父母の故郷に帰ってきたのだが、父の家は、弟が継いでおり、
母は、自分の父親の隠居小屋へ転がり込んだ。
そのうちに父が帰還してくるだろうと、甘く考えていたが、
紙切れ一枚になって帰還したのは、親子4人で、日本へ帰ってから、10年もたってからだ。
引き揚げ後の生活を支えるために、母は、洋裁を習うことにした。
和裁はできたが、これからは、洋裁の時代と、決心したのだ。
子供のいない生活が長かったので、洋裁も少し、習っていたが、それでは仕立て代が稼げない。
40歳近くなっていたが、高校卒の方に混ぜていただいて、勉強に励んだ。
私と兄は、親戚が近くにいるから、どうにか面倒見てくれるだろうと、おいていかれた。
お母ちゃん、お母ちゃんと、村はずれまで、おっていくのだが、追いつかない。
たまに、村はずれまで追いかけられたら、父方のおじいちやんの家に、子供たちを頼んで、母は出かけた。
そのころはまだ生きていた祖父が、乳母車に二人を乗せ、村の入り口まで、送ってくれた。
あんまり、お母ちゃんを困らすなよ、、。
父方の祖父のほうが母方の祖父より、長生きだったが、覚えているのは、そのことだけ、、。
二人がまだ、小学校へ入学する前のことで、どうしてあんなに、母を追いかけたのか???
この年になっても、あんなに、夢中で追いかけたことが不思議に思える。