美ヶ「山」でもなければ、美ヶ「岳」でもない。あくまでも美ヶ「原」である。



深田久弥は、美ヶ原高原をして、高原と言われる場所の中で第一に挙げたいとした上で、2,000m前後の標高に加えて、その高さに広さを加えれば、まさに日本一かもしれないと評している。



さらに、北アルプスの豪快な山容を鑑賞するのに適した距離感であるとして、広さに加えて、眺めの観点からも高い評価を下している。


そういう背景から「高原」という位置付けながら、日本百名山に選出されている美ヶ原高原。



一度は行ってみたいと思っていたのだが、最もメジャーな山本小屋から王ヶ頭までハイキングするルートは、あまりにも運動負荷が低過ぎて、そのためにわざわざ遠出をする気にならず、これまで足を伸ばしたことはなかった。



しかし、深田久弥の日本百名山を読んでいて、氏が登った登山道の起点が三城牧場であることを知った。


三城牧場へのアクセスは、松本経由で行けば冬期でも走りやすい路面との情報を得て、機会があれば行ってみようと考えていた。


もともとは木曽駒ヶ岳に行こうと思っていた週末。しかし、雪崩リスクへの警戒から、その計画はキャンセルすることに。



代わりの山を探す中で、候補に挙がったのが美ヶ原高原だ。


晴れていて、かつそんなに風も強くないというヤマテン予報。他の山域は晴れていても風が20mと見込まれるなど過酷な環境である可能性が高いとの予報。


美ヶ原高原だけが絶好のコンディションということで、この機会に深田久弥が登ったルートを歩いてみようと思い立ったわけだ。



三城牧場付近の登山口は2つ。百曲がりコース登山口とダテ河原コース登山口だ。


今回は百曲がりコースから登って美ヶ原高原を楽しんだ後、王ヶ頭、王ヶ鼻を巡った後に、ダテ河原コースで下山するという周回ルートを計画。



距離にして約11km、累計標高差が800m弱ということで、冬山初心者の僕には程よい負荷かなと判断してのルート設定だ。


しかし、当日、僕は自らの計画、そして事前リサーチの甘さを痛感することになる。



今回は松本インターで降りて三城牧場を目指す。明け方ということもあり、最後の方の山道はそれなりに雪も目立った。こういう時、四駆は安心だ。



ちなみに下山して帰宅の途につく頃には、道路の雪はすっかりなくなっていた。



三城牧場の少し先の三城いこいの広場駐車場に着いたのは6時半過ぎ。ここまでは予定通り。



この場所はアクセスも悪いし、もっと楽に美ヶ原高原を楽しめるルートが他にあるため、利用する登山者は少ないようだ。



週末なのに、出発時点で車は僕以外に1台だけ。下山した時も僕以外の車は2台だけだった。



しかも、冬期はアテにしていた駐車場が閉鎖されていた。駐車場の少し先が冬期通行止めで、ここが事実上の行き止まりということに加え、ほとんど車が来ないことを踏まえて、マナーとしてはよくないが、道路の隅っこに路上駐車させてもらうことに。



ゆっくりと朝ごはんを食べて、身支度を整える。外の気温はマイナス9度なので、素手でいると厳しい。



ひと通り準備を済ませて7時半過ぎに百曲がり登山口から登山スタート。僕にとって試練の幕開けとなるのであった。