1960年代後半頃だったろうか
私が中学生だった頃、父は私のために百科事典を買ってくれた
並べてみると、全長1.5mくらいはあったように思う
調べてみたら全35巻もあったようだ
この辞典を、私は良く利用した
インターネットの無い時代である
私の好奇心を満たすには、充分な情報量を有していた
いや、父は好奇心が人一倍強かった私の欲望を満たすために、この百科事典を買ってくれたと思っている
高校に入り、その利用頻度は下がったが、それでも、私の一番の愛読書の地位が揺らぐ事はなかった
時代は下って・・・
1996年
新築を立てて、両親と同居を始めた時、古い家の荷物を大幅に整理した
いや、私ではなく両親がである
父が大切にしていた物も含まれていたので驚いたものだ
ところが、この百科辞典を父は捨てなかった
そして、私もそれを受け入れた
ただ・・・
この百科事典を私が社会人になって以降は、一度も開いた事はなかったのだ
何故、父は利用価値を終えた百科事典を捨てなかったのか?
今となっては知る由もない
そんな辞典だったが、10年前頃に、ついに捨てた
インターネットの進展で、私の息子達も、この辞典を利用する事は皆無と考えたからだ
断捨離とは利用頻度が唯一の判断基準と聞いている
その観点では、私の判断は間違っていない
しかし、物にはそれを購入した時の購入者の思いや、その後のプロセスで醸成された付加価値も重要だ
という事を処分した後に、私は痛感したのであった