山の郵便配達
並行して読んでいる2冊を追い越して、短時間で読み終えた。最近、文庫になった書名は「映画のタイトルでなら知ってる」という人の方が多そうだ(谷中庵主人はまだ映画を見てない)。
1953年生まれ(おや、ワシと同年だ)の作家ポン・ヂエンミン(と読むそうだ)が30歳で書いたのが表題作。他に90年代の短編5作を収めているが、やはり「山の郵便配達」が最も印象深い。そもそも、書かれてから20年近くたって映画化されて評判になり、それが岩波ホールでも上映されることになったので急に日本語で単行本が翻訳・出版されたという経緯があるらしい。
中国・湖南省の山岳地帯で何十年も、100キロの山道を3日がかりで歩き続けてきた郵便配達が老いて引退せざるを得なくなり、相棒の犬と跡継ぎの息子を連れて最後の配達に出る話だ。自然と人間、父と子、苦と楽、あるいはヒトと犬・・・いろ~んな普遍的で重いテーマが30数ページに圧縮されていて、熱中させられた。
94年~97年に書かれた他の5編も、それぞれになんともいえない味わいがある。けっこう現世的というか下世話な事件も登場して、ワシなどには他人事として読み流せない部分も多いのだが、どんな問題を扱った作品にも著者の“品性”が感じられる。次々と大変な事態を経験してきた大国の作家ならではの「度量」だろう。
北京五輪まで1年足らず。今のうちに一読をお薦めしますぜ、ポン・ヂエンミン。
