浪速エピソード「譲れない想い」<再掲載> | ドット模様のくつ底

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奈良が好きなライターの瞬間ブッダな日々の記録。
福祉的な目線から心の問題を考えています。

大阪生まれ、大阪育ち、奈良が好き。




といいつつ、やっぱり愛郷心はたくさんあり、


大阪は私にとって特別な土地でもありまして。



今日は、以前書いた記事を少し加筆・修正して更新したいと思います。


別にたいした話ではないのですが、

私にとっては忘れられない思い出になりました。



学生の頃の話です。

梅田でバイトの帰りのこと。地下鉄で乗り換え、京阪淀屋橋へ。



この時の私は、バイトで疲れた足を休めるために始発の電車に乗り、

有り難く座席に座らせていただき、小説を読みながら帰るのが日課でした。




もちろん、ご年配の方がおられたら、「どうぞ」。と席を譲るつもりでいましたよ。



途中、京橋に停車します。この駅はビジネス街と飲み屋街が、駅を隔てて見事に分かれている場所なんです。

城ホール方面に行くか、グランシャトー方面に行くかという分け方がわかりやすいでしょうか。



ちなみに、伯母が、ビジネス街方面の高層マンションの17Fに住んでいて、

天神祭りの時は、マンションのベランダから花火を見るのが好きなんですよねぇ。

ガラス張りのOAPに映し出される花火がとてもキレイ!






ある日、いつも通り小説を読んでいました。
ただでさえ満員状態の車内。京橋に停車。

大勢の人が乗ってきました。



その中に酔っ払いのおっちゃんも流れ込んできて・・・

おっちゃんは、何かを物色しているようで、あちらこちらと見回していました。






こういう時は、目を合わさない方がいい。
という、一般的な常識はここで覆されました。

そのおっちゃんは私の目の前に立ち、そして、




なんと!!!!!



「おまえ、座らんでええやろ、どけ!!」 といって、座席を譲らされたのです。



満員状態の車内で・・・・・・。




仕事帰りのしんどい顔がいっぱい乗った、重たい空気いっぱいの中で・・・・・・

座席を譲らされるという恐怖と自分の運の悪さを恨みました。



単純に悔しい。
がしかし、常識が通じる相手ではありません。

仕方がないので、座席を譲ってあげました。



満員のため、その場を離れることもできず、小説をもったまま立ち尽くすことになりました。

最悪の展開です。




「あんなおっちゃんなんか、いなかったことにしてやる」。




なかったことにして乗り越えようとしたその後のことです。




私に、忘れられないほどの衝撃の展開が待っていたんです。






そんなかわいそうな私に救いの手が差し伸べられました。



そう、仏の世界でいう「慈悲」の手。






誰かが私の肩を叩きました。


そして、
「君、ここに座って」というのです。




振り返ると、同じ歳くらいのおっちゃんの席のとなりの隣に座っていた男の子が、

私に席を譲ってくれようと自分の席を立ってくれたのです!!


そして彼はこんなことを言ったのです。



「君、小説でしょ? 僕は漫画だから」。





え!?


よく見ると彼の手にはコミック雑誌が。



つまりはこういうことだったんです。





酔っ払いに席を譲らされて、小説を持ったまま立ち尽くしているかわいそうな私を横目で見ながら、

自分は漫画を読むことはできないので、座席を譲ろう。



「君、ここに座って」。



って、そんなあほな・・・・・・。





彼の正義の理由は「そこ」だったのですね。





こちらからしてもですよ?

「あ、そうですか。

では、私は小説なので」

って座るわけにもいきませんよね?



「大丈夫です。すみません」

とゼスチャーを交えて、


ご遠慮させて頂いたんですね。


ところが一度言ったら、

後が引けないからなのか?

「どうぞ座って下さい」と、

彼は続けました。



その後は、譲り合い。という日本人の美徳精神から一転して、





お互いに、



「譲る気持ちを譲れない」、

「譲られたくない気持ちを譲れない」




譲れないが止まらない、心の葛藤合戦へと、


見事な変貌を遂げていくのですが。





酔っ払いのおっちゃんは、いびきをかいてすでに夢の中。




その後は、次の守口駅で勢いをつけて乗り込んできた、

おばちゃんに席を座られ、1件落着、という見事なオチがつきました。




他の土地ではあまり見かけないことかと思いましたので、書いてみました。




以上、

「街ぐるみ新喜劇プロジェクト★大阪」エピソードでした。