12月8日、今年も合同ゼミが無事終了しました。共同論文の作成、質問の交換、発表資料の準備、プレゼンリハーサル、遠距離バス移動、そして当日の討論と、27期生にとっては大変だったでしょうが、みな頑張りました。お疲れ様でした。 例年通り(?)、27期生の共同論文も、初稿はとても読めたものではありませんでしたが、短時間でかなりレベルアップしました。フォーマットを整え、高崎経済大学経済学会の懸賞論文に間に合わせたのは立派です。ここ1か月ほどは、ほぼ毎日、図書館1階フロアで集まり、準備にいそしんでいましたね。指導教員として、そこにちょこっと顔を出したり(せっかくの話し合いを邪魔してごめんなさい)、遠くで眺めたりしながら、いい時間を過ごしているなと嬉しく感じていました。 合同ゼミ会場は懐かしの京都大学楽友会舘。由緒正しき歴史的建造物ですが、私の学部時代など、地下の部屋で麻雀やビリヤードに励んだだけ。院生にもなれば、さすがに2階の部屋で研究会を行ったり、講演を聴いたり、同窓会で集まったりしましたが。 当日は、それぞれ3期S君、10期Y君が率いる大分大学3年生、下関市立大学3年生、そして矢野ゼミ3年生の総勢50名ほどが、結婚式や講演会が行われる2階ホールで発表・討論を行いました。 合同ゼミ後の講評でも言いましたし、いつも書くことですが、私にとっては、本当に幸せな時間でした。自分が四半世紀以上にわたり、ゼミ指導を行ってこなければけっしてあり得なかった出会い。自分が学部時代は地下でマージャン、ビリヤードしかしていなかった楽友会館で、全国各地から若者が集まり、真剣に討論している。そして、この経験をもとに、これからさらに研鑽を重ね、社会に飛び立ち、世界を支えようとしている。いい光景でした。まったくの微力ながら、有為の若者たちが頑張る土俵を作れたことに、ささやかな幸せを感じた1日でした。こういう日があると、大学の教員やっててよかったと心から思います。 でも、こんな日はダメです。予想通り、飲みすぎました。これも懐かしの居酒屋「くれない」で、討論を終えた3大学の学生があちこちで談笑している風景は、酔いが回るほどに、ここは天国かと錯覚するほど。ゼミ総会の時、卒業生の子どもたちが風船を持って、笑顔で会場を走り回っている光景を目の当たりにした時と同じ感覚です。 一次会で帰ればいいものを、これまた懐かしのスナック「ヒスイ」に行きたくて、S君、Y君を誘い、田中神社までタクシーを飛ばしました。Y君の「ヒスイ」デビューです。久しぶりにカラオケを歌い、久しぶりに午前様。途中参加のYゼミ生には、「先生の先生」ではなく、酔っぱらってろれつの回らないタダのオッサン(以下)にしか見えなかったでしょう。翌日は久しぶりの二日酔いでした。 今はそれと気づかないかもしれません。でも27期生は、人生におけるかけがえのない時間を過ごしたはずです。合同ゼミに取り組んだ経験、いや、この1年間の追いコン合宿や春合宿、夏合宿、英語の輪読、高大コラボゼミなど、さまざまな経験を糧に、これから自らの進路を切り開いて下さい。皆さんはずいぶん成長しました。自信を持って、自らの道を突き進んでください。 これから先は特に個人的努力が試されると思いますが、合同ゼミを含め、一緒に頑張ってきた仲間は、いろいろな場面で皆さんを支えてくれるでしょう。そして、置かれた環境でつべこべ言わず、真摯に精いっぱい頑張ろうとする若者を支えたいという大人も結構いるものです。ゼミの先輩が助けてくれることもあるでしょう。もちろん、私も若者を支えたい大人の1人です。 合同ゼミに参加した27期生には、1人あたり1万4000円(16名合計22万4000円)をゼミ基金から補助しました。観光以外の必要経費の約半分はまかなえたと思います。卒業生の皆さんの志により、今年も多くのゼミ生にチャレンジの場を与えてもらいました。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします(ゼミ基金への寄付はまだまだ受け付けております)。【最近いただいた本】☆尾上修悟『「社会分裂」に向かうフランス―政権交代と階層対立』明石書店、2018年、2800円; 『ギリシャ危機と揺らぐ欧州民主主義―緊縮政策がもたらすEUの亀裂』、『BREXIT「民衆の反逆」から見る英国のEU離脱―緊縮政策・移民問題・欧州危機』(いずれも明石書店刊)に続く欧州経済の現状分析第3弾。ここ数年、すさまじい勢いで書き続けておられる尾上氏には、ただただ脱帽である。 怒り狂う民衆を「ポピュリズム」の一言で片づける議論も多い中、欧州危機の深層に迫ろうとする労作揃い。今回は、マクロン政権下のフランス。まさに時宜を得ている。☆須網隆夫・21世紀政策研究所編『英国のEU離脱とEUの未来』日本評論社、2018年、2000円; ブレグジットの背景・論点、今後の展望を様々な角度から分析。謹呈いただいた土谷氏は第4章「移民問題とメディア政治」という中核的内容を執筆。今回はブレグジットだが、この視点は、トランプのアメリカ、メルケルのドイツ、マクロンのフランスを分析するにも重要だろう。上記と併せ読むと、欧州の将来はけっして楽観できるものではないと認識せざるをえない。☆寺西俊一・石田信隆編著『輝く農山村―オーストリアに学ぶ地域再生』中央経済社、2018年、2400円; 条件不利地の多いオーストリアで、有機農業や再生可能エネルギーなどに依拠しながら、どのように地域の再生が図られたか。日本が学ぶべきヒントを探ろうとしている。 欧州をめぐっては上述のとおり、危機的状況から目を背けてはならないが、何が欧州を一つにしてきたのかという要因を、遠い日本で捉え間違えないためにも、こうした調査分析は重要である。「二つの地域主義」があらためて振り返られるべきである。