夜話1927 一遍上人と友近由紀子 | 善知鳥吉左の八女夜話

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夜話 1927 一遍上人と友近由紀子 


年のせいかこのごろ「空也」から「一遍」の南無阿弥陀仏の世界を覗いてゐる。


                           


                       

最近『死してなお踊れ一遍上人』という快著にめぐりあった。著者は栗原康。はじめて接した作者。

履歴を見るとアナキストらしい。「大杉栄」や「伊藤野枝」伝がある。

そんなことよりも ほとばしるように流れる文にとりつかれ読みふけった。


ちかごろ左眼に疲れがのこる。

十時には読書をやめることにしている。しかしTVは十二時までチャンネルをひねる。と途端に驚いた。

いきなり松山の道後温泉本館が出てきた。

「一遍上人伝」中の道後温泉のくだりを読み終えて本を閉じたばかり。

瀬戸内の河野水軍の流れをくむ一遍上人は道後の宝厳寺生まれとか。

TVは「ファミリーヒストリー」。

タレントの友近由紀子の祖父母からの一族の家系を尋ねるものだった。

しかし一遍・道後温泉・友近と一瞬の間に結びつく縁には驚いた。

それに友近の祖父は戦中満洲で死亡とか。

満洲育ちのこの老人。懐かしい地名に思いが馳せた。瓦房店・大連・葫蘆島などなど。

そして一遍の足跡が残る道後温泉。

上人が温泉療法に通じていたのは松山道後の宝厳寺生まれだったからとか。

いま この寺は焼失して無い。

しかし友近の祖母は漱石とも縁のある『道後温泉本館』で働いていた評判の美人だったとか。

読書とTVが一瞬にしてむすびつくところ。


ウーン これも年のせいかな。

しかも南無の札を配り 踊る 一遍の姿がなつかしい。

おかげで友近由紀子のファンにもなった。

                                               
 



そういえばその昔 山頭火が八女で詠んだ「うしろ姿のしぐれてれていくか」の句碑建立のとき 生筆跡を求めて松山の『子規記念館』を訪れたが 帰りの便の時刻が気になり念願のあの『本館』の湯を楽しむことをあきらめた。

あのころ一遍のこと知っていればなァ。  

☜(一遍の臨終図)


お薦めする。

栗原康著『死して なお踊れ 一遍上人伝』装丁前田晃伸

                               (河出書房新社刊)を。