世の中では、インターネット上でフェイクニュースや巧妙な詐欺サイトが横行している。リアルの世界においても結婚詐欺や投資詐欺は、より巧妙になっている。最近は、AIを利用した投資詐欺がSNSを舞台にして実行されていて、被害者が激増しているらしい。これだけマスコミやネット上で、詐欺のことが騒がれているのにも関わらず、詐欺被害者が一向に減らずに増えているとはいうのはどういうことであろうか。騙されない為には、いつも批判的に物事を見なくてはならないと言われている。本当にそうだろうか。

 

 それとは真逆の主張をしている著名な人物がいる。物事を客観的に、そして批判的に見てしまうと、騙されてしまう。物事を主観的に、共感的に眺めると、嘘だということが解り騙されない。このような提言をした人物とは、経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏である。彼の元には、儲け話を持って大勢の人たちがやってきたらしい。投資話や新規事業の提案、または新製品の売り込みなど、いかにも多額の利益を生み出しそうな美味しい話を持ち込んだと言う。しかし、松下幸之助氏は一度も騙されなかったというのである。

 

 一代で松下電器産業という巨大企業を作り上げた松下幸之助氏の元には、多くの人々がいろんな儲け話を持ち込んでは、巧妙に脚色してリスクが少なくリターンが大きいと説明したらしい。その際に、松下幸之助氏は冷たい態度で来客に接したことはなかったらしい。いつも温かく優しい態度で、共感的に傾聴したという。けっして胡散臭い目で来客に接しなかった。そして、先入観を持って話を聞かずに、まっさらな気持ちで、相手の話に耳を傾けたというのである。だから、相手の嘘を見破ることが出来たという。

 

 相手は自分を騙そうとしているのではないかと、猜疑心を持って話を聞き、客観的に、そして批判的に分析的に相手の話を聞いてしまうと、逆に騙されてしまうのだと松下氏は警鐘を鳴らしている。松下氏は、主観的にそして共感的に相手の話を聞いた。相手の身になって真剣に話を聞いたのである。まるで自分のことのように、相手の気持ちを自分の気持ちに重ね合わせて共感して話を聞くと、辻褄が合わないぞとか変だぞという点が見えてくるという。だから生涯一度も騙されなかったというのである。

 

 すべてに対して、批判的に見てはならないということを言うつもりはない。時には批判的に客観的に論理的に分析的に見なくてはならないケースもあろう。主観的にも客観的にも、そして批判的にも共感的にもバランスよく見なくはならないということである。あまりにも批判的に見てしまうと、騙されやすいのだということを認識すべきだということを松下幸之助氏は伝えたかったのであろう。これは、日本人の男性、または男性脳を持った女性にとっては難しいことである。何故なら、客観的合理性の学校教育を受けたからである。

 

 明治維新後に大久保利通を中心にした元勲たちは、欧米の教育制度を真似た近代教育を取り入れた。この近代教育は、論理的思考を子どもたちに教え込み、客観的合理性をあまりにも重視した教育をしたことにより、主観的にものごとを見て共感的に人の心を読むことを一切排除したのである。このことにより、ものごとだけでなく人をも批判的に見るような人間に教育してしまったのである。日本人の多くは、人の話を客観的に批判的にしか聞けなくなり、真実を見抜けなくなってしまったのだ。だから、簡単に詐欺に騙されるようになり、陰謀論にも騙されることになったのである。

 

 陰謀論に取り込まれたり、オカルト宗教に洗脳されたりするのは、ものごとを批判的に見ずに盲信するからではない。あまりにも批判的に客観的に見るから、騙されるのである。騙そうとする人は、批判的に見ている人ほど騙しやすいことを知っている。特殊詐欺を計画するような人間は、批判的にものごとを見るような人ほど仲間に引き込みやすいことを解っているのである。相手の気持ちになって共感的に話を聞けば、自分のことを騙そうとしているんだなと、必ず気付く筈である。ネットで流行る陰謀論だって、フェイク情報を流している人の気持ちに共感しようとすればするほど、違和感を覚えるに違いないのである。

 前回のブログでアルツハイマー型認知症を防ぐ方法を書き記した。今回は、もう少し詳しく具体的にアルツハイマー型認知症にならない生き方を示してみたい。以後は略して単なる認知症と記載する。さて、認知症にならない為には適度な運動と身体と脳を適切に使うことが必要だと説いたが、もう少し詳しく説明する。運動と言っても辛くて苦しい運動や激し過ぎる運動は、ストレスがかかり過ぎるので効果がないと言われている。どんな運動がいいかというと、歩くのがよい。ただ平坦な道よりも、坂道や階段がある所が最適だ。

 

 何故坂道や階段が良いかと言うと、足の骨にショックを与えるからだ。骨にショックや負荷を加えると、破骨細胞が減り骨芽細胞を増やすし、脳の細胞も活性化する。特に、歩くことで筋肉に負荷がかかると、脳の海馬や前頭前野が活性化する。特に自然の素晴らしい景色を眺めながら歩くと、ストレスが解消されてカテコールアミンが減少して、偏桃体が縮小する。だから、自然が豊かなところをハイキングやトレッキングで楽しむことが認知症予防になる。気のおけない仲間と歩きながらおしゃべりしたり、ランチをしたりするのも良い。

 

 スポーツも良いが、すべてのスポーツが良いとは限らない。高齢者が毎日走っているのを見ることがある。マラソンに挑戦したりトレランをしたり姿も見ることがある。しかし、身体に負荷をかけ過ぎてしまうと、活性酸素フリーラジカルを大量に発生させてしまい、悪性腫瘍、心筋梗塞、脳梗塞を発症しやすくさせてしまう。また対戦型のスポーツは必要以上にストレスやプレッシャーを感じさせてしまい、逆効果を生む。ゴルフも良いが、勝負にこだわったり金品を賭けたりするのは、認知症を発生させてしまう。

 

 脳を働かせるというのは、意識しないと難しい。高齢者は、ともすると自宅に籠ってテレビを見たり映画鑑賞を楽しんだりすることが日課になってしまう。この一方的な受動的体験は、あまり薦められない。双方向の体験をしないと、脳の機能を働かせられない。出来得るなら、料理をすることがお薦めである。インスタント食品や冷凍食品に頼らず、食材を調達することから始めてほしい。面倒なメニューや初めての料理に挑戦することは、極めて高い効果がある。そして、料理を作ったら誰かに食べてもらい、誉めてもらうとなお良い。

 

 趣味や芸術に勤しむのも良い。難しければ難しいほど、脳を活性化させる。パソコンやスマホを使ってSNSやブログ発信もいいだろうし、ウェブサイトを起ち上げてみるのも認知症予防に効果がある。この趣味や芸術、またはインターネットの世界において、友だちを作って交流するのは、認知症を防ぐ効果が大きい。何故かと言うと、人というのは誰かと交流して繋がって関係性を持つことで脳が活性化して、本来の自己組織化が起きるのである。誰とも繋がらず孤立してしまうと、自己組織化が起きずに人体は自己崩壊するのだ。

 

 何よりも大切なのは、人間としての正しい生き方である。正しく高い価値観に基づいた生き方をしないと、人間と言うのはその存在価値を無くしてしまい、自己崩壊をする。人間が人間として、正しく清らかに美しく生きることが求められている。正しく清らかに美しくというのは、具体的にどういうことかというと、無償の愛を周りの人々に注いで、出会う人々に幸せを感じてもらうという生き方である。何も求めず、損得や利害を超えて、人々に奉仕する生き方である。奉仕というと、自己犠牲を伴った苦しく無理した行動だと思われがちだが、けっしてそうではなく心から深い喜びを感じる行動である。

 

 何故、そんな無償の奉仕が出来るのかと言うと、神とか宇宙の意志に沿った行動だからである。神の哲学である『形而上学』に基づくものだからこそ、人間は全体最適のための行動が出来るのである。自分の損得や利害を優先した個別最適や個人最適のための行動は、人間を破綻させる。そんな行動をし続けると、誰からも信頼されず孤立するし、組織崩壊や家族崩壊を起こす。経済的な破綻も起こすことになる。神の意思を尊重して、関係性を尊重して全体最適の行動を取り続けるなら、認知症にはけっしてならないのである。

 65歳以上の5人に1人が認知症になる時代だと言われている。その認知症のうち、一番多いのがアルツハイマー型認知症であり、60%以上の割合を占めていて、認知症としての重症度も高いので、深刻な症状を抱えることになる。そして、一度認知症の症状が始まってしまうと、それを止めることは不可能で、どんどん症状が悪化することになる。一度認知症になると治癒することは100%ない。最新の医学技術を駆使しても、認知症の進行を抑えることが出来たとしても、症状を改善することは出来ないのである。

 

 認知症の原因は、アミロイドβというたんぱく質が繋がって脳の記憶機能に悪影響を与えるためだと言われている。このアミロイドβの発生を抑制したり繋がりを防げたりすることが出来たら、認知症の発症を防ぐことができるのではないかと、医薬品業界は必死になり研究開発を続けている。レカネマブという認知症の症状が進むのを抑制する新薬が出来たと話題になっている。しかし、高価で副作用もあることから、認知症の患者の誰にでも処方出来る訳でもないし、約3割の進行抑制効果しかない。まだまだ課題は大きい。

 

 このアルツハイマー型認知症の発症を予防することが出来たなら、高齢者にとっては朗報となろうし、医療費や介護費用の大幅削減も可能となる。国の福祉財政にも多大な貢献が出来よう。アルツハイマー型認知症の発症を、完全に防ぐことなんて出来るのであろうか。その答えは、NOである。最近の医学的研究で分かったのであるが、特定の遺伝子異常があって、アミロイドβの異常を促す遺伝子を持つ人は、アルツハイマー型認知症の発症を高い頻度で発症してしまうらしい。つまり、遺伝的なものもあるから予防が難しいのである。

 

 とは言いながら、最近の医学的な研究と統計調査によって、生活習慣、気質や考え方、生き方によって、かなりの確率で認知症が防げるということが明らかになったのである。つまり、100%ではないにしてもアルツハイマー型認知症は予防出来るのである。どういう気質や考え方の人が認知症になりやすいかというと、自分自身のことが好きかどうかに影響されるという。つまり、何事もポジティブに考える人は認知症になりにくく、ネガティブ思考の人は認知症になりやすいというのだ。つまり、自己肯定感があるかどうかだ。

 

 さらに、運動習慣のある人は認知症になりにくいということが統計調査によって判明した。積極的に運動を日常的にしていて、その運動を心から楽しめる人は認知症になりにくい。義務的な思考により運動したり、強制されて運動したりする人は認知症予防効果が少ないらしい。スポーツでも勝利至上主義に支配されたり、対戦型のスポーツでストレスやプレッシャーが強過ぎたりしても、認知症を予防出来ない。あまりにも激し過ぎる運動も、活性酸素を増やしてしまい、様々な悪影響が出るので薦められない。

 

 認知症になりにくい生き方とは、どういうものであろうか。それは、人々の為や世の中の為に貢献する生き方である。そして、その社会貢献の生き方は、無理せずに我慢することなく、自然体で行う社会貢献である。例え、人のために行うボランティアであったとしても、無理して実施するものであれば、認知症予防にはならない。自分が他人から認められたいとか高評価を受けたいからと公益活動をするのも、認知症予防効果が薄い。自然体であるがままに自分らしく、何の見返りも求めず粛々と人の為世の為に尽くす人は、認知症にはなりにくい。

 

 何故、アルツハイマー型認知症になるのかというと、人間の身体が持つネットワーク機能が無意識のうちに働いて、そうさせているのである。人間は誰でも老化して、徐々に死に向かう。運動をしなくなると同時に身体や脳の機能を働かせなくなると、もう人の為にお役に立てなくなった自分を不必要なものと認識し、この世から抹消させようと人体のネットワーク機能が勝手に働くのである。骨をボロボロにさせて筋肉量を少なくし、土に返しやすくする。認知機能を衰えさせて、死を迎える恐怖から逃避させてくれる。だとすれば、脳と身体の機能を最大限に機能させて、人の為世の為に尽くす生き方をし続ければ、認知症にはならないと断言できる。