これは、元禄三年（1690）に加賀藩五代藩主・前田綱紀が定め、本多家（5万石）・長家（3万3000石）・横山家（3万石）・前田対馬守家（1万8000石）・奥村宗家（1万7000石）・村井家（1万6569）・奥村支家（1万2000石）・前田土佐守家（1万1000石）があった。
加賀八家・長家の屋敷跡。
現在は公園として整備されている。
加賀八家のうち長家は、屋敷跡の由緒書きによると、鎌倉時代初期に能登国鳳至郡大屋荘に地頭として入部した長谷部信連の子孫である。
後に、能登国守護畠山家の重臣となったが、七尾城の攻防で一族の多くが謀殺され、長連龍のみが生き残り、織田勢の先鋒となって能登に入った。その功績により、織田信長から鹿島半郡を与えられ、能登国を与えられた前田利家の与力大名としてその指揮下に入り、後に臣従した。
すなわち、長家はもともと能登畠山家の重臣であり、戦国の荒波の中で一旦は滅亡の危機を迎えたものの、加賀藩前田家に仕えてその重臣となり、大名級の石高を有するに至ったのである。
【長家略系図】
長連龍ー好連ー連頼ー尚連ー高連ー善連ー連起ー連愛ー連弘ー連恭ー成連
長家は、藩政時代は連龍から成連まで11代を数え、禄高は代々3万3000石を世襲した。
なお、長家出身の人物としては、先に紹介した長連龍の他、その娘で加賀藩三代藩主・前田利常の側室となり、大聖寺藩二代藩主・前田利明の生母となった南嶺院、同じく長連龍の娘で加賀藩二代藩主・前田利長の養女として加賀八家・前田直知室となった久香院、幕末に黒羽織党の党首となった長連弘などがいる。
屋敷は当初本拠地である能登田鶴浜と金沢城内の2箇所にあったが、金沢屋敷は慶長十七年（1612）に長町の現在地に移転して明治に至り、約1万坪の広さを有した。
明治二年（1869）に版籍奉還が行われると、屋敷は金沢藩庁となり、明治四年（1871）の廃藩置県後には金沢県庁となった。翌年に県庁が石川郡美川町に移転した後は、金沢区会所・小学校・真宗学問所・前田家の別邸と移り変わったが、明治十五年（1882）に焼失した。
その後、明治二十二年（1889）から明治四十一年（1908）まで長町高等小学校となり、大正二年（1913）から昭和五十三年（1978）まで日本専売公社金沢地方局のたばこ製造工場を経て、昭和五十四年（1979）に玉川公園として整備され、現在に至っている。