かたよらない こだわらない とらわれない 般若心経の力 | ドット模様のくつ底

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福祉的な目線から心の問題を考えています。

『かたよらない こだわらない とらわれない 般若心経の力』

(講談社刊)


著者/薬師寺執事長 法相宗宗務長 村上太胤師



(↑こちらの本を一部抜粋)


「価値は自在に変わっていくもの」


人間の持っている根本の煩悩は「貪・瞋・癡」(とん・じん・ち)

これは貪り・怒り・愚癡のことです。


現代のアメリカを中心に取り巻く資本主義。

金融経済というものにあまりに価値を置いた社会というのは、

基本的にどうしても欲といいますか、商業主義といいますか、

市場原理といいますか、すなわち、貪りの世界です。

欲望を中心にいろいろなものが生まれてきているところに問題が起きています。

根底に、人のため社会のためみんなのために、

という宗教的な心や文化的な生き方というものがあればいいのですが、

商業主義、資本主義、市場原理、経済の価値というものにばかりとらわれています。


ずっと昔から、

「欲をかいてはいけませんよ」「人のために働くんですよ」

「悪いことをしてはいけませんよ」「善いことをしないといけませんよ」

という宗教的な教えを家庭や社会で学んできたはずですが、

現代はあまりにも欲望のほうが強くなってしまいました。

じつは人間というのは一度欲を持つと幸せではなくなるのです。

今、幸せを実感できない人が多いのは、

社会のさまざまなことが「欲」に覆われているからだといえるかもしれません。


インドのカースト制度の最下層のなかで生きている人たちに

「宝石を持っていないからかわいそうですね」

と自分たちの経済の価値で言ったところで何の意味もありません。

豊かさが幸せである。お金があることが幸せである。

そういう価値観でしか人を見ることができない人の方が

幸せであると言いきれるものではありません。

経済価値だけで生きている人たちは、

リーマンショックのような百年に一度の経済危機になると

どうすることもできなくなります。

どうしたらいいかというのは、政府だけの問題ではなく、

ひとりひとりが「自分の会社だけよければいい」「お金さえあればいい」ということではなく、

違う価値観について考えなければならないのではないでしょうか。


「色即是空 空即是色」(しきそくぜくう くうそくぜしき)というように、

人間社会はいろいろな意味でバランスをとりながら保たれているのですから。