はじめに帝国憲法の憲法改正に関する条項等を下記に示します。


上諭

将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ継統ノ子孫ハ発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ議会ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ


第73条

条将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ


第56条

枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ応ヘ重要ノ国務ヲ審議ス


枢密院官制

第六條 樞密院ハ左ノ事項ニ付諮詢ヲ待テ會議ヲ開キ意見ヲ上奏ス

一 皇室典範ニ於テ其權限ニ屬セシメタル事項

二 憲法ノ條項又ハ憲法ニ附屬スル法律勅令ニ關スル草案及疑義

三 憲法第十四條戒嚴ノ宣告同八條及第七十條ノ勅令及其他罰則ノ規定アル勅令

四 列國交渉ノ條約及約束

五 樞密院ノ官制及事務規程ノ改正ニ關スル事項

六 前諸項ニ掲クルモノヽ外臨時ニ諮詢セラレタル事項


上記の条項等を踏まえて、天皇陛下が憲法改正発議大権を行使するとは、具体的にどの事をいうか考察していきます。


帝国憲法の第73条の改正手続き条項を以て、

天皇陛下の帝国憲法改正発議大権の行使とは、勅命を以て議案を議会を付することだ

日本国憲法は、勅命を以て議案を付され、その後議会で制定されたので、天皇陛下の発議権は侵害されずに、正常に行使された』と主張される方が多くいます。


確かに上記の、第73条は『勅命を以て議案を議会に付する』とあります。しかしそれが『発議権を行使』することになるのでしょうか?


そもそも『発議』とはどういう意味でしょうか?

調べてみると

『会議などで、ある意見・議案を言い出すこと。』とあります。

なるほど、帝国議会に対して勅命を以て議案を付すことは、この発議の意味と合致するように見えますね。

ところが第73条をよく読むと『発議』の言葉が出てこないんです。『発議』の言葉が出てくるのは、第73条でなく上諭なんです。

そして上諭を読むと

発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ』とあります。


この表現に疑問を持ちました。なぜなら、議会に付すことを発議の行使というのならば

発議ノ権二依リテ議会二付シ

となるはずだからです。


それでは上諭の言うところはどういうことなのでしょうか?

それは第73条を視野に入れないと読み取れないのです。

というのは、上諭の『之ヲ』という言葉です。もし『之ヲ』が『発議の権』を意味してるとしたら『発議の権を議会に付して』となります。こんなことはおかしいですね。

発議の権を議会に渡してはいけません。

つまり『之ヲ』とは発議の権を指していません。

では何を議会に付すのかというと

第73条には

『勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ』

とあります。

議会に付すのは議案です。

憲法改正の話ですから、改正議案つまり改正草案です。

上諭でいう『之ヲ』とは、改正草案のことを指しているのです。


そして重要なのはこれからです。

『之』という言葉は指示語です。

指示語とは『こそあど言葉』と習った人もいるでしょう。

『直前の言葉を繰り返すのを避けるために使われる』のが指示語です。

なので、上諭で使われている『之』とは、直前にある『発議ノ権ヲ執リ』になります。第73条より勅命を以て議会に付すのは『改正草案』と確認しました。そして上諭の『之』は『発議ノ権ヲ執リ』です。

つまり『之』とは、『発議の権を執りて起草した改正草案』ということになります。

『執り』とは、『事を行なう』という意味です。なので『発議の権を執り』とは、発議の権を行う。つまり『発議権の行使』となります。


上記のことから発議の行使=改正草案の起草となるのは誰でもわかると思います。

帝国憲法第56条及び枢密院官制 第六条 第二項は下記のとおりです。

枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ応ヘ重要ノ国務ヲ審議ス

憲法ノ條項又ハ憲法ニ附屬スル法律勅令ニ關スル草案及疑義

枢密院は天皇陛下の諮詢を受けて改正草案を上奏します。

このことこそが『発議の権を執り』なのです。

そして、上奏された改正草案を勅命を以て議会に付する。というのが第73条に定められた手続きです。


ご存知の通り、日本国憲法の草案はGHQ草案です。

当然のごとくGHQ草案とは枢密院が天皇陛下の諮詢を受けて上奏したものではありません

上諭にある『発議の権を執り』が侵害・簒奪されているわけです。帝国憲法で唯一定める一身専属権である憲法改正発議大権が否定されたということです。

この事実は重要です。

『勅命を以て議案を(GHQ草案がもと)議会に付したので、発議大権は守られた』などという主張は、勘違いの極みです。

表明だけを取り繕って、第73条の手続きに沿ったように見せかけても意味がありません。一番重要である『発議の権』つまり憲法改正発議大権が行使されずに、侵害・剥奪されたのでは、そのあとどんな手続きを採っても無効なのです。


GHQは、表面だけを、取り繕えば簡単に日本人を騙されると思ったのでしょう。プレスコードがひかれていた占領期では簡単だったかもしれません。

しかし、独立して70年以上経つ現代において、GHQの策略に騙さられるほど日本人は無知ではないと思います。

今一度 帝国憲法に立ち戻り、自分の頭で日本国憲法の異常さを再検討するべきだと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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