大正時代の女性美とは | 美しい日本の恋 ~やまとなでしこ恋愛考~

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日本文化を彩る女性美と恋愛を考える

日本の美人画は江戸時代の浮世絵からの流れを汲む日本絵画の一ジャンルです。

大正期には竹久夢二さんの「夢二式美人」などが描かれ、

まだ写真が一般的に広く出回る前の時代では、美人画は女性美を映し出すメディアとして、大いに隆盛を誇っておりました。

 

時代時代の映す鏡である美術と女性美の関係は、表裏一体の関係であると感じます。

まずは、この二枚の絵画と写真をどうぞ。

 

 

左の絵画は山川秀峰さんの美人画、そして右の写真は大正期の女優、岡島艶子さんです。

この二枚の構図は完全に一致しています。

この時代の女性美を映し出す時、特に体の線をいかに細く見せるかということは重要だったのでしょう。

しかし、この二枚は岡島さんの写真の方が時代的には先に映され、山川さんの美人画は昭和に入ってからの作品ということのようです。

それでは次の二枚をご覧ください。

 

大正13年に制作された池田輝方さんの「新浮世絵美人合 一月」と、

大正末期にデビューし戦前・戦中と活躍された女優、梅村蓉子さんです。

この二枚にも首の傾げ方や目線の具合など、似たところが多いですね。

 

また、この頃の美人画と写真に於いて共通するところは、どちらも日本髪が大きく拵えられているところでしょうか。特にこの時代の女性美をあらわす要素において、日本髪の大きな拵えは特徴的のようです。

今から見ると、日本髪が大きいのは一見、不格好と見られる節もありますが、当時は顔の小ささを強調するというねらいもあったのかもしれません。

平安時代の女性美の条件としては、「ふくよかさ」という点があげられました。

これはまだ食糧が満足に行き届かない時代の豊満さへのあこがれであったと考えられています。

一方時代が進むにつれて、江戸時代になると「小ささ」が条件に加わってきます。

この時代の化粧指南書『都風俗化粧伝』で、背が高いのを目立たなくする方法や、口の大きいのを小さくみせる方法などがこまかく記述されて、女性美への指南が綴られています。

そして、明治・大正期に入ると、いよいよ「ほそみ」がテーマとなってくるのではないでしょうか。

この時代の美人画は先述の「夢二式美人」にも見られる通り、体の細身を強調した全体の流れるようなやわらかさに代表される画風が特徴的です。

当然そうした美への要請は、芸術表現によってリードされ、あるいは理解されることで、時代の美のモデルとして現われて来るのだと思われます。

 

そして、時代はモボ・モガ時代へと入っていきます。

 

 

左は、大正三大美人のひとり柳原白蓮さん。

右はモダンガールに扮した大正時代の女優、筑波雪子さん。

 

明治時代の文明開化を経て、日本は風俗的にも大正浪漫という和洋折衷を推し進めたファッションカルチャーの時代を迎えます。上の写真の両者が同時代に出現したと考えることは、この大正時代という20世紀初頭の日本の大きな特徴であるともいえるでしょう。

 

この時代のあとに、日本は長い不遇の戦争期を迎え、女性は美を謳歌することもできなくなっていきますが、時代とともに女性の美も移り変わってゆくことを考える際、この大正時代はとても重要な時代だったと思います。