五月天(MAYDAY)のコラボについて、さらに紹介を続けましょう。
C-POPのススメ 『你不是真正的快乐』で紹介した、蔡依林(ジョリン・ツァイ)の『天空』のコラボはとても良かったのですが、彼女は、次の五月天(MAYDAY)のツアー『Mayday 2019 Just Rock It!!! “藍 | BLUE』でも、さらに素晴らしいコラボを披露しています。
『玫瑰少年 Womxnly』(薔薇の少年)という楽曲です。
最初聴いた時から、おしゃれな曲だったのでお気に入りになりました。
しかし、こんなに意味深い曲だったとは、、、
バックのスクリーンに映し出されるイラストが印象的です。この曲のテーマに沿っているのです。
オリジナルは、ジョリンの曲です。2018年リリースのアルバム『Ugly Beauty』に収められています。
クレジットは、作詞:阿信 + 蔡依林、作曲:剃刀蔣 + 蔡依林。
そう、五月天の阿信とジョリンの共作です。
こちらが、彼女のオリジナルMVですが、ダンス系が好きではない私にとっては、このバージョンだけがリリースされていたら、全く響かなかったかもしれません。
彼女らしいダンサブルなナンバー
この曲は、台湾最高峰の音楽賞である「金曲獎」(Golden Melody Awards)にて、2019年の年度楽曲賞を受賞しました。
そして、五月天バージョンもあります。
アレンジは『Just Rock It!!! “藍 | BLUE』ツアーと同じですが、キーを下げています。
番外編として、TFBOYSの王俊凱(ワン・ジュンカイ)がコピーしているので、お好きな方はどうぞ。
そして再び本題ですが、『玫瑰少年 Womxnly』ととても関連性のあるジョリンの作品をもう一曲紹介しなければなりません。
先ずは、 2015年の彼女のツアー『Play世界巡迴演唱會(Play World Tour)』で披露された、
『不一樣又怎樣 We’re All Different, Yet The Same』(=私たちはみんな違う、でも同じ)
という曲のライブパフォーマンスを観てもらいましょう。
かっこいいイントロ。舞台も豪華です。
どうでしょう?
これもかっこいいナンバーなのですが、本当に観てもらいたいのは、2014年リリースのこの楽曲のオリジナルMVです。
こちらが必見の 衝撃のMV です。
MVは実話がベースとなったドラマになっており、病院に付き添いで来た年配の女性が、「請問您和她的關係是?」(=貴方と彼女との関係は?)と聞かれるシーンから始まります。
ジョリンは花嫁役の1人として登場しますが、他の俳優も全て有名どころです。
お分かりの通り、このMVは、女性パートナーとの別れを迎えた女性のことを描いています。
長年連れ添った相手が、病院に搬送され緊急手術となりますが、手術は親族の同意書が必要なので、医者から関係を問われた主人公は、「30年一緒に暮らす一番親しい友人です。」と訴えるものの、結婚していない彼女は法律上サインすることが許されません。
何も出来ないままパートナーの死を迎え、呆然自失状態の主人公の前に、ジョリン扮する若き日の彼女がウェディング姿で現れ、祝福ムードの中結婚式を挙げるという非現実の世界へ誘われます。
現実の世界に戻った彼女は、再び問われます。
「請問您和她的關係是?」
(貴方と彼女との関係は?)
彼女は答えます。
「她是我的妻子」
(彼女は私の妻です。)
号泣
YouTubeで”We’re All Different, Yet The Same Reaction"と検索すると、世界中で涙している人がいるわいるわ。
この作品は、世界的に注目が高かったことが覗えます。
2019年5月24日、台湾の立法院(国会)は、同性間の結婚の権利を認める法案を可決し、アジアで初めて、同性婚の合法化が実現しました。
それまで同性カップルは、いくら長い時間を共にしてきたとしても、一切の法律的関係が認められませんでした。(勿論、日本もそうです。)
ジョリンはこれまでも、積極的に性的マイノリティをテーマとした作品を発表してきており、台湾を代表する「ゲイ・アイコン」とも称されています。
そしてジョリンは、2015年の『Play世界巡迴演唱會(Play World Tour)』を敢行するに当たり、性的マイノリティーや多様性をテーマとした4本ドキュメンタリー映像を制作しました。
2000年、台湾の中学校で、「仕草が女性っぽい」という理由で、同級生達から激しいいじめに遭っていた葉永鋕という当時中学3年生だった少年が、校内で血だらけになって倒れているのが見つかり、翌日に亡くなりました。
彼の死は、当時性的多様性の議論に大きな影響を与え、この事件をきっかけに、台湾では適切な性別平等教育をするための動きが広がったとのことです。
事件当時、メディアは葉永鋕徐少年のことを「玫瑰少年」(薔薇の少年)と名づけ取り上げており、この葉永鋕事件を題材とした楽曲が『玫瑰少年 Womxnly』なのです。
私は少し前まで、ジョリンはアイドル的なチャラいアーティストのイメージだったのですが、これらの楽曲のことを知り、彼女の見方が変わりました。
今回紹介した『玫瑰少年』と『不一樣又怎樣』は、ジョリン渾身の”LGBTQアンセムソング”だったのはビックリです。
次回、このような性的マイノリティについて先進的な関わりを持つ台湾のC-POPシーンについて、さらに書いてみたいと思います。