夜話 1928 八女の「五十年来の珍事』その四
阿蘭陀船 陸に上がる
文政十一年八月九日夜九つ時分より北東の風起こり、次第に激しくなった。○○の方に回りことのほかの大風になった。
風の直撃を受けて家々がみな吹き倒された。
大木も吹き倒された。
小さい町屋の人は隣の大きな家家に飛び込み難を逃れた。
久留米藩内では高良山の七合あたりまでの杉の木がことごとく吹き倒された。
長崎湾内の阿蘭陀船が稲佐山の畑にの上に吹き上げられたという。
海に引き下ろす手段がなかった。
近国の者どもはこれを海に戻して 大金を得ようとして船の周りの畑地を掘り下げ 水をたたえて浮樽を船の周りにつけて 海側から曳舟で引っ張った。
そろりそろりと阿蘭陀船は動き 無事に海にもどったという。
阿蘭陀もその大手柄を大変喜んだという。
同月二十四日またまた大風が吹いたが今度は格別のことはなく無事におさまった。