2020年9〜10月にかけて、自宅音楽スタジオのレイアウトを全面的に変更した。元々この部屋は、家を建てるとき窓を二重サッシ、壁には遮音材を張り、30db程度の防音ドアを取り付けたので、ある程度の防音はしてある(実際、戸外にはピアノ程度なら殆ど聞こえない…郊外立地なので、あまり家が密集していない事情もある)。

さて、左足の怪我(アキレス腱断裂)以来、自室に籠もることが多くなった。(運良く?悪く?)昼間の仕事は在宅勤務に頼らざるを得なくなり、在宅を「快適な空間に」したくなった。9月後半になり、部屋の模様替え程度なら身体を動かせる位に回復したので、思い切って部屋をリニューアルした。その結果、今も細かい所は調整中であるものの、概ね画像のような配置になった。
ポイントは幾つかある。まず、在宅勤務と自宅音楽スタジオは、一緒の部屋にした。結局これが、一番落ち着ける。次に、PCデスクとMIDIキーボードとしても使う電子ピアノをL字配置にし、狭い部屋を広くした。更には、PCデスク机上を広くし在宅勤務をやりやすくしたこと、ヴァイナルをレコード・ラックに納め取り出し易くしたこと…などがポイントだ。お陰で益々居心地が良くなり、在宅勤務も捗るというものだ。具体的に紹介しよう。
 
I. PCデスク回り
自宅スタジオの心臓部と言っても過言ではない、PCデスク周り。メインPCにiMac、PCにDAWをインストール、PC脇にモニタースピーカーを横置きで設置、PC台を設けてライン・ミキサーを格納し机上スペースを確保している。そしてMIDIキーボードとして使用する電子ピアノをL字型に配置し、PCデスク下を有効活用できるようにしている。
 
1. Desk Top PC:iMac (Retina 4K 21.5-inch, 2017、メモリ16GB 2400 MHz DDR4)
筆者は2010年に、音楽制作のスタイルをMTR*1派からDAW派*2に変えた。DAW派への改宗にあたりPCは必須であり、「音は絶対Windowsより良いだろう」とPCをMacにして以来、一貫してApple、Mac信者である。筆者の初代iMacは、27-inch画面ではあったがメモリが4GBと貧弱だったため、使用8年で寿命を迎えてしまった。その結果、写真の現行機に買い替えて、メインで使用している。
 
*1 MTR=Multi Track Recorderの略。演奏を一人多重録音をするための専用機(ハード)。16〜24track程度を許容する。
 
*2 DAW=Digital Audio Workstationの略。乱暴な説明になるが、PCに演奏を録音するためのソフト。PCのマシン・パワーが許容する限り無限にTrackが使え、80Track程度まで許容するようだ。
 
2. DAWソフト:Logic Pro X Vers.10.5.1
以前はCubase 5を使用していたが、2018年よりLogicに変更した。23,000円と安価でオプションで購入できるうえ、ヴァージョン・アップが極めて簡単である。付属のサンプル音源もそこそこの音質で、デモを作る程度なら十分である(Cubase付属音源のHaLionより音質は全然上)。 
 
PCデスク机上のスペースを確保したいと思い、購入したのがこの製品。何と言っても、横幅が52cmであるのがポイントだ。横幅が19インチ(48.5cm)規格で統一される機材を丁度収納できるのだ。しかも奥行が16.5cmと、そんなに深くないのもポイントで、後で紹介するライン・ミキサー(ART MX822)をほぼピッタリ収納できる。しかも脇が開いていて支柱4点支持のみで、ラインミキサーに繋げるための結線作業がラクなのだ。勿論、オーディオ・インターフェイス、DVDラック、HDDディスクなどを、このPCモニター台に乗せることにより、狙い通り机上スペースが確保できたのも嬉しい。おかげで在宅勤務時に職場用のノートPCを机上に置く、こんな使い方も可能になった。
手前のノートPCが職場より借用の在宅勤務用、奥のデスクトップPCが音楽制作その他に使用するメインPC。
 
スタインバーグ社(YAMAHA傘下の子会社。Cubaseの発売元でもある)製のオーディオ・インターフェイス*。XLR入力(主にマイク入力)1系統、TRS(ライン)入力1系統とシンプルであるが、個人での自宅録音ならこの程度で十分だ。8chとか全く必要ない。ちなみに筆者がDAWソフトに録音する際、以下に紹介する電子ピアノ(KORG SP-170)からYAMAHA製のMIDIインターフェース(ヤマハ YAMAHA USB-MIDIインターフェース UX-16を介して直接DAWソフトに録音することが圧倒的に多い。このInterfaceを介して録音する時は、これまたYAMAHA製のsonogenic(ショルダー・キーボード)からライン録音する時くらいだ。
 
*オーディオ・インターフェイス:簡単には、PCにインストールしているDAWソフトに録音する際に、各種マイクなどの受け皿として機能する機材。鑑賞に耐えうる良質な音質に変換して、DAWソフトに録音してくれる。
 
5. DAC:MUSIC Streamer Ⅱ
1.のiMacからの音声出力について、まさか内蔵スピーカーなんか使わない。筆者の場合、USBバスパワーで駆動する写真のUSB DACをUSB結線でiMacに接続し、アナログに転換する。そして、次に紹介する6.のライン・ミキサーにRCA→TRS結線、最終的に7.のモニター・スピーカーから音声出力する。

先に紹介したPC(DACを経由)に加え、レコード・プレイヤー、アコースティック・ピアノのサイレント音源等の各音源を、このラインミキサーで取り纏めている。ここで音源を取り纏めた後、次に紹介するモニタースピーカーのYAMAHA HS50MにXLRケーブルで繋げている。
 
7. モニタースピーカー:YAMAHA HS50M
島村楽器が主催する2006年の「録れコン」で、録音賞をいただいた際に(まさか、賞を獲れると思わなかった)、副賞でいただいたもの。14年に亘り、一貫して愛用している。モニタースピーカーの出音が極めてフラットなのは本当で、実に色付け(面白み)のない音を鳴らす。でも、音楽制作において完成品の音を確認するには、この位味付けのない音である必要がある(※)。恐らく、YAMAHA HS50Mはサイズ的に低音域が少し弱いと思うが、筆者の自宅スタジオは狭いので丁度良い響きになっていると思う。
 
(※)実際、リスニング(オーディオ)用スピーカーで音楽制作した時、結果的に高〜中〜低音域のバランスが正確に把握できず、完成品の品質が話にならなかった。

そしてYAMAHA HS50Mの下には、audio technica 社製のAT6099というインシュレーターをかまし、卓上スピーカー・スタンドはDIYだ。

II. Acoustic Grand Piano:YAMAHA CS1SG

全長161cmのミニ・グランド・タイプで、サイレント機能付である。2011年10月に、同じくYAMAHA製のアップライト・ピアノからのグレード・アップを図った。自宅録音で作品を発表していた時代には、このグランド・ピアノをAKG CS3000 2本で録音していた。ジャズ・ピアニストとして活動している現在でも、自宅でメインで使用(演奏・練習)している楽器である。ただし現在、録音では殆ど使用していない。

 
Ⅲ. 電子ピアノ:KORG SP170

2016年10月より使用。大學ジャズ研の大先輩が福岡に移住する際、「東京から福岡には荷物が多過ぎて持っていけないから」とお譲り頂いたものである。お譲りいただく前から大先輩の東京のスタジオや野外でライブする際、この電子ピアノを弾かせてもらっていた。従って、譲り受け以前から弾き馴染みがあり、現在も使用(愛用)中である。現在、DAW(Digital Audio Workstation)への録音時のMIDI Keyboardとして、ピアノのないライブ現場への持ち込み用に使用している。

 

Ⅳ.ヤマハ ショルダーキーボード 37鍵盤 sonogenic(ソノジェニック) ブラック SHS-500B

2020年に遂に購入した…鍵盤弾きにとってギタリストと対等になれる、夢の楽器である。購入動機はセッション・ホストを務めるとき、管楽器の参加者が居ないとき、筆者がショルダーキーボード(以下ショルキー)で代替したいと考えたからである。

 

sonogenicはミニ鍵盤型で電池駆動、TRSケーブルでアンプに接続して演奏すれば、十分にライブやセッションの現場で使える。音色も30種類プリセットで用意されており、筆者の好みで数種類は使える!

 

Ⅴ.CLASSIC PRO クラシックプロ 19インチ・ラック CRK-16L 16Uスタジオラック

漸く、16uの19インチ・ラックを手に入れた。筆者は、所有している19インチ規格のシェルフなどを収納できる、しっかりした作りのスタジオ・ラックが欲しかった。今迄はDIYで作った19インチラックに収納していたが、DIYは既製品対比で頑丈さにどうしても劣る。従って、Classic Pro社製の19インチラックに変えた。やはり作りはしっかりしており、レコード・プレーヤーの安定した設置場所にもなっている。

 

以前はラック・マウントできる機材を多数所有し、DIYでラック・マウントしていた時期もある。しかしながら加齢とともに目が弱くなり、機材の裏側に回っての配線が辛くなったため、こうした機材の殆どを処分してしまった。現在はシンプル・イズ・ベスト、機材の数を減らしている。

 

Ⅵ.audio-technica AT PL300 STEREO TURNTABLE

5年ほど前に1,000枚以上所有するCD全てをリッピング(3ヶ月もかかった!)して以来、回転系のソースで音楽を聴くのほぼ辞めてしまっていた。LPも折角(推定)500枚ほどあるのに、レコード・コンテナに仕舞い込んで聴かずじまいだった。タンテも仕舞い込んでしまい、埃を被る始末。コロナのせいで在宅(勤務)が増え、「レコードを聴きたい!」と以前買ってあったタンテを引っ張り出し、Classic Pro社製の19インチ・ラックに設置した。フォノイコ内蔵、RCA赤白アウトプット端子備え付けの安物7,800円であるが、暫くは愛用してみようか。
 
Ⅶ.電源タップ:OYAIDE OCB-1 ST2 (左)/Classic Pro PS38 (右)
 
電源タップは、オーディオ・グレードのものを使用している。以前はラック・マウント型電源であるTEAC AVP-25を使用していたが、加齢による不都合が出てきた。一つは、配線変更のたびラックの後ろの回るのが体力的に辛くなったこと。もう一つは目が弱くなり、ラックの後ろからでは暗くて差込口が見えなくなったこと。こうした理由から、比較的使いやすいタップ型の電源に変更している。特にデジアナ分離といった使い方をしておらず、機材の左右の位置関係により使い分けちゃっている。

Ⅷ.BOXセットも入る! レコードラック TWIN WOOD (木目) / disk union
レコード(ヴァイナル)はやはり、背表紙が見えるようにレコード・ラックに収納し取り出しやすくすべきだ。そうでないとレコード(ヴァイナル)を聴かない。LPともなると直径30cmもあって場所を占るし、1枚100g超あるし(100枚で10kgの重さ!)、維持していくのは大変である。しかし...流石はレコードを取り扱っているdisk unionである、レコード収納に適したラックを取り扱っている。
 
以前は右上に見えるレコード・コンテナ(黒いdance music recordと白いロゴが入っている箱)にヴァイナルを収納していたが、快適な在宅勤務環境を構築する目的でレコードのある生活を送るために、レコード収納方法を大改造した。別にブログに取り纏めてあるので、そちらもお読みいただきたい。
 
レコードのある生活

 

レコードのある生活(2)

 

レコードのある生活(3)

 

レコードのある生活(4)

 

Ⅸ.電子打楽器群(左)Roland V-drums TD11K-S/(右)Roland Digital Percussion Handsonic HPD-10現在は使用していないが、長男が愛用していた電子打楽器部群。いずれも筆者とジョイントでライブした時に、使用した機材でもある。育児の歴史と重なるのでどれも思い出が一杯だが、特に左の電子ドラムが思い出深い。長男が11才の時に買い与えたものであるが、何と彼は購入2週間で叩き方をマスターしてしまい、購入3週間後のAEON TOWNで開催されたFamily Concertで筆者と"Overjoyed"(Stevie Wonder)で共演してしまった。そして長男にドラム・ソロを回したらド派手なソロ・パフォーマンスを披露、聴衆が大喝采になったのを、昨日のことのように思い出す。
 
Ⅹ.A.Yairi(ヤイリ)ミニ・エレアコ・ギター(ナチュラル) Compact E-Acoustic シリーズ YEM22-N
トレッドノート・タイプのギターだとボディがデカ過ぎ、ネックも長過ぎ、毎日は弾かないプレイヤーではコードを押さえるのも一苦労だ。このヤイリのミニ・エレアコ・ギターは、ボディも小さくネックも590mm、弾きやすい。また、エレアコ・タイプなので、エフェクトをかましてアンプに突っ込んで弾くこともできる。
 
手軽に使えるアンプである。筐体は小さいが音は結構前にキて、に聴かせる最低条件はクリアしている。ステレオで2発あるのに広がり感は狭いが、5wのフルレンジで口径3ch程度なので、仕方ないところか?筆者はこのアンプを用いるのは、次のケースである:
 
電子ピアノ(KORG SP-170)用
・音響がない狭い現場で、PAアンプの代替
・広い現場での返し代り
 

エレアコ・ギター用:自宅で鳴らす場合

 
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このように、自宅の作業部屋(兼自宅音楽スタジオ)を紹介したが、コロナ禍が思わぬところで変革の好機になること、数多知れず。在宅勤務もコペルニクス的革命であり、都内に無理して居を構える必要性に疑義を呈したが、同時に自宅・自室を充実させる契機にもなるとは。いやいや、世の中どこに変革のネタが転がっているか、判らないものである。