(前回の様子はこちら)


始発前の臨時便のおかげで予定より早く出発した僕は早速、最大の難所である八丁坂を目指して歩き始める。

 

 

冬山登山の場合は夏山登山道ではなく、少し回り込んでから歩く必要がある。千畳敷は典型的な雪崩地形。夏山登山道は雪崩のリスクが高いためだ。

 

 

4日前にそれなりに雪が降ったみたいだが、YAMAPを見ると、昨日金曜日の登山記録もあるし、何より先発隊の人たちが先を歩いているので、トレースはしっかりしている。

 

 

はじめは傾斜もなだらかで、モフモフの雪の上を歩く。気持ちの良い雪歩きといった様相である。

 

 

ピッケルもとりあえず手に持っているだけ。というか傾斜がある程度ないと、よほどかがみこまなければ地面に突き刺すことはできない。

 

 

しばらく歩いていると段々と斜度がキツくなってくる。いよいよ楽しみにしていたピッケルを使いながらの雪山歩行だ。

 

僕は同じロープウェイに乗ってきた中では後発組だったが、休憩やウェア着脱で脇に逸れている人たちを追い抜かしながら自分のペースで登っていく。

 

 

最初のうちは、これこそ雪山登山だ、楽しいなぁ、ピッケルも55cmにしておいてちょうど良かったなぁ、なんてことを呑気に考えながら歩いていたが、途中からそんな余裕は無くなってきた。

 

 

どんどん斜度がキツくなり、「え?!こんなに角度厳しいの?!」という感覚だ。

 

アイゼンは前爪を最大限に活用してフロントポインティングを多用しながら歩くので、とにかく脚に乳酸が溜まっていく。少し歩いては一呼吸置きながらの歩行になるため、なかなか前に進まない。

 

 

先行者を見ていると、上手な人はもう少し楽に登っているようだが、僕は決して調子に乗らず、とにかく慎重に、時にはピッケルを持っていないもう片方の手も使いながら、一歩一歩確実に登っていく。

 

 

 

時折り後ろを振り返ると、結構登ってきたんだなぁということを実感する景色。ロープウェイ駅がはるか遠くに見える。

 

 

そして、後続もかなりの人が登って来ている様子がよくわかる。やはり人気の山なのは間違いない。

 

 

顔を上げると、カールの底からははるか遠くに見えていた稜線があともう少しのところまできている。

 

 

そんな感じで少しずつ歩みを進め、無事に八丁坂をクリア。乗越浄土へ到着だ。

 

 

目の前に迫り来る宝剣岳がカッコ良すぎて、八丁坂をクリアした興奮とも相まって、思わずテンションが上がってしまう。

 

 

宝剣岳。当然、僕が冬期に登れる山でないのは明らかだが、機会があれば夏山シーズンに一度トライしてみたいなという気持ちはあったりする。

 

 

典型的な岩山で、カッコいい!という少年的な気持ちを掻き立ててくれる山だ。

 

 

千畳敷から見ても大迫力だし、とにかくカッコいい「顔」を持った名峰だと思う。

 

そうやって宝剣岳に惚れ惚れするが、あんまりゆっくりしている余裕はない。理由は風だ。

 

(音が出るのでご注意)

 

常に吹いているわけではないが、時折りかなりの強風が容赦なく吹きつけてくる。

 

ヤマテン予報では朝方は20数メートルの暴風でお昼にかけて少しずつ弱まってくるということだった。予報どおり、この時間はまだ結構な風が吹いている感じだ。

 

それにしてもヤマテン予報の精度には驚かされる。この日も実際、時間が経つにつれて風は弱まっていった。

 

 

というわけで、無事に最大の難所である八丁坂をクリアして稜線に立った僕であるが、一つ今回の反省点がある。

 

 

それはヘルメットを持ってこなかったことだ。YouTubeやYAMAPのレポートなどを見ていても、あまりヘルメットを着用しているイメージはなかったので、僕も持ってこなかった。

 

しかし、八丁坂の上の方を登っている時も、たまにもの凄い強風が吹いてきて、その度に雪が固まって氷状になったものが飛んでくるのだ。

 

また、たまに上を登っている人が、それなりに固まったカチカチの雪の塊を落としたりもする。落石に近いイメージだ。

 

 

そんな感じなので、途中からヘルメットを持ってきておけば良かったなと後悔するハメに。

 

装備のことで後悔するのは山では御法度。したがって、ここは大いに反省の余地があるだろう。

 

というわけで、今回はこのくらいにして、次は木曽駒ヶ岳への登頂について記したいと思う。