長い時間の流れの中で【65】 1・17 失い続ける時 | ぴかるんのブログ

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ピンクのポンポン

ピンクのポンポン★80(80-65)



※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です

 尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。


§☆§★§☆ V⌒⊥⌒V ☆§ ★§☆§

 その夜、再び、家族四人で身体を寄せ合って横になった。
 真っ暗な体育館の中で父が言った。
 「スーツケース、まだ探せへん、ごめんな」
 「仕方ないわ…… それよりも、お義父さんは大丈夫?」
 「近所の人もおるし、何とか頑張るやろ」
 「おじいちゃん、東京、行く?」
 妹が訊いた。
 「東京?」
 「電話を掛けさせてくれる移動電話車が来たの」
 「ほな、東京へ電話、掛けられたんやな。良かったわ。安心して貰えたやろし」
 「ありがとう。それでね、電話を掛けた後に、皆で東京へ避難するって話をしたから」
 「そうか。それもええかもしれへんな」
 「うん」
 会話が途切れた。


 深夜、赤ちゃんの泣き声が消こえた。そして赤ちゃんの泣き声が遠ざかった後、体育館の入り口の扉が開く音が小さく聞こえた後、赤ちゃんの泣き声が聞こえなくなった。
 それから暫くして、ゴソゴソという小さな物音が聞こえた後、もう一度、体育館の入り口の扉が開く音が小さく聞こえた。
 「起きとお?」
 右側で寝ている妹に小さな声で話し掛けた。
 「うん、目、覚めた」
 「小さい音でも、起きるから、寝られへんな」
 「外、寒いのに、二人共、すぐに戻ってこおへん。他のおじいちゃん、おばあちゃんもやけどな。それに、赤ちゃん、もう、泣いてえへんのに」
 妹の言葉に、父が反応した。
 「そうなんか?」
 「うん」
 「皆、大変やなぁ」
 父の言葉の後、咳払いが聞こえたので、会話は途切れた。

 冬の体育館の中でさえ寒いので、外はもっと寒い筈だった。なのに、夜の体育館に赤ちゃんとお年寄りの居場所は無いような気がして、私は不公平を感じたのだった。

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急に 冷えて、久々にフリースを着ています
これが 花冷えなら、
今年は五月に真夏日
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