住宅ローン控除とは,住宅ローンを借入れて住宅を取得する場合に,取得者の金利負担の軽減を図るための制度です。具体的には住宅の新築・購入をして居住すると,居住年から原則として10年間各年分の所得税額から年末の住宅ローン残高に応じた金額を控除することが出来る制度です。所得税額から控除できなかった額については翌年分の個人住民税から控除されます。
この住宅ローン控除について改正が行われました。改正には以下のような背景がありました。

①住宅ローンの金利の大幅な下落により,いわゆる逆サヤ状態(支払金利<税額控除額)となっていること。
②カーボンニュートラル実現の観点から認定住宅等とそれ以外の住宅とで控除額に差をつける。

<改正内容>

住宅ローンの控除が2025年12月31日まで延長されましたが,控除率がこれまでの1.0%から0.7%へと引き下げられ,さらに対象となる借入金の限度額も引き下げられました。

(注1)

認定住宅とは,認定)長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいいます。認定長期優良住宅とは,長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な建築・維持保全に関する計画が「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて認定されたものをいいます。また,認定低炭素住宅とは,都市における低炭素化を促進し,持続可能な社会の実現を目指すことを目的として,「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき認定されたものをいいます。

 

(注2)
ZEH(ゼッチ)とは,ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で,断熱・省エネ・創エネで,住宅の年間エネルギー消費量を正味でおおむねゼロにする住宅をいいます。具体的には,太陽光発電システムや高性能断熱材,高断熱サッシ,高効率給湯器,家庭用蓄電池などを備えた住宅が対象になります。

(注3)
省エネ基準適合住宅とは,温暖化や異常気象などへの対策として,外皮基準(屋根や外壁などの断熱性能に関する基準)及び一次エネルギー消費量基準(住宅内で消費されるエネルギー量に関する基準)について,「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」に基づく要件を満たすものをいいます。

 

認定住宅等以外の場合の借入限度額や控除期間は次のようになります。

 

表中の金額等は,住宅の取得等が居住用家屋の新築,居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得または宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた場合のもので,それ以外の場合(既存住宅の取得または住宅の増改築等)における借入限度額は一律2,000万円で,控除期間は一律10年になります。
 

住宅ローン控除適用対象者の適用年の所得要件を改正前の3,000万円から2,000万円以下に引き下げました。この改正は,住宅の取得等をして令和4年4月1日以後に居住の用に供した場合について適用されます。

 

個人が取得等した床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅用家屋で,令和5年12月31日以前に建築確認を受けたものの新築または建築後使用されたことのない家屋についても,住宅ローン控除の適用が出ることとなります。ただし,その者の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える年については適用されません。

 

令和6年1月1日以後に建築確認を受ける住宅用家屋(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く)または建築確認を受けない住宅用家屋で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のもののうち,一定の省エネ基準を満たさないものの新築または建築後使用されたことのない家屋の取得については,住宅ローン控除の適用が出来ないこととなります。

 

適用対象となる既存住宅の要件について,築年数要件を廃止するとともに(改正前:木造等は築20年以内,マンションなどの耐火建築物は築25年以内),新耐震基準に適合している住宅の用に供する家屋であることが加わります。この改正については住宅の取得等をして令和4年4月1日以後に居住の用に供した場合について適用します。

 

東日本大震災の被災者に係る住宅ローン控除の特例について,適用期限を令和7年12月31日まで延長するとともに,次の見直しが行われます。なお,控除率は一律0.9%です。

(1)  再建住宅の取得等をして令和4年から7年までの間に居住の用に供した場合の再建住宅等借入金等の年末残高の限度額(借入限度額),控除期間は次の通りとなります。

(2)  令和7年1月1日以後に居住の用に供する再建住宅のうち,警戒区域設定指示等の区域外に従前住宅が所存していた場合には,住宅ローン控除の適用が出来ません。

(3)  上記②~⑤までと同様の見直しが加わります。

 

住宅ローンの特別控除に係る確定申告等の手続きについて,以下のように見直されます。

(1)  令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋について,住宅ローン控除の適用を受けようとする個人は,住宅ローンに係る一定の債権者(金融機関等)に対して,その個人の氏名及び住所,個人番号その他の一定の事項(申請時効)を記載した申告書(住宅ローン控除申告書)を提出しなければなりません。

(2)  住宅ローン控除申告書の提出を受けた債権者は,その申告書の提出を受けた日の属する年の翌年以後の控除期間の各年の10月31日(その提出を受けた日の属する年の翌年にあっては1月31日)までに,その申告書に記載された事項及び申告書を提出した個人のその年の12月31日における住宅ローン等の金額を記載した調書を作成し,その債権者の本店または主たる事務所の所在地の諸角税務署に提出しなければなりません。この場合,その債権。者は,住宅ローン控除申告書につき帳簿を備え,申告書提出者各人別に,申請時効を記載等しなければなりません。

(3)  住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書の記載事項に,住宅借入金等の年末残高を加えることになります(改正前は,初年度末の借入金残高及び特別控除額のみが表示されていました)。

(4)  令和5年1月1日以後の居住の用に供する家屋に係る住宅ローン控除の適用を受けようとする個人は,住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書及び新築工事の請負契約書の写し等については,確定申告書への添付が不要になります。この場合,税務署相は,確定申告期限等から5年間,その適用に係る新築工事の請負契約書等の写し等の提出等を求めることが出来ること年,その適用者はその求めに応じなければなりません。

(5)  給与等の支払いを受ける個人で年末調整の際に,令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン控除の適用を受けようとするものは,住宅取得借入金に係る借入金の年末残高証明書については,給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書への添付が不要になります。
 

住宅ローン控除額のうち,その年分の所得税額から控除しきれない額を,所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)の範囲内で住民税額から控除できます。

(元橋暁潔)

 

 

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