観相学の権威 水野南北 ④ | ドット模様のくつ底

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観相学の権威 水野南北の
『南北相法極意修身録』要略玉条より

春日大社岡本彰夫権宮司が講演で
解説をされていた内容をご紹介します。


シリーズ④は、
観相学の話も後半にありますが、
前半は歴史上の人物のエピソードから
お金に関する良い考え方の
アドバイスが中心になっています。



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人間は所詮人間。

エジプトのピラミッドの裏には5,000年前から
「いまどきの若い人は」と書いてあります。

人間は皆、同じ轍を踏んでいく。失敗するにしてもそう。
だから歴史は大事です。

解決の糸口は案外新しいところになく古いところにあります。



『太平記』にね。

北条時頼の家臣で
青砥左衛門藤綱(あおとざえもんふじつな)と
いう人の話があります。

それはお金に関する話です。

夜に鎌倉幕府に出仕せよといわれて、
軍勢を引き連れて滑川(なめりかわ)を渡るんです。

私が以前、鶴岡八幡宮に用事があり鎌倉に行ったときに
滑川をいっぺん見てみたいと思って見に行きました。

今は泥川みたいになっていて失望しましたが、
昔は軍勢を率いて渡るような立派な川だったんです。

その腰の巾着から青砥左衛門が
ちょこんと銭10文を落としますねん。

そこで青砥左衛門は軍勢を引き止めて、
従者に銭50文を渡すんです。

これで松明を買ってこいと。

50文のお金をもって町で
松明を買って10文のお金を拾ったんです。

あくる日に話題になる。
50文の松明を買って10文を拾うなんて馬鹿げていると。

ところが青砥左衛門はこういいます。

「私は10文の金を拾った。
この10文は私が川さらいをしなければ
二度とこの世に出てこない。
ところが私が払った松明の50文は、
これから商人の手にかけて回ってくる。
だから俺は一文の金も失っていないのだ」


こんな話が太平記に載っています。ええ話です。

偉い人は天下、国家のことを考えてはるねん。


他にもこの話と真逆の話があります。

二代将軍・徳川秀忠の

茶道の指南役で、茶器鑑定役を仰せつかった

茶道・石州流の流祖で、
大和小泉藩主・片桐貞昌(さだまさ)というのがいました。

(片桐石州の名で知られる)

この人が参勤交代の途時に、とある本陣でね、
天下の銘器といわれる器を
主人が知らずに尿瓶に使っているのを見つけました。

お殿様は
「これは名だたる茶器や。これを尿瓶に使うとはとんでもないことや」
というのです。

そこで50両をそこに置いて
それは天下の銘器なので、私に譲れと言いました。

主人は「どうぞお持ち帰りください」と、綺麗に洗って殿様に奉りました。

そこで殿様は50両を無理やり主人にわたして、

そこの庭に行って、その茶器を叩き割ります。

そしてこう言い放つんです。

「天下の銘器であっても、一度小便したら尿瓶になる。
こんなものを残しておいたら、これで茶を飲む人が出てくる。
だからこの世から消してしまった方がいいのだ」


そういう理由からその銘器を割ったということです。

これは前述の『太平記』の話とは真逆の話ですが、

どちらの話も
私欲では動いていないんです。




春日大社で灯篭の調査をしているんですが、
「商売繁盛」と書いた灯籠は
昭和50年以降しか出てこないんです。
それまでは何を書いているかというと

「諸国客衆繁盛」(しょこくきゃくしゅうはんじょう)

「私のお取引さまがお栄になりますように」

でした。

これが日本の商道徳です。

商売は自分の利益だけを求めたらみんな逃げていきます。

人の利益を考えたら、おのずと利益はついてくるというのが

1000年かかって日本人が編み出してきた哲学なんです。

ところが皆そうは思わない。とにかく儲けたらええと思うねん。

昔は表に商売繁盛と出したら恥ずかしいことでした。



このごろ何でも使い捨てやからね。人間でもそうです。

これで世の中が良くなるはずがないです。
老舗は人を大事にする商売をしていますね。従業員も含めて。



・それ、物かくを以て事足る。こと足れば事定まらず。


これは南北先生がよほど言いたかったことでしょうね。
何度もこの言葉が出てきますねん。

物質的に裕福になれば事柄で欠けてくるということです。
お金持ちになったけど家族ばらばらやねん。


・小児貧悪の相あるとも、その親つつしみよろしければ、
妾りに悪しきというべからず。(略)
子に対して親は本なり、その本正しければ子自ら全し、(略)
先ず悪因を解くことは陰徳の外はあらじ。


「陰徳」。

徳には陽徳と陰徳があります。

聴講に来ている人みんなへ、
ポチ袋に一万円を包んでわたしたら

「あの人、ええ人やな」と言ってくださるでしょう。

みんなの前で良いことしたら
全部この世で報われます。

みんなの見ていないところで
良いことをしたら、この世で報われないねん。

なんぼええことしたって褒めてもらえません。

ところがそのことは、
目に見えないところで感得してはるんです。
陰徳は持って死ねるんです。

(春日大社 岡本彰夫権宮司 講話より)




それでは、今日も皆様が良い一日となりますように。