フキハラという言葉がネット上で使われるようになってきた。不機嫌ハラスメントの略であり、家庭や職場で起きるハラスメントのひとつである。家庭においては、主に父親や夫がこの不機嫌ハラスメントで、子どもや妻を苦しめている。勿論、父親だけでなくて母親が子どもに対してフキハラをするケースだってある。職場では主に上司が部下に不機嫌ハラスメントをすることが多い。逆に部下が上司に対してフキハラをするケースだってあるが、その影響は周りの同僚に及ぼし、職場の雰囲気が悪化する。

 

 不機嫌ハラスメントが存在することは、イスキアの活動をしていて数年前から気付いていた。ようやく、社会での認知が進んできたかと、喜んでいる。この不機嫌ハラスメントは、暴言や暴力を奮うようなハラスメントよりは、影響は少ないだろうと思っている人が殆どである。➀無視、➁舌打ち、➂ため息、➃無言、⑤嫌な顔、⑥必要以上の音立て等によるフキハラは、執拗に繰り返し行われることで、ボディーブローのように心身を痛めつける。特にフキハラをしている当人が無意識で実施しているから、気付かないので始末に悪い。

 

 不機嫌ハラスメントを受ける側は、自分が不機嫌にさせるようなことをしたせいだと、自分を責めてしまう事が多い。平気で受け流せるならいいが、相手が地位や評価が高い人物であればあるほど、自分が悪いからだと思ってしまう傾向にある。包容力がなくてちっぽけな心の持ち主なんだなあと、蔑んだり可哀そうだと思ったり出来るならいいが、そんな風に思えないのである。ましてや、家庭においての妻が夫から受けるフキハラは深刻である。外面が良くて地位・学歴・収入の高い夫である場合、悪いのは自分だと思いがちになる。

 

 夫が暴言を繰り返したり酷い暴力を奮ったりするケースでは、割り切って離婚する決意が出来る。ところが、この不機嫌ハラスメントは他人には解りにくいし、そんなことぐらいでどうするのよと逆にたしなめられることも少なくない。実家の両親に話しても、あなたが不機嫌にさせるようなことをさせるからなんだから、気を付けなさいと叱られる始末である。かくして、誰にも言えずもんもんとした日常を送ることになる。そして、フキハラの影響で不定愁訴症候群になったり、原因不明の痛みを抱えたりすることになってしまう。

 

 中にはフキハラが執拗に何年にも渡り繰り返されることで、うつ病などの深刻な気分障害に追い込まれるケースもある。セクハラやモラハラに付随してフキハラが起きるので、妻のダメージは非常に大きい。パニック障害や複雑性PTSDになってしまう例もみられる。特に、経済的な自立が出来ていなくて夫の収入に殆ど依存せざるを得ない家庭では、妻は闘うことも逃げることも出来ず、八方塞がりの状況に追い込まれてメンタル疾患、免疫異常の疾患、線維筋痛症などの原意不明の痛みに苦しむことが多い。

 

 さて、そんな不機嫌ハラスメントを乗り越えるにはどうしたら良いであろうか。まずはフキハラをする人物にすべての非があり、自分にはその責任はないのだと認識することだ。不満や不備があるのなら、面と向かって言葉で伝えるべきであり、その方法を取れない人物が悪いのだと認識して良い。それを言葉として発せられない人に非があり、自分にはその責任がまったくないのだと思うことだ。二つ目は、可能ならその環境から逃げることである。職場移動を願い出ることも一つの方法であり、それも無理ならば離職するしかない。家庭では、別居か離婚しかない。

 

 さて、何故に不機嫌ハラスメントをするのだろうか、心理学的に検証してみたい。そもそも、フキハラを行う人物は自己肯定感や自尊心が育っていないのである。面と向かって言葉で間違いを正したり、注意をしたりする勇気がないのだ。だから、態度や表情で自分は不満であると暗に伝えようと無意識で行うのだ。そして、注意したり指導したりして、反発を受けるとか反論されたりするのが怖いのである。そもそも、こういうフキハラをする人物は、親からもそのように育てられて、愛情不足なのだ。いわば不安型愛着スタイルだから、不機嫌ハラスメントをして、相手をコントロールしようとする卑劣な輩なのだ。可哀そうだと蔑むしかない。