「ロードス島攻防記」(塩野七生、新潮文庫) | ブックダイアリー(中年男おたく的読書日記)

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読書好きの私が、毎日の読書の進み具合や感想をブログにします。ただしおたく的読書なので、今の小説の話はほとんどありません。昔、世界文学全集や日本文学全集に親しんだ方、文庫本を読み漁った方は是非ご覧ください。

2、3日前から以前にも紹介した立花隆の「天皇と東大-大日本帝国の生と死」を読んでいます。

これは明治維新から第2次世界大戦以前までの歴史を、東京大学を始めとする大学の成り立ち、大学と政府や文部省との対立や大学側の敗北、数々の大学人の生き様を通して見直してみるという本です。


まだ上巻の半分ぐらいまでですが、なかなか良く調べてあり、かつ我々がこれまで知らなかったような事実も書かれていて興味深い本です。当時の人物の写真も掲載されており、それも文章を非常にリアルに感じさせてあきさせません。


まあ、歴史好きには必読の書でしょうか。

この時期の本としては私のおすすめは、何と言っても司馬遼太郎の「坂の上の雲」江藤淳の「海は甦える」ですが、これにこの「天皇と東大」を読むとおもしろいかもしれません。


ただし、上巻だけで780ページという分厚さなので、読了するのには少し時間がかかりそうです。



さて、今日は塩野七生の「ロードス島攻防記」を紹介します。



これは塩野七生の「コンスタンティノープルの陥落」に続くヨーロッパ中世物の2作目です。

「コンスタンティノープルの陥落」同様、この本にも様々な人物が登場しますが、主人公はヨーロッパの貴族の出身で、ロードス島を守るヨハネ騎士団の騎士であるアントニオ・デル・カレットオルシーニです。


そして騎士団長リレダン、その秘書官バレッテ城壁建築技師のマルティネンゴ、対するトルコ側はスレイマン1世などが登場します。


この本は、エーゲ海に浮かぶ「薔薇の花咲くいにしえの島」ロードス島を舞台に、ヨハネ騎士団とトルコ軍との5ヶ月に及ぶ攻防戦を描いています。


トルコ軍は総勢10万の大軍、それに対してロードス島を守る戦力は、ヨハネ騎士団の騎士約600人、用兵1500人、ロードス島住民3000人という少なさです。この兵力で実に5ヶ月も持ちこたえるのですが、それは城壁建築技師のマルティネンゴらの働きで、ロードス島中心をめぐる城壁を3重にも囲ったその卓越した技術力にありました。


しかし兵力の寡少はいかんともしがたく、5ヵ月後には開城します。開城に際して行われる略奪や惨殺は、スレイマンの命令によってこのときばかりは行われず、また住民や騎士の島からの避難も極めて安全に行われます。


こうしてオスマン・トルコ帝国のトゲとして、ヨーロッパキリスト教社会の象徴的な存在であったロードス島はトルコ領となってしまうのです。


この本にはやはり最後にエピローグがついており、登場人物たちのその後が描かれています。

騎士団はロードス島を離れてから放浪の末、マルタ島に移りマルタ騎士団となり、騎士団長のリレダンもマルタに移ります。城壁技師のマツティネンゴはスペインやイタリアで城壁や築城の技師として数々の建築を手がけます。


騎士のオルシーニはこの戦いで戦死、そしてアントニオはこの戦いで右足を負傷したこともあり、騎士の身分を捨て僧籍に入り、イスラムの海賊にとらわれた人々を助け出す仕事をすることになります。


この本は塩野七生のものとしては、比較的短くまた物語的でとても読みやすい本です。塩野七生の良さはこのような物語性にあって、現在の「ローマ人の物語」になると、かなり解説的・論文的で、おもしろさというのには少し欠けているようにも思います。


そしてやはり読後には、なんとも言えない「哀しさ」がただよっています。


次回は、続けて「レパントの海戦」を紹介します。