夜話  531  画家「 秋山朗異」 4 | 善知鳥吉左の八女夜話

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夜話 531  画家 「秋山朗異」
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四号。柿二つ。

なにかのために,売るために、入選する

ために、飾るために、贈るために、そして恩師坂本に褒められるためになど「ために」描いた『柿』ではない。

荒々しいマチエールに朗異のそのまんまの魂がある。


右の空間に刻んだナイフの跡に朗異の苦しい行を善知鳥は見る。

ここに自らの絵と格闘した朗異の『柿』がある。

坂本の言う『調子』をみずからの苦行として貫いた朗異の真の姿がこの四号に込められている。

善知鳥は初めてこの『柿』を観た。

上下にナイフで押しつけたブルーが見るものの心を打つ。

いつものようにサインはない。    

朗異の同志はサインのもつ責任に慎重だった。

朗異はこの『柿』にさらに時間をかけようとしたに違いない。

未完の絵のもつ重量を善知鳥はまた考えさせられている。

重いのである。

朗異さん。いいものを残してくれた。

善知鳥は未完を勉強させてもらった。

お互い死んでも未完を貫こう。

果てしない苦行こそわれら絵描きの永遠の課題。なあ朗異さん。敬称略