※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です
尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。
その夜、再び、家族四人で身体を寄せ合って横になった。
真っ暗な体育館の中で父が言った。
「スーツケース、まだ探せへん、ごめんな」
「仕方ないわ…… それよりも、お義父さんは大丈夫?」
「近所の人もおるし、何とか頑張るやろ」
「おじいちゃん、東京、行く?」
妹が訊いた。
「東京?」
「電話を掛けさせてくれる移動電話車が来たの」
「ほな、東京へ電話、掛けられたんやな。良かったわ。安心して貰えたやろし」
「ありがとう。それでね、電話を掛けた後に、皆で東京へ避難するって話をしたから」
「そうか。それもええかもしれへんな」
「うん」
会話が途切れた。
深夜、赤ちゃんの泣き声が消こえた。そして赤ちゃんの泣き声が遠ざかった後、体育館の入り口の扉が開く音が小さく聞こえた後、赤ちゃんの泣き声が聞こえなくなった。
それから暫くして、ゴソゴソという小さな物音が聞こえた後、もう一度、体育館の入り口の扉が開く音が小さく聞こえた。
「起きとお?」
右側で寝ている妹に小さな声で話し掛けた。
「うん、目、覚めた」
「小さい音でも、起きるから、寝られへんな」
「外、寒いのに、二人共、すぐに戻ってこおへん。他のおじいちゃん、おばあちゃんもやけどな。それに、赤ちゃん、もう、泣いてえへんのに」
妹の言葉に、父が反応した。
「そうなんか?」
「うん」
「皆、大変やなぁ」
父の言葉の後、咳払いが聞こえたので、会話は途切れた。
冬の体育館の中でさえ寒いので、外はもっと寒い筈だった。なのに、夜の体育館に赤ちゃんとお年寄りの居場所は無いような気がして、私は不公平を感じたのだった。
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<(_`_)>
{ 気になる!
舞台でも御自身のテーマソングというか、
BGMが流れてからの
登場なのでしょうか?
急に 冷えて、久々にフリースを着ています
これが 花冷えなら、
今年は五月に真夏日 ]