七つの社会的大罪 「人間性なき科学」現場の本音② | ドット模様のくつ底

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福祉的な目線から心の問題を考えています。

種蒔きジャーナル文字起こし

(つづき)


平野氏:先生、昨日文部科学省に、
  福島県の小さいお子さんを持つお母さん方が押し掛けて、
  この20mSvという基準はおかしい、と声を上げて、
  デモもされたのですけれども、
  具体的に、今全員はムリにしろ、例えば子供たちを一定期間疎開させるとか、
  そういう手段は出来るのではないでしょうか。

小出氏:私はもうそれを真剣に考えなければいけない、
  と思うようになっていまして、
  福島県の汚染地帯から人々全員を避難させるという事がもし難しいのであれば、
  子供だけは何とか守らなければいけないと思いますので、
  例えば子供がどろんこになって遊ぶような場所、
  学校の校庭とか、幼稚園・保育所の庭とか、
  そういう場所は、全ての表面の土を厚さ5cmまで剥ぎ取れば良い訳ですから、
  それを剥ぎ取る事をやって欲しいと思いますし、
  疎開というのは戦争中の言葉ですけれども、
  子供達が苦痛に思わないで、楽しく別の所で過ごせる、というような、
  何と言うのでしょうね、良く言えばサマーキャンプとかいうような言葉を
  聞きますけれども・・・

平野氏:集団避難ですかね。

小出氏:本当に遊んで過ごせるという場所を、
  本当に真剣に作らなければいけないと思います。

MC:昨日、小出先生は、国会でのお話の後、
  そうした福島県の親御さん達にも参加されたのだと聞きましたが。

小出氏:終わってからまだ時間が間に合いそうだったので、行きました。
  別に私はその場に何も発言をしたくて行ったのではなくて、
  ちょっと皆さんの様子を見て、私自身が元気をもらいたい
  と思って行ったのですが。

MC:どうでした?
  お話をなさってどのような事を感じられました?

小出氏:半分は半ばこんな事を招いてしまって申し訳ないなと思いましたし、
  沢山の方が問題意識を持って集まって下さってる訳ですから、
  その知恵を集めて、子供たちを何とか守るという事を実現したいと思いました。

MC:国会での話に戻りますと、昨日小出先生のお話の中に、
  ガンジーの言葉というのが出て来ましたよね。
  これはどういう思いでお伝えになったのでしょうか。

小出氏:ガンジーが残した言葉というのは、「7つの社会的罪」と言うのですね。
  それぞれの政治の場所には、理念のない政治なんていうのはダメだという事を
  ガンジーが残して訳で・・・

MC:理念なき政治はダメだ。

小出氏:それから、所謂私が属しているアカデミズムという所では、
  人間性のない科学はダメだ、というような事・・・

MC:人間性のない科学・・・

小出氏:残している訳です。
  商業の所というか、金儲けの所ですね、東京電力も含めてですけれども、
  そこは、道徳なき富でしたかね、何かそういうような言葉を残しているから、
  これまで原子力を進めて来た日本の形というものを、
  やはり反省して欲しい、という事を思いながら、
  その事を聞いてもらいました。

MC:原発への警告を早くから続けて来られた、その小出先生の言葉というのは、
  これまで国には、やはり届いていなかったとお感じだと思うのですが、
  この長年の思い、これを昨日十分お伝えになれましたですか。

小出氏:私が頂いたのは15分という時間でしたので、
  もちろん言いたい事が全部言えた訳ではありませんけれども、
  周到に準備をして下った方々がいた訳ですし、
  こんな機会は、たぶんもうないかもしれないし、
  私自身は政治の場所に出るという事はしないようにして来たのですが・・・

MC:それはどうしてですか。

小出氏:もう政治には絶望しました。

MC:絶望しましたか・・・

小出氏:でも、皆さんが私にとにかく政治を動かさなければダメだろう、
  と言って、さんざんお叱りを受けて来ましたので、
  一度は行くしかないと思って行って来た次第です。

平野氏:例えば、今度、事故調査委員会が今日も発足したのですけれども、
  所謂実務的というか、検証委員会、実際に技術者が検証するという事に、
  私なんかは、小出先生が本当にふさわしいと思っているのですが、
  そういう所にもし何か声がかかれば、出掛けられるというお気持ちは、
  あるのですか。

小出氏:ありません。

平野氏:ないのですか。

(MC失笑)

平野氏:勿体ないというか、何とか生かして欲しいですね。

MC:何で出来るだけ政治と離れていたいのですか。

小出氏:私が少なくとも経験してきた政治というのは、
  もう全て決まっているのですね。

MC:最初から、結論が決まっている訳ですね。

小出氏:だから、その中に学者が一人どんな発言をしようと、
  もう国家の根本を変えるような事はもちろん出来ないと、
  そういう世界の事だったのです。
  そういう所に行ってしまえば、国家の根本にただただ従属させられて、
  協力させられるという、そういう構造がずっと続いて来ましたので、
  私はそういう所で国家の協力はしない、という事を決めていた訳ですから、
  そういう所に足を踏み込むのを止めて来ました。

平野氏:ただ、今回の事態というのは、これまでのそういう政治の
  既成概念というものも、全て変えているというような、
  現在進行形なのでしょうけれども、
  そういう事も言えると思うのですけれどもね。

小出氏:マスコミにそれをまずは期待したいと思います。

平野氏:あ、いや、マスコミもね・・・
  もちろんそういう役割も帯びているのですけれども。

MC:マスコミもそれは本当に大きな役割を果たさないと行けない。

(この辺りMCと平野氏がクロストークでよく聞き取れず)

平野氏:やはり、付け焼刃の知識では、なかなか語れないというか、
  言い表せないという事を実感するのですけれども、
  やはり、先生みたいな方が、本当に中に入って声を上げて欲しいな、
  と私は最近特に思うのですけれどもね。

小出氏:そうですね。
  ただ、その事を、私が今まで感じて来た絶望というのをお伝えするには、
  あまりにも時間が足りないと思います。

平野氏:ああ、そうですかね。

MC:今度、小出先生が如何に夢を持って原子力のアカデミズムの世界に入って
  そして、政治への絶望を抱かれたかというのは、
  時間をかけて一日ゆっくりお話下さいね。

小出氏:はい、ま、機会があればという事で。

MC:そう願います。
  私は昨日の委員会の様子を見て、私が絶望した事をひとつ申し上げますと、
  国会議員ってこんなにこの原発事故に関して知らなかったのかと、
  びっくりしたのです。

(小出氏、失爆笑)

MC:これは、「たね蒔き」のリスナーの方皆さん、思われる事ではないか、と。
  私らの方がまだ、小出先生の話を聞いていて知っているのではないか、
  と思ったのですね。
  どうでした?

小出氏:私が今回呼ばれたのは、所謂行政監視委員会という委員会なのですね。
  それは立法府として、行政をどうにやって監視するのか、という委員会だった訳で、
  そこに呼んで頂いた訳ですから、まず私は行政がどういう事をして来た、
  どのような不正を行って来たか、という事を昨日聞いて頂いた訳です。
  ただし、犯罪は行政だけが犯して来た訳ではありません。

  立法ももちろん犯して来た。
  例えば、原子力機構法だって立法機関が作った訳だし、
  原子力損害賠償法だって立法機関が作っているのですね。
  そういう事を、立法機関に属する議員のおひとりおひとりが考えて欲しい、
  と私は思いますし、もしそういう機会があるならば、
  今度はそちらに一度は行ってみたいと思います。

MC:そういう意味では、法律を変えて行こうというような意欲を
  昨日、議員さんの中で感じられましたですか。

小出氏:昨日は、感じませんでした。

MC:昨日は感じませんでしたか。

小出氏:はい。

MC:ラジオネーム(省略)さんという方の意見を一言、
  小出先生にお伝えしますけれど、
  「小出さんの訴えが国会でなされた事は大切だと思うのですが、
  国会としては、こうした小出先生のような方を呼んで話を聞いたという、
  ただその事実が欲しかっただけなのか、と勘繰りたくなるのです」。
  それについては。

小出氏:これまでもずっと政治の場で行われて来た事で、
  常にそうでしたよね。
  何か問題を自分達は聞いてやったんだという、
  そういう場所を作ったという事で、自分達の責任を逃れるという事は、
  もちろんずーっとやって来た事で、
  私が政治に絶望しているというのも、そういう事がひとつの理由でもあります。

MC:私達としては、小出先生の言葉が何とか政治に良い影響を与えて欲しい、
  と願うばかりです。

平野氏:そうですね。

MC:また、小出先生、こうしたいろいろな問題について、
  ゆっくりとお話頂く時間を儲けさせて下さい。
  今日はどうもありがとうございました。

小出氏:はい、ありがとうございました。

平野氏:ありがとうございました。

MC:京都大学原子炉実験所、小出裕章先生に伺いました。