九州・宮崎に「天孫降臨」の聖地、高千穂神社があります。

 

ご本殿のお社(やしろ)には、鬼(「鬼八(きはち)」と呼ばれる)を踏みつけ懲らしめる神さまが、彫刻されています。

 

まさに、そのご神像のいでたちこそは「鍾馗さま」そのものであると思います。

 

伊勢大神楽、江戸太神楽にも伝承されていない演目、それが水戸大神楽独特の「鍾馗舞」を中心とした「鬼神祓(きじんばらい)」であるのです。

 

伊勢大神楽には「猿田彦の舞」が伝承されており、わたしが十五代家元を承継した房州鴨川・伊勢派の名門・舘三太夫(たて・さんだゆう)家では、古風な「猿田彦神」の神面(おもて 江戸期)が伝わり、御獅子頭、鈿女(うずめ)・火男(ひよっとこ)とともに、譲り受けて奉祀しております。生前、十四代目のお師匠さんから、「大神楽の世界で水戸は別格であり、鍾馗舞は水戸独特の舞」である旨、お聞きしています。

 

水戸大神楽十九代家元・柳貴家雪之介、わたしの終生の側近弟子・正佐には、「鍾馗舞」の伝授、そしてその修得は必須であります。

 

舞の型、歩行法、鬼との格闘場面、いろいろありますが、基本、神事祈祷舞の伝承に専念して修得に励んでほしいと思います。