先日、芥川賞を受賞した黒田夏子さん。御年75歳で、芥川賞受賞者の中では最年長。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130116/art13011620280003-n1.htm
4歳のときから書き始め、筆歴は70年にもなるそうです。

黒田夏子さんのことを存じ上げなかったため、今回のこの関連ニュースをいくつか見てみたのですが、そこで添えられていた言葉には「努力を続ければ、必ず夢は実現する」というニュース記事を書いた記者の言葉が多くありました。


それを読んでいて私の頭をよぎったのは、KINGカズこと、サッカーの三浦知良さんのことです。三浦知良さんは現在45歳、現役最年長です。カズさんと日本のサッカーをご存知ない方のために、まず簡単に説明させて頂きます。


カズさんは15歳の頃にサッカーを学ぶために単身でブラジルに渡っています。その頃の日本はJリーグなどなく、テレビのサッカー中継などもありませんでした。今から30年以上前、スポーツ留学する子どもなど殆どいない時代に、15歳という年齢で言葉もわからない国へ一人で行くというのは、よほどの決意だったのだと思います。

その頃からカズさんが想い続けていたのは「いつか日の丸を背負ってワールドカップに出場する!」ということでした。Jリーグも誕生していない日本の代表チームがワールドカップに出るなどということは、夢のまた夢、宝くじにあたるくらいのレベルのことだったでしょう。

カズさんが日本に帰国し、その後1993年に日本ではJリーグが誕生。それまで野球ばかりだった日本でもサッカーが注目されるようになりました。でも、やはりレベル的にはワールドカップは夢の舞台。


それが、94年のアメリカワールドカップ予選で、日本はワールドカップへの出場権を掴みかけました。いわゆる「ドーハの悲劇」です。この試合に勝てばワールドカップに出場できるという試合です。夢のまた夢だったワールドカップへの出場が目の前に。

後半の45分も過ぎロスタイムに入った時点で、2対1で日本がリード。私もカウントダウンをする気持ちでテレビ画面にかじりついていた記憶があります。それがそのロスタイム中に相手国イラクの選手に同点ゴールを入れられてしまい、目の前まできていたワールドカップへの出場権を手にすることができなかったのです。ゴン中山さんやラモスさん、カズさんがピッチで泣き崩れている映像で記憶にある方もいらっしゃるかと思います。

これが、カズさんの「日の丸を背負ってワールドカップに出場する」という夢が目の前で消えてしまった一回目でした。


次の1998年のフランスワールドカップでは、日本のサッカーのレベルもあがってきて、岡野選手の最後のゴールで出場権をつかむことができました。日本のサッカー界にとって夢のワールドカップの舞台に立つことができることになったのです!もちろん、カズさんも代表に選ばれていました。これで子どもの頃からの夢だった「日の丸を背負ってワールドカップに出場する」ことが実現できるのです!

そして大会直前のスイス合宿。この合宿には、怪我人が出ることなども考慮され、実際にワールドカップに行ける選手の人数よりも数名多く選手が招集されていました。

合宿が終わり、当時の岡田監督からワールドカップに出場するメンバーの発表。記者に囲まれた岡田監督から出た言葉は「外れるのは・・・カズ、三浦カズ」という言葉でした。日本のサッカー界を長年に渡り引っ張ってきたカズさんがワールドカップを目の前にして外された。そして子どもの頃からのカズさんの夢が、目の前で消えた瞬間でした。

「これだけ日本のサッカー界に貢献してきた人なんだから、何故連れていってあげない」岡田監督に対してそう思った人も多いはずです。私もそうでした。でも、フランスワールドカップで勝つために、そのときの日本のサッカー界にはカズさん以外の他のメンバーが必要だったのでしょう。

カズさんはワールドカップを夢描いていただけでなく、文字通り血が滲む努力を何年にも渡り続けてきていました。それでも夢はかなわなかったのです。


-たったひとりのワールドカップ


たったひとりのワールドカップ」、この本にはそのときのカズさんの気持ちが、こう書かれています。「いままでプライドを持ってね、誇りを持って日本代表をやってきたんで、どんな気持ちというか、自分自身絶対納得しちゃいけないことでもあるしね。外れたことに対して。でもまた目標を新たに持って闘えばいいんだってことで気持ちを切り替えましたけど」

あれから15年経った今も、カズさんは現役選手です。体力が落ちてきた分、自分はトレーニングをしなくてはならないと、若い選手よりも早く練習のためピッチに入っているそうです。
カズさんのこと私は直接は存じ上げませんが、カズさんを知っている方たちから、彼は本当に人格者で人望も厚く、努力家で、前を向いて進んでいるという話をよく聞きます。それは、カズさんのインタビューなどからも見て取ることができます。


カズさんから私が学んだ1つめのこと。
世の中には「願えば叶う」「努力すれば叶う」という言葉もあるけれど、そうでないこともあるんだ。あんなにワールドカップに日の丸を背負って出たいと願い続けて、努力していたカズさんでも叶わなかったんだから。
でもたとえ願いが叶わなくても、そこを目指して努力を続ければ、何かほかのものを得られているかもしれないということです。

心から願っていたことが叶わなかったら、ともすると自暴自棄になりそうですが、カズさんのこのことがあってから、腐ってはいけないんだと思えるようになりました。自分では気づかない何かを得られているのかもしれないと思えるようにもなりました。


そしてカズさんから学んだ2つめのこと。
それはカズさんが言い続けてきた「日の丸を背負って」の部分です。「自分が」何かをしたい、自分だけの希望ということではなく、業界全体を考えること。
それはスポーツ界だけのことではありません。仕事というものだけでもないのかもしれません。

CSR(企業の社会的責任)という言葉がありますが、企業だけでなく社会人としての責任を考えています。自分のことだけを見るのではなく、社会の中に生きる一人として視野を広くもって考えて生きていく。自分に直接的に得があることでなくても、考えて行動する必要があるということです。

それは私にとっては、家の中で家事をする人たちのためにということですし、ネットの中で10数年活動してきましたので、ネットで情報を発信する人間としての振る舞いもそう。そして2011年の東日本大震災と原発事故以後、同じ日本に住む人間としてのするべきことなどを考えるのもそうです。


今日現在、三浦知良さんの公式ホームページのプロフィール欄には、目標は「ワールドカップ」と書かれています。これからまだまだ、カズさんに学ばせて頂けそうです!

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