こんにちは。夢分析の心理カウンセラーやなぎです。
本当は、今回の記事でユングが見た夢について書こうとしていたのですが、ふと思い出された本があったので、それについて書こうと思います。
その本とは『Vishnu on Freud's desk』という本です。内容的には、いくつかの論文からなる論文集です。
そして、インドにおいて精神分析学を紹介して、インドの精神分析学の父と呼ばれている（らしい）ギリンドラシェカール・ボースという人の話や、精神分析学をインドで用いた際の特殊性や文化的背景などが書かれています。
以前にこの本を読んだ時には、インドという土地の文化的特徴などに目が行ったのですが、このブログで書こうと思っているのはそのことではありません。
インドにおける精神分析学の父とされるギリンドラシェカール・ボース(Girindrasekhar Bose)という人が感じたかもしれないことについてです。
この方はフロイトの精神分析学を学んだのですが、フロイトの７５歳の誕生日にプレゼントとして象牙製のヴィシュヌ（インドのヒンドゥー教における主神の一柱）の像を送ります。
この像はずっとフロイトの仕事机の上に置かれていたそうです。
そして、それは今ではロンドンのフロイト・ミュージアムに保管されているようです・・・
と書くとある種ほほえましい話のように思えます。
しかし、見方がうがちすぎかもしれませんが、ボースのプレゼントにはもっと深い意味があり、そこにはかなり意図のようなものが込められていたのではないかと思えます。
少し細かい話になりますが、フロイトの精神分析学において背景となっている考え方は、ユダヤ・キリスト教や、ギリシア以降の西洋文明がその基礎となっています。
ただ、精神分析学における普遍的な妥当性のようなものを主張するのであれば、基礎としてそれらのものだけに限局してしまっては、普遍性に疑問が出てきても当然です。
それを補うためには、ユダヤ・キリスト教や西洋文明以外のものからも精神分析学の普遍性を支持するものを援用してみてはどうか、という意味を込めてボースはその像を送ったように思われるのです。
ボースにとって、それは善意から発したものであったように思われますし、精神分析学の普遍的妥当性を説くものですから、精神分析学全体の発展に資するため、と思っていたように感じられます。
しかし、ご存知の方はご存知でしょうが、フロイトという人はかなり頑固だった人です。
また、ボースも自分の考えをゴリ押しするつもりもなかったようなので、結局ボースが像のプレゼントに込めた（かもしれない）思いや考えは届くことはなかったようです。
とはいえ、フロイトとボースの間でのやり取りについて見てみると、ボースはゴリ押しはしなかったものの、自身の考えや思いにはかなりの期待をかけていたように思われます。
そのため、結局頑固なフロイトに受け入れられることとはならなかったボースの考えや思いは、深い失望へと変わっていったように感じられます。
こういった経緯は少し切ないものがあります。
特に、ボースの提案が善意から発したものであり、精神分析学全体の発展を意図した純粋なものであったように思われるだけに、尚更です。
これと同じように、期待をかけた分だけ失望を感じるということは、日常の中でもよくあるはなしです。
とはいえ、そういった失望感を自ら癒すということは大事なことです。
あなたは、期待、そしてそれに伴う失望感に向き合えているでしょうか？
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