小栗結一
掃苔しましょう
掃苔は「そうたい」。苔(こけ)を掃(はら)う、すなわち墓を掃除する。転じて「墓参り」を意味します。今では、信心とは関係ない観光気分の「お墓めぐり」の意味で用いてもバチは当たらないらしい。
著者は、出版社に長く勤めた“掃苔オタク”。いるんだなあ、こういう人が。第1章「谷中寺町を散策する」、第2章「谷中霊園を歩く」・・・・地元住民としては、読まないわけにもいきますまいて。
<瑞輪寺を出たら、銭湯ギャラリーの信号まで戻って左に曲がる。ちょっと歩いた左側、多宝院の門を入ってすぐ、本堂手前にある案内標に従って進むと、詩人・立原道造の墓がある>
えっ、あんな所に道造はんが? てな発見が随所にある。谷中に住んで9年、ワシもまだまだ未熟じゃわい、と反省させられた。染井霊園、雑司ヶ谷、青山、伝通院周辺なども実によく歩き回っている。
欲を言えば(新書では書ききれないのだろうが)、あまりに網羅的なので個々の“仏様”に対する著者の思い入れの深浅が伝わってこない。「この墓の姿はいい! 故人の生き方が、粗末な石材と下手な文字によく表れている」といった評価を読みたい気がする。(集英社新書、720円+税)
