おすすめ本紹介『竜の医師団 1』 | やまちゃんのホッとブログ

おすすめ本紹介『竜の医師団 1』

山内図書館「スタッフおすすめの本」です。

ティーンズのみなさんにおすすめの一冊を紹介しています。

 

今回はこちら!

 

 

竜の医師団 1

庵野ゆき/著

岩本ゼロゴ/イラスト

東京創元社

 

数多くの神話伝説やファンタジー作品に登場する竜、ドラゴン。

 

神や魔物のような圧倒的存在として描かれることが多いですが、この作品の世界では、神話的存在でありながらも病気もすれば老いもする超巨大生物として登場します。

極北の国カランバスに住む竜ディドウスは、推定4000歳を超える老竜です。その健康を保つため、自らの命と専門知識をかけて治療に当たるのが〈竜ノ医師団〉です。竜の健康は人々の暮らしを守ることに直結した最優先事項なので、医師団にはあらゆる国や制約からの自由が認められています。

主人公のリョウは、迫害されている民族ヤポネの少年です。学問を禁じられていながら文字を読めることが知られて追われる身となり、自由を得るため〈竜ノ医師団〉への入団を目指します。追手から逃れるリョウが、自分とは何もかも対照的な特権階級の少年レオニート、突飛で奇抜な〈竜血管内科〉の科長らと出会ったことをきっかけに、カランバスや竜の秘密が明かされていきます。

ディドウスの山のような巨体は、痛みや不快感でちょっと身をよじっただけでも地形を変えるほどの大災害を起こします。決してよい「患竜」ではないディドウスの様子を伺いつつ、重機や大規模な設備を駆使して行われる治療の様子は、医師たちの個性的な言動や前向きでしたたかなリョウの目を通すことでコミカルにも見えますが、災害現場のような緊張感があります。また、老いたディドウスに向き合う医師たちの姿からは、高齢者介護や終末医療といった現実の問題も突きつけられます。

ファンタジーとはいえ、ディドウスが若返ることはありません。また、ヤポネであるリョウだけでなく、恵まれているはずのレオニートにすら、困難が待ち受けていることが示されます。未来に必ず待つものがちらつく中で、リョウや医師団はどんな選択をしていくのでしょうか。