傘は和傘としてそれ以前からありましたが、世界では、おおよそ4000年前から使われていたとされており、当時は雨よけではなく、貴族の夫人や高僧たちが外出する際の日よけとして使われていました。雨傘ではなく、権威の象徴の日傘として、傘は誕生していたのです。カサが一般的に使われるようになったのはギリシア時代です。当時の傘は閉じることができませんでした。13世紀に入ると閉じることのできる傘が作られるようになり、鯨の骨や木がフレームとして使われていました。これがイタリアからスペイン、ポルトガル、さらにはフランスへと広まりました。フランスでも日傘として使われ、その他にも女性のアクセサリーの一部としても使用されました。
雨傘として使われるようになったのは、18世紀の後半になってからのことです。イギリスのジョナス・ハンウェーという人物が、防水加工をした傘を差して街を歩きました。それまで、傘といえば女性のもので、男性は帽子で雨をしのぐのが普通の時代だったのです。彼は変人扱いされるのですが、30年もの間、傘を雨具として使い続けたことで、人々も見慣れてしまい、次第に違和感なく、男性がカサを差す姿も民衆に受け入れられていったのです。カサの持ち手をステッキ同様にすることで、爆発的に傘が広まりを見せます。細く折りたたむことでステッキ状に持ち歩くこともでき、こうしてイギリスにおいて、世界に傘が広まる礎を作り出したのです。日本へは、1804年に長崎に洋傘がはじめて入ってきました。
それまでイギリスから輸入されていた洋傘ですが、材料を輸入して日本でも作られるようになったのは、明治10年の頃のことです。明治22年に入り、材料も製造も、全て国内で行われるようになりました。高価な輸入品だった洋傘の価格も国内生産により下がり、国内に需要が広まっていきました。それでも洋傘は高価なものに変りなかったのです。