帝国憲法は國體を描写して文字に起こした憲法典だと言われます。
それでは帝国憲法=國體なのでしょうか?

帝国憲法をよく勉強してみるとそうとも言えなくなってきました。

落ち着いて帝国憲法を見てみれば、帝国憲法に改正条項があるのですから、そもそも帝国憲法=國體ではないんですね。
國體は改正などできませんから、帝国憲法に改正条項があるということは、帝国憲法=國體ではないということになります。

では何故帝国憲法は國體を描写したものだと言われるのでしょうか?

それは帝国憲法は規範となる規範國體と、政体に関わる条項がそれぞれ存在しそれらが合わさって帝国憲法を形づくっているからです。

例えば天皇大権に関わる条項は、國體を描写した良い例だと思います。
これらの条項は改正することはできません。
言うまでもなく各条項にある天皇大権は統治大権に属するものであり、憲法で与えたり、奪ったりできるものではないからです。
もちろん改正することは不可能です。

それに比べて帝国議会や国務大臣、枢密院など政体に関する条項は、将来改正することがあり得ます。
臣民の権利も時代によって変わっていくでしょう。
これらの条項は國體とは言えません。
帝国憲法によって初めて規定されたものなので改正することは可能です。

このように帝国憲法には、改正できない条項つまり國體を描写した部分と、改正できる条項があるのです。
なので『帝国憲法は國體を描写して文字に起こした憲法典』という表現は間違いではありません。それ故に帝国憲法は正統憲法なのです。

このことを踏まえて日本国憲法を見てみると、この國體を描写したところも改正したことになっています。
これは不可能です。
國體は憲法で改正したり削除したりできるものではないからです。

このことを指摘して、佐々木憲法学者は、昭和20年10月、貴族院で『この改正案(日本国憲法)は國體の否定に繋がる』と辛辣に批判しています。


帝国憲法は改正できる部分も確かにありますが、國體を描写して文字に起こした憲法典です。
正統憲法です。

日本国憲法にはそのような内容は一切ありません。國體の否定に繋がるものです。
帝国憲法と日本国憲法の大きな違いをしっかり抑えることが日本の憲法を考える上で大切なことではないでしょうか?