3月19日、日銀の金融政策決定会合にて大方の予想通りにマイナス金利政策を解除し、また、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の枠組みの終了が決定されました。

マイナス金利政策は2016年1月に導入されました。マイナス金利政策とは、日銀の当座預金の一部の預金金利を-0.1%にすることで、金融機関が日銀に資金を預けたままにすると日銀に金利を払わないといけないという状況を作り、資金を企業への貸し出しや、投資に回すように仕向ける政策です。経済の活性化を狙う政策で、大規模な金融緩和策の手段とされてきました。

マイナス金利政策の解除で、日銀の当座預金に適用する金利が0.1%となりました。日銀による利上げは2007年2月以来およそ17年ぶりとのことで、大きな転換点となりました。マイナス金利政策の解除を受けて、三菱UFJ銀行の普通預金の金利が、年0.001%から年0.02%へと20倍になり、大幅に引き上がるなど、私たちの生活にも影響があります。

 今回はこのマイナス金利政策の解除の発表により、今後何が変わるのかまとめていきます。

 

①    短期金利と長期金利とは

 まず金利とは、一定期間お金を貸し借りするときの対価となるものです。金利には、短期金利と長期金利の2つがあります。

 

 短期金利 … お金を貸し出す期間が1年以内の場合に適用される金利です。日銀の金融政策に基づいて決定される政策金利です。金利を-0.1%とする、いわゆるマイナス金利政策が長年続いていましたが、今回の発表により、マイナス金利政策は解除されました。これにより、今後、経済情勢を見ながらになりますが、短期金利は上昇傾向に向かうと予想されます。

 

 長期金利 … お金を貸し出す期間が1年超の場合に適用される金利です。長期金利は市場の需要と供給によって決まり、10年ものの国債の利回りが目安になっています。日銀の政策では0%程度とする方針となっていましたが、2022年12月より金融政策の修正が行われ、長期金利の変動幅の許容範囲が±0.50%となり、その後現在では1%超も容認するまでになっています。

 

②    短期金利上昇による今後の影響

こうしてみると、ここ数年で日銀の金融政策は大きく転換され、金利が上昇しています。しかしながら、他国の金融政策に比べると日本は金融緩和のスタンスを取り続けてきており、金利の上昇は他国に比べ非常に緩やかなものになっています。その結果、他国との金利差が大きく開き、日本円安の状況が続いています。

 

<為替と物価高への影響>

 円安が進行している影響もあり、物価高となっています。労働者の賃金がなかなか上がらない中で、普段の生活費が物価高に伴い増加したり、社会保険料等の控除額が増加したり、家計の状況は厳しいものになっています。円高に向かえば、輸入品を中心に値下がり、物価安となり、海外旅行の費用も下がるため、家計にはプラスになります。

今回の日銀のマイナス金利政策の解除自体は、他国との金利差が縮まる方向であるため、円高の傾向に向かうものと予想されますが、マイナス金利政策は解除したものの、大幅に政策金利が上昇している訳でなく、また金融緩和策は引き続き継続するという内容であったことから、為替に対して大きなインパクトをもたらすものでなかったようです。

また、現在は米国の利下げ時期が大きな注目を集めており、利下げ時期が予想よりも遅れ、金利差の縮小が遠のいているとの見方から、円安に振れており、マイナス金利政策の解除の発表後も円安に歯止めがかかっていません。

 

<住宅ローンへの影響>

マイナス金利政策の解除によって、メディアで度々取り上げられているのが、住宅ローンの金利についてです。住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートという基準金利によって変動する仕組みになっています。

短期プライムレートとは、銀行が優良企業に対して融資を行う際の優遇金利のことを言いますが、この短期プライムレートは、日銀が定める短期金利(政策金利)の変動の影響を受けます。そのため、今回マイナス金利政策の解除によって、政策金利が上昇したため、金融機関が短期プライムレートの基準金利を引き上げれば、現在借入中の住宅ローンの変動金利もいよいよ上昇することになります。

現在、短期プライムレートは、1.475%となっていますが、実はこの数値は2009年から変動していません。マイナス金利政策が導入された際も、短期プライムレートは動かなかったことから、今回のマイナス金利政策の解除を受けても変動しないのでは予想されています。また、日銀が更なる大幅な利上げに踏み切るのは難しい状況であるため、徐々に金利が引き上げられることはあっても短期的には急激に金利が上昇することはないという見方が強くなっていますが、今後どのように金利が動くかは不透明であるため、情勢を確認し対応していくことが必要です。

また、新規の住宅ローンについては、金融機関が預金金利を引き上げた(調達コストが上がった)ため、コスト増加分を補填するため、金利が上昇傾向に動く可能性が高まっていると考えられます。

 

<住宅ローン以外の借入への影響>

住宅ローンが注目されていますが、アパート・マンションローンの変動金利や、企業が借入している変動金利型の融資商品についても、同様に金利が上昇する可能性があります。

一方で、当初から固定金利である融資商品については、当然ですが金利が上昇することはありません。個人であれば、教育ローンや車のローン商品などは固定金利であることがほとんどだと思われます。企業においても、多くの中小零細企業が借入を行っている市区町村の制度融資や保証協会付き融資については、おおよそが固定金利型となっています。しかし、一部変動金利型もありますので、借入状況についてこの機会に確認をされた方が良いでしょう。

 

コロナ禍を契機に、非常に変化が激しい経済環境になっています。今後の動向にも注視していき、出来る限りの備えをしていく必要がありそうです。

 

(山大裕)

 

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