第634回『料理人のワイン知識―㉖』
「料理人が知っておいたほうが良いワインの知識―㉖」
「ワインの醸造法の話―⑱ ロゼワイン編ー④」
ロゼワインの醸造法の1つである、
「直接圧搾法」=「黒ブドウの圧搾果汁発酵法」は、
原料が黒ブドウである点を除けば、白ワインの醸造と変わりません。
さらに、白ワインの中には、
稀(まれ)に黒ブドウを原料とするものもあるので、
白ワイン?ロゼワイン?と、頭の中が混乱してしまいます。
少し整理しておきましょう。
ワインに色を付けるのは果皮に含まれる成分によるものです。
赤ワインの赤色は、果皮に含まれるアントシアニンという成分が
マセラシオン(醸し(かもし))発酵中に果汁に溶け出したものです。
さらに、アルコール発酵は、色素の抽出を促進しますので、
マセラシオン発酵は、まさに色素抽出のためには必要な工程です。
また、果皮は強い圧搾をかける、あるいは、ゆっくりと圧搾をかけると、
果汁に薄い色素が付きます。
仮に、果皮を取り除き、圧搾すれば果汁にはほとんど色は付きません。
だから、ロゼワインの「直接圧搾法」では、
色素の出やすい黒ブドウ品種を使い、さらに、
強い圧搾をかければ、得られる果汁の色は薄いロゼ色になります。
この果汁を発酵すると、発酵作用も手伝い、より鮮やかな色になります。
現在のワイン醸造は、原料となるブドウ品種も決まっており、
ロゼワインに向く黒ブドウが原料になります。
逆に、現在赤ワイン用の黒ブドウの果汁を白ワインにすることは
ほとんどありません。
白ブドウ(白ワイン用)は、マスカットのような淡いグリーン色をしたもの
ばかりではありません。
中には、果皮の色が赤みを帯びた、
一見すると黒ブドウのように見えるものもありますが、
これらは圧搾した時、それほど強い色は出ません。
ブドウを圧搾し、果汁のみで造る白ワインとロゼワイン。
さらに、かもし発酵の途中で果汁を引き抜いて造るロゼワイン。
と、かもしを継続し造る赤ワイン。
それぞれの線引きはとてもあいまいな感じもしますが、
各々が、ちゃんと目的をもって造られていますので、
出来上がったワインも性格の違う特徴あるワインとなるのです。
次回、ロゼワインの醸造の3つ目の方法の話です。