銀行家は「息子の『D』(少しばかり有名で雑誌にも載ったことのある音楽家)に「怪物」が憑いていて仕事を投げ出して家にばかり居る。今息子が何処かに出かけたいという時には付いて行って欲しいのだ」と語る。

 

学生であった主人公はこのバイトを受けることになった。

 

そして、「私」とD、空の怪物、その周りの人たちとのかかわりが始まる。

 

ストーリーとしてはこんな感じ。

どことなく奇妙で、それでいて空虚で温かみがある箱庭のような感じで、世界観に引き込まれます。

 

***

 

「君はまだ若いから、まだ君にとっての空の、100メートルほどの高みは、単なる空に過ぎないだろう?しかしそれは、いまのところ空虚な倉庫ということに過ぎないんだ。それとも君は今までに何か大切なものをなくしたかね?」

 

「猫をなくしました。」

 

「それじゃきみの空には、一匹の猫が浮かんでいるわけだ。」

 

***

 

物語はDの死亡により幕を閉じる。

 

「自殺前の知り合い挨拶として、僕を雇ったのではないか、アグイーという怪物をカモフラージュのために立てて。」

 

というオチはミステリー小説のような後読感を感じました。

あ、確かにそう考えればすべてつじつまがあう。

でもアグイーのインパクトが強すぎてその発想は出てこなかった。

 

さすがはノーベル賞作家だなと思いました。

 

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