幸田 露伴
五重塔

 夏休みにはこういう名作も読まないとね、谷中に住んでいる義理もあるし。


 江戸時代、再建されることになった谷中・感應寺の五重塔に死に物狂いで取り組む宮大工「のっそり十兵衛」の姿を描いた露伴の代表作。2~3年前に読んだら、若いころと違ってスラスラ読めるので「年は取ってみるもんだ」と感心したものだが、年を取るということは2~3年前に読んだ本の内容を忘れてしまうということでもある。


 十兵衛の職人魂に打たれ、完成した五重塔が未曾有の大暴風雨に耐える場面の迫力に圧倒されたのを覚えているが、どこがどう凄かったのかは定かでない。それで読み直したのだが、ますますスラスラ読めるし、どこに感動したのかをも思い出した(当たり前か。読んでも思い出せなかったら大変だ)。


 谷中のランドマークだった五重塔が、馬鹿カップルの放火心中で焼失してから来年で50年。礎石しか残っていない跡地に、塔を再建しようという機運が地元で盛り上がっている。10億円とかいう建設費がネックになっているらしいが、六本木ヒルズみたいな醜悪な建物に比べたら安いもんだろう。国民が1人10円寄付すれば、再建が実現してお釣りがくる。


 写真で見る往時の五重塔は実に美しい。仏像を思わせる。再建してほしいなあ。