島田荘司
ロシア幽霊軍艦事件
また島田荘司か。よっぽど好きなんだねえ。と呆れられそうだが・・・・へえ、好っきゃねん。
ロシア革命で滅ぼされたロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世。その4女アナスタシアが処刑を免れて生き延びたという説がある。「私がそのアナスタシアです」と名乗り出た女が何人もいる中で「本物かも」と有力視され、映画などにもなったアナ・アンダーソン。
彼女がアナスタシアか否かをめぐって世界中でカンカンガクガクの論争があった(今もある)のは事実らしい。嘘っぽいけど彼女は本物だった、という立場で書かれた(島田荘司にしては珍しい)歴史ミステリーだ。
読み終えても「やっぱり偽物だろう」という疑念は拭いきれない。が、さすがは島田荘司。箱根・富士屋ホテルに残っていた(という話にしてある)1枚の写真から、とんでもないミステリーを展開する。
その写真には雷雨の夜、芦ノ湖の桟橋に到着した1隻の軍艦が写っている。山の上の湖に、どうすれば軍艦がやって来れるのか? 主要な謎は途中でアッサリ解かれるので、最後の最後でどんでん返しに遭うという本格推理の醍醐味は味わえないが、その不思議がなぜ実現しえたかという説明が実に丁寧なので「あ、それはアリかも」と思ってしまう。
この作家は、主人公の御手洗と同じように“学者肌”のところがありますね。研究熱心だ。いやあ、十分に面白かった(しかしワシゃ今、こんな物語に興じていていいんだろうか)。講談社ノベルス、820円+税。
