昨晩、当ホームページ管理人3期S君から電話がありました。夜もまださほど更けていないはずなんだけれど、かなり酔っぱらっているご様子。こういうシチュエーション、よくあります。年に何度か、ある時は居酒屋から、ある時はスナックから突如電話がかかってきます。今回の場合、聞けば9期F君ともども、京都への引っ越しを終えた10期Nさん、11期C君の新歓コンパを兼ね、円山公園で花見をしているとのこと。夜は混むので、午後2時から飲み始め、そろそろ「そんぶれろ」に出向こうかというところだったらしいです。4人と代わる代わる、ひとしきり喋り電話を切りました。 京都。そこは見知らぬ土地で、そこで大学院生活を送ることには不安もつきまとうはずなのに、待っていてくれるゼミの先輩がいる。花見で歓迎してくれる人がいる。心強いはずです。あたりまえの環境ではありません。感謝の気持ちを忘れないでくださいね。順番です。自分の番が来たら、今度は後輩たちの面倒を見てやってください。ディベートでまたお世話になると思います。 矢野ゼミを卒業し、高崎を離れ、大学院で学んだ(学んでいる)人の数は24名になります。ゼミ卒業生は153名ですから、かなりの割合で進学していることになります(ちなみに高崎経済大学経済学部の今春の卒業生490人のうち進学したのは21人です)。いつも言っているように、そして機会があれば書いてきたように、ゼミ生に私の方から進学を勧めることはありません。むしろ「やめておけ」と言うことにしています。「食えない」可能性が大きいからです。私が大学院への進学を選択肢の一つとして提示したのは、過去3名しかいません。それも彼らが優秀だったからではありません。日々努力してきたものの学部4年次には夢かなわず、かといって、それぞれの置かれた環境、条件を考慮すれば、本学に籍を置いたまま再チャレンジするのもどうかと考えられる時、研究を深め、仕切り直す意味で進学することも考えられるとして、大学院を薦めたことはあります。 大学院重点化後、我が国の院生の定員は増え、入りやすくはなりましたが、その分、進学後の研究条件、修了後の進路がきつくなっています。それなりに努力の必要な試験に合格し、大学院で研究し、論文を書き、大学院を出たからといって、それに見合う職、希望する職につけない可能性が大きいというのが現状です。だから、上記3名の人以外には「やめときなさい」と言ってきたわけです。「こんなはずじゃなかった」と後悔し、人生を誤らせるわけにはいきませんから。 大学院を取り巻く一般的状況、厳しい条件を分かっていて、なおそういう道に進みたいという人に対しては、いろいろと話し合い、その確固たる意思、また親の意向を確認したのち、微力ながら、私のできる限りでの手助けをしてきました。ほとんどの人とは違った世界で生きていこうとすれば人並み以上の努力が必要であり、精神的にタフでなければなりません。研究の道に生きる覚悟ができている人、経済的な準備がある人、自分なりの努力を積んでいる人に、私にできる範囲での支援をしてきたわけです。 だから、矢野ゼミ卒業生で進学した人は、覚悟のうえそうしたはずで、弱音など吐かないはずなのですが、現実にはいろいろな困難にぶつかり、悩みを抱えることも多いようです。いろいろな声が聞こえてきます。修士論文段階で躓くこともある。博士課程に進んでもなかなか論文が書けない。経済的条件はだんだんと厳しくなる。指導教員との折り合いについても必ずしも良好とは言えない。学界で評価されるような論文を書いているにもかかわらず、なかなか「就職」できない。そして、厳しくも分かりやすい現実。だんだんと歳をとってくる。 それでもね、厳しいな、つらいなと思った時には、「原点」を思い出してください。何のために進学したのでしょう。私と何を話し合ったのでしょう。きついでしょう。しんどいでしょう。それでも、そんな時こそ、原点に立ち返り乗り切ってください。もちろん最終的にどこかで区切りをつけるべき時が来るかもしれません。でもあっさりと退却しないでください。自分の「こだわり」を思い出してほしいと思います。 この4月から5期Tさんが日本学術振興会特別研究員となり、東京大学東洋文化研究所に籍を置きつつ、研究することになりました。3年間、研究費を支給され研究を続けられるのですが、昨年の3期S君(ホームページ管理人。上記の電話の主)に続く快挙です。採択率2割を切るなかで選出されたわけですから、研究業績・能力が高く評価されたということになります。タイへの留学を控えていますが、体に気をつけ実りある留学生活を送ってください。 同じく5期M君は、4月から東京大学社会科学研究所にて「研究機関研究員」として働くことになりました。任期のある職であり、研究以外にもいろいろな仕事が待ち受けていますが、このチャンスをできる限り活用してください。望みうる最高の研究環境ではないかもしれませんが、現状を考えれば、好条件と言えるでしょう。今後彼からどんどん届けられる(はずの)「抜刷」が楽しみです。 進学してしまったみんな。原点を見つめ直して頑張れ。そして、現役ゼミ生諸君。安易に進学を考えないように。

メッセージ
無題【坊主頭】
(2004-04-10 21:36:00)

「安易に」就職(就社)するのも禁。進学するも就職するもその先は広い海。現役生のみんなは河口にいるのです。流されないように頑張れ。