天野慶

ウタノタネ


 あれ? 難しい本を8冊だか続けて読まなきゃならないんじゃないの? って、そう咎めないで下さい。人間、息抜きが大切だ(抜いてばかりでも困るが)。


 またも、買った本ではなく著者から送られてきた本です。そういう本を全部紹介していたら「谷中庵読書録」なんかは一年中、それに終始するしかない。世の書評ブロガーたちは、その辺をどう処理しているもんだろうか。送られてきても取り上げるほどの内容でないなら無視すればいいわけだが、ワシの場合は取り上げるに値する内容の本が多いから困るんだ。


 この本の著者は<ケータイ短歌>で現代歌壇をリードしつつある人(1979年生まれ、♀)。高校時代に詠んだ<日溜りに置けばたちまち音立てて花咲くような手紙が欲しい>が今のところ代表作とされているようだが、この歌は確かにスバラシイ。視覚的な前景(5・7・5・7)を潜り抜けて最後に「手紙」が現れる瞬間が爽快だ。


 <通過した駅のホームにあのひとを見たような気がしたままにした>も、秀逸だと思う。一読してアレ? と思うが5・7・5・7・7というリズムが、この歌の身上。<気がした>と続けて読んじゃいけないのですね。<気が>でひとまず切って<したままにした>という7音を一まとめにすることで<見たような気がしたけれど、見なかったことにした(せざるをえなかった)>という複雑な心がスッと立ち現れる。


 ファンは、その辺のJK(女子高生)たちだ。ケータイでピコピコピコピコ、出来立ての歌をイラスト付きで投稿している(らしい)。人気と注目を集めている歌人とはいえ、20代で「短歌入門」を書くのはまだ早い!(ソフトバンクの父犬に言わせりゃ「ワンワンワンワン!」)


 が、この人はやっぱり歌壇の次代を担うと思うよ。万葉集から始まって与謝野晶子、山崎方代、穂村弘に至る先人の作品を読む目に非凡なものがある。極言すれば、短歌という文学の形式に潜む「遊び」の本質に、この若い母親は気づいている。畏るべし。(ポプラ社、1500円+税)