以前、何度か出版社や編集プロダクションと仕事をしたことがあった。

地下鉄の護国寺にある、大手出版社の玄関をくぐったときは心踊った物だ。

そこにはステレオタイプ的な出版社のオフィスがステレオタイプ的なまま目の当たりに垣間見えて、

ドキドキワクワクしたものだった。


雑誌の編プロに出入りしたときは、これまた面白かったな。

一つは大きな枠組みで、投機の対象となったような会社。

一つは雑誌を買い取って独立したといった、独立系の雑誌社とでも言おうか。


いわゆる「業界の人」が絡むところだから、

社長さんや営業マンは何やら華やかな雰囲気の人たちで、

言い方を変えれば少しチャラい雰囲気があって、

でもそれがまた、雑誌の雰囲気通りで、

話しててもすごく楽しかった。


一方で、現場仕事の編集マンは、

オタク気質な雰囲気がして、

それでも仕事に真剣で、とにかくしんどそうで、

それもまた、クリエイティブ感が出てて、好感が持てた。


雑誌ってのは文芸の中でも、

いわばアイドルみたいなもんなんだろうと思う。

スペシャルで、気を引くビジュアルがあると思えば、

その雑誌の心を垣間見るような、編集の気持ちが篭ったコラムがあったり、

とにかく、琴線と趣味が合えば、

本当にのめり込む感じがする。


「中の人」と会えば、

あー、こんな人たちが作ってるんだな、って、

編集長や編集者の感性がそのまま反映されていて、

より一層、好きになる。


ラジオ番組とかもそうだけど、

元々狭いセグメントで勝負してて、

読者、視聴者、制作、みんなで世界観を共有してて、

オタク的なところが、魅力的なんだろうな。


文芸不遇の時代。

雑誌は特に苦しい時代。

でも、素敵なビジュアルと、文章。

想像力を掻き立てる宝箱。

そして何より、紙の質感。


雑誌文化よ、

どうかなくならないでくれ。


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騙し絵の牙 塩田武士

角川文庫




大絶賛です。

面白い。

テンポ、構成、完璧。


大泉洋を当て書きしたそうです。

文庫本でも各章の間に、

彼のピンナップが挿入されていて、

否が応でも、彼をイメージして読んでしまうのですが、

そうとも言い切れない、人物の掘り下げや意外性もあり、

あまり意識しないで、自分のイメージで

読んだ方がいいかな。


出版界の課題を軸に、

主人公目線でありながら、

様々な人物の思惑がストーリーを構成する、

群像劇的要素あり。


最後まで読んで、初めてタイトルの意味がわかる。

大どんでん返しとは言い切れないが、

伏線の回収も見事。


こんなに面白い小説、

久しぶりに出会った。

たまらん。


映画化ありきの企画だそうですが、

映画は見ないかな 笑

イメージ壊したくないから。


とにかく面白かった。

ありがとうございました。