農村と都市住宅問題について、東アジア規模で比較研究を行っている。危機に瀕しているのは、農村だけではなく、都市も同様という視点で、日韓台中の土地所有を分析している。