先週金曜日、「日本企業の海外戦略」を統一テーマとする「高大コラボゼミ」の企業訪問を実施、無事終了しました。高崎経済大学と高崎経済大学附属高校の学生・高校生6グループが、高・大の引率教員とともに午前中、住友商事、トヨタ自動車、キリンホールディングス、味の素、資生堂、電通の各社を訪れ、4ヶ月間の共同研究に基づいてインタビューを行いました。午後は、各グループが一堂に会して東京証券取引所(東証アローズ)を見学し、証券取引の基礎、実践について学びました。最終的な研究成果は、9月18日(土)、本学731番教室において行われる報告会において発表されます。 これまでも当ブログでは、たびたび「高大コラボゼミ」という言葉が出てきましたが、そもそも、これは何なのか。今年度の『梁山泊』にはその概要を載せましたが、簡単に言うと、昨今注目される「高大連携」のひとつであり、大学生と高校生が、教員の指導を得ながら、ゼミナール形式のもと、共同で研究を進める実践的学習プログラムです。 高大連携そのものは、少子化に伴って競争が激化するなか、いずれの大学においても大きなテーマとなっています。受験生を確保するとか、学生が大学の授業、生活にスムーズにとけ込めるようにするといったことを主な狙いとしていることが多いのですが、今回の実践は、それとは若干趣を異にしています。 高崎経済大学と高崎経済大学附属高校は、それぞれ高崎市が設置する唯一の大学、高校として協力し、2008年度から本格的な高大連携を進めてきました。理科系大学による高大連携については、文科省の後押しもあって様々な事例が知られてきていますが、高崎経済大学は、大学説明会や進路ガイダンス、施設見学といった、どこの高校にも提供している一般的なものだけではなく、英語や数学の学習に関する講演会、小論文講座、高校生のディベート支援、高経文庫の開設等、社会科学系大学による高大連携として、附属高校に対して先駆的なプログラムを提供してきました。附属高校側も、教職志望の学生に対し、教育実習のみならず、教育現場において実践的な体験を積む場を、教職志望の学生に与えています。こうした実績を踏まえ、また2010年度から附属高校普通系3年次に「高経クラス」が開設されるのを機に、さらなる高大連携を深めるべく、「高大コラボゼミ」が立ち上がりました(高経クラスとは、数学を受験科目として勉強し国公立大学文系学部を目指すクラスです)。 これは、高崎経済大学と附属高校の教員同士、また学生と生徒が協力し、経済・経営等に関する実践的学習を少人数のゼミナール形式で進めていくもの(1グループ10人程度)であり、類似の例はあるにせよ、おそらくは全国初の試みです。これからの大学の地域貢献や高大連携のあり方を模索するうえでも注目すべき事例になると思われます。 一般的に高大連携は、受験生確保を目指す大学側の働きかけにより進められることが多いでしょう。しかしながら、高大連携とは、大学側が上に立ち、高校側に一方的に「施し」を与えるものではありません。その名の通り、両者が連携し、それぞれの教育効果を高めようという「双方向性」こそが本来の姿です。「高大コラボゼミ」は、こうした高大連携の理念の実現に向けた画期的事例となるはずです。「受験生確保を目指す大学、推薦枠確保を目指す高校」などという近視眼的な枠組みとは無縁の試みです。 「高大コラボゼミ」の中身としては、いろいろなものが考えられます。今年度、大学側では具体的な予算措置もなされていません。2010年度は、内容も取り組み主体も、次年度以降に向けた試行的なものとなりました。連携したのは、矢野ゼミの3年生(19期生)と附属高校3年1組(高経クラス)の生徒です。「日本企業の海外戦略」を共通テーマとし、大学・高校の教員の共同指導体制のもと、大学生と高校生が協力しながらグループ学習を進めていきました。柱は3つです。 まず第1に、日本経済新聞社主催「全国学生対抗円ダービー」への参加です。「日本企業の海外戦略」を研究するためには、何よりも国際経済の動向に関心を持ってもらわなくてはなりません。その第一歩として、円・ドルレートに目を向けてもらうため、矢野ゼミ生にはおなじみの円ダービー学生対抗戦に参加してもらうことにしました。 附属高校の高経クラス36名を6人ずつの6グループに分け、2010年5月末、6月末の円ドルレートを予想するための勉強会を、総合学習の時間などを利用して定期的に開催する。6つのグループには、それぞれ2~3名の大学生チューターを付け、高校生の勉強会を支援する。大学生たちも、独自に円ダービーに参加する。こういった内容です。 第2に、「日本企業の海外戦略」についてのグループ学習です。 円ダービー参加の6チームが、それぞれひとつずつ日本企業を選び、新聞や専門的文献、HP等でその沿革、現状、海外戦略について研究する(今年度、ケーススタディの対象として選んだ6企業が上記6社ということになります)。円ドルレートは、企業の海外戦略に影響を与える一要因であり、上述のように、円ダービー参加は、「日本企業の海外戦略」に関するグループ学習の予備的プログラムでもある。 円ダービーと同じく、6グループには、それぞれ2~3名の大学生チューターを付け、高校生の学習を支援する。大学生は、高校生をバックアップできるように企業研究を進めるため、このプログラムを自ら学ぶきっかけとすることできる(高校生を相手に恥はかけない!)。高校生・大学生の6グループはそれぞれゼミナール形式の勉強会を積み重ねたのち、8月末をめどに、研究対象とした企業の東京本社にインタビューに出向き、担当者から直接話を聞く。しっかりとした問題意識、事前学習に基づく企業訪問、インタビューは、これを直接の目的とするものではないにせよ、秋以降本格化する就職活動の準備とすることもできる(準備が不足し目的が不明確なインターンシップよりもはるかに効果的)。今回の企業訪問がこれです。 第3に、英語学習の推進です。「日本企業の海外戦略」という統一テーマにかこつけて、大学生・高校生とも英語学習を進めようという試みです。大学生はTOEIC、高校生は英検2級(ないし準2級)に向けた学習を進め、それぞれスコアアップ、合格を目指す。大学生、高校生ともグループ内で励まし合いながら、英語の勉強を続ける。これが第3の柱です。 コラボゼミ前半数回は円ダービーに関する勉強会でしたが、大学生の代表には、円ドルレートの予想理由を英語で発表してもらいました(TOEICのスコアに関しては、この間、19期ゼミ長S君が寿司屋接待ラインの730点を突破。同じくIさんが3年・4年キャッシュバックラインの640点を突破しました)。 以上が今年度コラボゼミの柱です。研究成果は、上述のとおり、附属高校2年生(文系クラス)、1年生有志、保護者、教員、学生、市教委関係者の前で、高校生が主体となって報告することになります。学生は報告までの資料作成や当日の運営を手伝います。 何度も書くように、高大連携とは、「受験生確保を目指す大学、推薦枠確保を目指す高校」といった、セコイことを目標とするコラボレーションではありません。高大コラボゼミにしても、日本の将来を担う若者たちに実践的な経験、学習の場を与え、ハートに火をつけること、小さくまとまりがちと言われる若者たちの目を見開かせることが大きな狙いです。「日本企業の海外戦略」というテーマに基づく研究も、なにも企業の論理に染まれ、と言っているわけではない。大企業に勤めろと言っているわけでもない。経済の現実を動かす主体について少しでも学び、経済の現実を少しでも知る。リアルな現場で日々苦闘している人たちの悩み、苦しみ、喜び、達成感などを知る。そのことを通じて、働くことの意味や生きがいなども体感してもらえればという思いがこちら側にはあります。 「経済に無関心で生きていくのは自由だが、経済と無関係に生きていくのは不可能である。」 私が講義の最初でよく言う言葉です。経済の現実を知らずに、どうやって日本の将来を担うのか。社会科学を主たるテーマとする教育機関なら、日本の将来を担う若者たちに、早くから経済の現実に触れさせることが必要なのではないか。未来を背負う若者に、教室で学ぶのとは違った学習の場を設けることによって、将来を見定める「きっかけ」を与えられるのではないか。上に述べたような内容を柱とする高大コラボゼミは、まさにこうした目的に沿ったプロジェクトになりうるのではないか。 高大コラボゼミは、来春の就職状況、進学状況にすぐさま結実するものではないでしょう。しかしながら、そもそも、そんなところに力点はないのです。結果として、そうしたところにつながらなくはないにしても、目指しているのは上で述べたような事柄なのです。日本の未来を担う若者たちのハートに火を付ける。衝撃を与える。目を見開かせる。「成果」というものがあるにしても、ずいぶん先の話です。 しかしながら、だからこそ、今回の6社も学生・高校生による訪問を受け入れてくれたのだと思います。この忙しいさなか、「就職」などという打算がもろに透けて見えるプロジェクトに誰が協力するでしょうか。そういうものはとりあえず横に置き、各社の海外戦略を研究する。中学生の「自由研究」レベルに付き合う余裕はどの企業にもないでしょうが、数ヶ月にわたる真剣な準備作業に基づく企業訪問だからこそ、そして、それがまさに将来の日本を担う人材の育成につながると考えていただいたからこそ、今回の企業訪問が実現したのだと思います。 とはいえ、前にも書きましたが、今回の企業訪問のアレンジは簡単ではありませんでした。実現までには、大変多くの方々にお世話になりました。いくら理念が立派でも、いろいろな方々のご協力がなければ、これだけの企業訪問は、けっして実現しなかったと思います。学部時代のゼミの後輩諸氏、高経大の卒業生の方々、矢野ゼミ卒業生、高崎市役所関係者等々、本当にたくさんの方々にお世話になりました。ありがとうございました。 各企業でお会いした方々は、学生・高校生の人生に何らかの刺激を与えてくれたはずです。インタビューを終え、東証に集まってきた彼ら・彼女らのどこか上気した表情。きらきらした目。興奮気味の口調。それらが物語っています。企業訪問のアレンジは楽ではありませんでしたが、やってよかったと思います。報告会の実施や報告書の作成等、まだ「まとめ」が残っていますが。 高崎に帰るため、当日夕刻、上野駅に集まった高校生・大学生。そこでAKB48のアキちゃん(て、誰だか私には分かりませんが)と握手したことだけが唯一の思い出、なんていう奴らがいたら、しばいたろと思います。

メッセージ
AKB48、アエラに登場【矢野】
(2010-09-01 19:41:00)

 AKB48と言われても、個々のメンバーは知らない子が圧倒的に多いのですが、今週のAERAに人気投票の上位30名インタビューなるものが載っていました。19期N君や高校生が「アキちゃん」って大騒ぎしていたのは、たぶん今年13位の高城亜樹という子ですね。おじさん、確認しました。